- 憲法―1.総論
- 1.憲法とは
- 憲法とは
- Sec.1
1憲法とは
『憲法』と一言にいっても様々な意味があるが、通常は、『国家』という統治団体の存在を基礎付ける基本法をいう。
まずは、『憲法』そのものを色々な視点から分類してみる。
■形式的意味の憲法と実質的意味の憲法
(1) 形式的意味の憲法
憲法という名前で呼ばれる成文の法典(憲法典)のことをいう。
例:現行の『日本国憲法』
(2) 実質的意味の憲法
ある特定の内容を持った憲法のことをいう。この場合、成文であると否とを問わない(例:イギリスの憲法)。慣習法や判例法としても存在する(例:アメリカの違憲審査制は判例法によっている)。
実質的意味の憲法には、さらに2つの意味があるとされる。
① 固有の意味の憲法
国家の統治の基本を定めた法としての憲法のことである。この意味の憲法は、いかなる時代のいかなる国家にも存在する。
② 立憲的(近代的)意味の憲法
自由主義に基づいて定められた国家の基礎法を指す。政治権力を法によって拘束して、人権を保障しようとする点に特徴がある。このような考え方は近代市民革命において主張されたもので、『立憲主義』という。
■立憲的(近代的)意味の憲法の成立
(1) 歴史
① 中世の根本法(マグナカルタ等)
近代市民革命以前でも、絶対的な君主(国王)すら従わなければならない高次の法(根本法)があるという考え方は存在した。しかし、中世の根本法は、貴族などの一定の身分の者の特権の擁護を内容とする封建的性格の強いものであった。
② 近代自然法ないし、自然権の思想の影響
中世における、一部の者の特権を守るために権力の行使が法に拘束されるという考え方は、近代啓蒙期における自然権思想により、全ての個人が個人として尊重され、そのために国家権力に歯止めをかけるという考え方に進展した。
cf. ロック、ルソーらによって説かれた自然権思想の内容
1. 人は生まれながらにして自由かつ平等であり、生命・自由・財産(プロパティ)を保障される(自然権思想)。
2. 自然権を確実なものとするために、社会契約を結び、政府に権力の行使を委任する(社会契約説)。
3. 政府が契約違反をした場合には、人民は政府に抵抗する権利がある(抵抗権)。
③ 立憲的意味の憲法へ
近代市民革命を通じて成立した近代憲法は、自然権思想の影響を受けて、広く国民の権利・自由の保障を目的とし、それを実現する手段としての統治の基本原則を内容とするものである。
(2) 立憲的意味の憲法の形式と性質
立憲的意味の憲法は、一般には成文法の形式を採り、硬性憲法の性質を持つものである。例外としては英国の憲法があり、英国には成文の憲法典は存在しない。
1. なぜ成文憲法か? →社会契約説を根拠に、契約は書面化することが望ましいから。
2. なぜ硬性憲法か? →国民の不可侵の権利である自然権を保障する憲法は、憲法によって作られた権力である立法権を拘束する。そのため、憲法の改正は普通の法律よりも厳しい特別の手続によるべきであると考えられるから。