- 民法ー4.債権総論
- 4.債務引受け
- 債務引受け
- Sec.1
1債務引受け
債務引受けとは、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を、契約によって第三者が負担することである。債務引受けは、併存的債務引受と免責的債務引受に分けられる。ここでは、債務引受けの成立要件を中心に学習する。
■併存的債務引受
(1) 併存的債務引受とは
併存的債務引受とは、債務の引受人が、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担することである(470条1項)。
併存的債務引受により、引受人と債務者は、連帯債務者と同様の関係になる。したがって、引受人と債務者との関係には、連帯債務に関する規定が適用される(連帯債務に関する規定については後述)。
事例 AはX銀行から住宅ローンを借りていた。Aが会社を定年退職しこれまで通りの返済が困難になったため、不動産の名義はAのまま、Aの子Bを住宅ローンの債務者に加えた。
(2) 併存的債務引受の成立要件
併存的債務引受は、債権者、債務者および引受人となる者の三者間の合意で成立するが、それ以外の場合でも成立するのかが問題となる。
① 債権者と引受人になる者との合意
併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる(470条2項)。このとき、債務者の承諾は不要である。また、併存的債務引受は、債務者の意思に反してもすることができる。
② 債務者と引受人になる者との合意
併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる(470条3項前段)。
この場合、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる(470条3項後段)。この承諾は受益の意思表示であり、契約の効力発生に承諾が要求されるのは、併存的債務引受は債権者の利益になるものではあるが、利益であっても本人の意思に反して押し付けられるべきではないからである。
■免責的債務引受
(1) 免責的債務引受とは
免責的債務引受とは、引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れることである(472条1項)。
事例 AはX銀行から住宅ローンを借りていた。Aが会社を定年退職しこれまで通りの返済が困難になったため、不動産の名義をAの子Bに移して債務者をBに変更し、Bが住宅ローンの残債務を返済することにした。
(2) 免責的債務引受の成立要件
免責的債務引受は、債権者、債務者および引受人となる者の三者間の合意で成立するが、それ以外の場合でも成立するのかが問題となる。
① 債権者と引受人になる者との合意
免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる(472条2項前段)。このとき、債務者の承諾は不要である。また、併存的債務引受は、債務者の意思に反してももすることができる。
この場合、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる(472条2項後段)。これは、債務者が知らないうちに契約関係から離脱することを防ぐためである。
② 債務者と引受人になる者との合意と債権者の承諾
免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる(472条3項)。免責的債務引受の成立に債権者の承諾が要求されるのは、債務者が変更されると、債権者にとって不利益が発生する可能性があるからである。
Point 免責的債務引受の効力発生時期は、債権者の承諾があった時点である。債務者と引受人となる者が契約をした時点ではない。
■チェック問債権譲渡 問題
【チェック問債権譲渡 問題】
1. A は、B に対して貸付金債権を有しており、A はこの貸付金債権をC に対して譲渡した。B が債権譲渡を承諾しない場合、C がB に対して債権譲渡を通知するだけでは、C はB に対して自分が債権者であることを主張することができない。
2. A は、B に対して貸付金債権を有しており、A はこの貸付金債権をC に対して譲渡した。A が貸付金債権をD に対しても譲渡し、C へは確定日付のない証書、D へは確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もB による弁済前に到達したとき、B への通知の到達の先後にかかわらず、D がC に優先して権利を行使することができる。
3. A がB に対して1,000 万円の代金債権を有しており、A がこの代金債権をC に譲渡した。A がこの代金債権をD に対しても譲渡し、C に対する債権譲渡もD に対する債権譲渡も確定日付のある証書でB に通知した場合には、C とD の優劣は、確定日付の先後ではなく、確定日付のある通知がB に到着した日時の先後で決まる。
4. 指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各債権譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各債権譲受人は、債務者に対し、債権金額基準で按分した金額の弁済請求しかできない。
5. A がB に対して1,000 万円の代金債権を有しており、A がこの代金債権をC に譲渡した。AB 間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合には、C はこの代金債権を取得することはできない。