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1後見・保佐・補助

堀川 寿和2021/12/03 15:38

後見

後見とは、①親権者による保護が受けられない場合に未成年者を保護するための未成年者後見と、②精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者を保護する場合に後見開始の審判によって開始する成年後見との総称である。保護を受ける者を未成年被後見人・成年被後見人という。

後見の機関には、執行機関としての後見人と、監督機関としての後見監督人および家庭裁判所の三者がある。後見人は必須の機関であり、未成年後見においては1人に限られる(842条)。これに対して、成年後見においては、人数の制限はなく、1人の被後見人に対して複数の後見人をおくことができる(843条、859条の2参照)。

後見監督人は、任意の機関であり(849条、849条の2)、またその人数は複数であってもよいとされている。

また、家庭裁判所も後見事務の適正を期すため、後見の監督について重要な機能を営んでいる。


(1) 未成年後見人

未成年者に対して親権を行うものがいないとき、または、親権を行うものが管理権を有しないときには、未成年後見人が置かれる(838条1項)。

未成年後見人は、成年後見人と異なり、親権者と同様の権限を有する。具体的には、未成年後見人は、財産管理権を有するだけではなく(859条1項)、監護教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権に関して、「親権を行う者と同一の権利義務」、すなわち身上監護権を有する(857条本文)。

ただし、親権者が定めた教育の方法、居住を変更する場合等は、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない(857条但書)。


(2) 成年後見人

成年後見人は、家庭裁判所が、後見開始の審判をするときに、職権で選任する(843条)。成年後見人の員数は、必要があるときは、複数選任することができる。成年後見人の欠格事由は、未成年後見人の欠格事由と同じである(847条)。成年後見人の事務は、①成年後見人の身上配慮義務、②成年後見人の財産管理である。

家庭裁判所は、必要があるときは、成年後見監督人を選任できる(849 条の2)。


(3) 後見人と被後見人との利益相反行為

後見においても、親権の場合と同様に後見人と被後見人の利益が相反する行為については、被後見人の利益を保護するため、後見人の代理権・同意権が制限される。この場合に、後見監督人があれば後見監督人が代理ないし同意をすることになるが、後見監督人がない場合には、特別代理人が選任されることになる(860条、826条)。



保佐(876条以下)

保佐とは、被保佐人(精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分であって、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者)を保護するための制度である。制限行為能力者を保護するための制度である点で、未成年者および成年被後見人に対する後見制度と趣旨を同じくするものであるため、後見に関する規定が多く準用されている。

保佐は、保佐開始の審判(11条)がなされることにより開始される(876条)。保佐の機関としては、執行機関としての保佐人があり、監督機関としては保佐監督人がある。保佐人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見人に関する規定が準用されている(876条の5)。


補助(876条の6以下)

補助とは、被補助人(精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分であって、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者)を保護するための制度である。制限行為能力者を保護するための制度である点で、未成年者および成年被後見人に対する後見制度および保佐制度と趣旨を同じくするものであるため、後見に関する規定が多く準用されている。

補助は、補助開始の審判(15条1項)がなされることにより開始される(876の条6)。補助の機関としては、執行機関としての補助人があり、監督機関としては補助監督人がある。補助人の種類、員数、辞任、解任、欠格事由などは後見人に関する規定が準用されている(876条の10)。