• 民法ー6.担保物権
  • 9.先取特権
  • 先取特権
  • Sec.1

1先取特権

堀川 寿和2021/12/03 15:05

先取特権とは、法律の定める一定の債権を有する者が、弁済がないときに、債務者の財産を競売し、他の債権者に優先してその債権の弁済を受けることができる担保物権である(303条)。

 法律が一定の債権に優先弁済権を与えて保護する理由は、公平の観念に基づくもの、社会政策的見地に基づくもの、当事者の意思の推測に基づくもの等種々である。


一般の先取特権

以下の4つの債権を有する者は、債務者の総財産から優先弁済を受けることができる(306条)。


(1) 共益費用

 各債権者の共同の利益のために、一部の債権者が債務者の財産を保存したり、清算したり、配当したりした場合は、その債権者がそれらの活動を行うためにかけた費用の債権は優先弁済を受けさせるべきなので先取特権を認める(307条)。


(2) 雇用関係

 労働者の給与債権は労働者の生活と密接しており、確保の要請が強いので先取特権を認める(308条)。


(3) 葬式費用

 経済的に困窮している者でも葬式ぐらいはきちんと行いたいので、葬式業者に葬式費用債権の先取特権を与えて回収しやすくしてやることで、葬式を行いやすくする(309条)。


(4) 日用品供給

 経済的に困窮している者でも生活必需品はどうしても必要なのであり、買いやすくしてやる必要がある。そこで、そういった困窮者に代金後払いで生活必需品を供給する者には、その代金債権に先取特権を与えることで回収しやすくして、供給もしやすくする(310条)。


動産の先取特権(311条~324条)

債務者の特定の動産から優先弁済を受けることができる。

不動産の先取特権(325条~328条)

債務者の特定の不動産を目的として成立し、その物から優先弁済を受けることができる。


種類被担保債権行使の要件
不動産保存保存費用保存行為完了後、直ちに登記(337条)
不動産工事請負代金工事を始める前に登記(338条)
不動産売買売買代金売買契約と同時に登記(340条)

※ 不動産の先取特権は、登記をしないと第三者に主張することができない。(177条)