• 民法ー7.親族
  • 1.親族総論
  • 親族総論
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1親族総論

堀川 寿和2021/12/03 15:14

親族法の特色

 親族法とは、身分関係を規律する法律であり、家庭・家族関係をめぐる争いが生じたときに、その解決方法を規律するものである。そして、身分上の法律効果を発生させる法律行為(婚姻、協議離婚等)を身分行為という。


 財産法は、私的自治の原則の下、自由な経済活動を保障することを想定している。経済活動を円滑に行うため、当事者の意思表示に問題があった場合でも、転々譲渡して譲り受けた者を保護したり、外観を信頼して取引関係に入った者を保護したり、長期間継続した事実状態を権利として認めたり、といった取引安全を保護する制度がある。これに対し、親族法は、


1. 夫婦や親子といった社会の基本的単位である「家族」となるための要件及び「家族」となった場合の効果

2. 未成年者・成年被後見人のように市民社会の取引への参加を制限された人々を保護するための制度


というような内容を定めている。財産法とは性質が異なるのである。そのため、財産法を想定して定められている「民法総則」は必ずしも親族法には適用されない。例えば『代理』は親族法にはなじまないものである。また、財産法の契約自由の原則は婚姻や養子縁組にはあてはまらない。そういった財産法との違いも意識しながら知識を身につける必要がある。


身分行為の特色

1. 行為能力に関する規定は、原則として適用されない

2. 代理は、原則として認められない

3. 意思の不存在・瑕疵ある意思表示に関する規定は、原則として適用されない

4. 一定の形式を必要とするもの(=要式行為)が多い


親族の意義

(1) 親族関係

 血縁関係にある者またはこれと同視される関係にある者相互間(=血族)、および婚姻を通じて一方の配偶者と他方配偶者と血縁関係にある者との間に生ずる関係(=姻族)を親族関係という。血縁関係は無限に広がってゆくものであるから、法的にどこまでが「親族」といえるのか、定めておく必要がある。


(2) 親族関係の発生と消滅

① 血族関係

 血族関係には、「自然血族」関係と、「法定血族」関係とがある。

 自然血族関係は、出生によって発生し、死亡または失踪宣告により終了する。

 法定血族関係は、養子縁組によって発生し、離縁や縁組の取消しにより終了する。

② 配偶者関係

 配偶者関係は、婚姻によって発生し、死亡、婚姻の取消し、離婚によって終了する。

② 姻族関係

 姻族関係は、婚姻によって、夫婦の一方と他方の血族との間で発生する。離婚または婚姻の取消しがあると、当然に姻族関係は終了する(728条1項、749条)。これに対し、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに、姻族関係が終了する(728条2項)。

 ※ 姻族の具体的範囲:「配偶者の血族」および「血族の配偶者」


Point 夫婦の一方が死亡した場合、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。


(3) 親族の範囲

 親族の範囲は、

① 6親等内の血族

② 配偶者

③ 3親等内の姻族である(725条)。