• 民法ー4.債権総論
  • 7.保証債務(多数当事者の債権債務)
  • 保証債務(多数当事者の債権債務)
  • Sec.1

1保証債務(多数当事者の債権債務)

堀川 寿和2021/12/02 15:38

 お金を貸した者は、確実に貸したお金を回収したい。しかし、お金を借りた者が確実にお金を返してくれる保証はない。そこで、お金を借りた者が借金を返さない場合にそなえて、誰かに保証人になってもらい、万一のときは保証人に代わりに借金を返してもらうという方法がある。保証債務は、この「保証人」が負担する債務のことである。ここでは、この保証債務について学ぶ。

保証債務とは

 保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しないときに、主たる債務者に代わってその債務を履行する債務である(446条1項)。この債務を負う者を、保証人という。


事例 BがAから1,000万円の借金をし、Cがその保証人となった。この場合、主たる債務者Bが借金の1,000万円を返さないとき、保証人CがBの代わりに1,000万円を返す責任を負う。





保証債務の成立

(1) 保証契約

 保証債務は、債権者と保証人となるべきものとの間の保証契約によって成立する。保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない(446条2項)。




(2) 保証人の資格

 保証人の資格については、一般には制限がなく、誰でも保証人になることができる。債権者が誰と保証契約を締結するかは自由だからである。しかし、債務者が法律または契約によって保証人を立てる義務を負う場合は、債権者を保護するために、一定の資格が要求される(450条)。




Point 主たる債務者が保証人を立てる義務を負う場合でなければ、保証人は、必ず行為能力者である必要はない。



保証債務の性質

(1) 付従性

① 成立における付従性・消滅における付従性



② 内容における付従性

保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する(448条1項)。



主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない(448条2項)。



(2) 随伴性

 随伴性は、被担保債権(主たる債務)が移転すると、保証人に対する債権(保証債務)も移転するという性質である。



(3) 補充性

補充性とは、主たる債務が履行されない場合にはじめて保証人は債務を履行すべき義務を負うという性質である。




この補充性により、保証人には以下の2つの抗弁権(拒否権)が認められている。


① 催告の抗弁権

 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる(452条本文)。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、請求できない(452条ただし書)。



② 検索の抗弁権

債権者が主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない(453条)。



③ 催告の抗弁および検索の抗弁の効果

 催告の抗弁権または検索の抗弁権に基づいて保証人の請求または証明があったにもかかわらず、債権者が催告または執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告または執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる(455条)。


事例 上記の事例で、保証人Cの証明を受けて債権者Aが直ちにBの財産について執行していれば1,000万円全額の弁済を受けられたにもかかわらず、これを怠っていたため、その後Bの資産状況が悪化してしまいAがBから全額の弁済を受けられなくなったような場合は、保証人Cは保証債務の履行を免れることができる。