- 民法ー4.債権総論
- 3.債権譲渡
- 債権譲渡
- Sec.1
1債権譲渡
売買代金請求権といった債権は、それ自体一個の財産権だから、売買の対象とすることも可能となる。このように、債権自体を一つの財産権として取引の対象とし、第三者に譲り渡すことを債権譲渡という。ここでは、債権を譲り受けた者が、その債権を行使する場合の要件(対抗要件)を中心に学習する。
■債権譲渡
(1) 債権の譲渡
債権は、譲り渡すことができる(466条1項)。債権の譲渡は、譲渡人と譲受人との意思表示(合意)によりすることができる。この場合に、債務者の承諾などは不要である。
事例 債権者Aが債務者Bに対して有する貸金債権を、Cに譲渡した。
(2) 将来債権の譲渡
債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない(466条の6第1項)。つまり、まだ発生していない将来債権も譲渡することができる。
将来債権が譲渡された場合、譲受人は、債権発生時に、発生した債権を当然に取得する(466条の6第2項)。
■債権譲渡の対抗要件
債権譲渡が債権の譲渡人と譲受人との間で自由に行われたとすると、債務者の立場からすると次の2点の問題が生じる。
① 債務者は債権の譲渡人と譲受人のどちらに弁済すればよいのか。
② 譲渡人が債権を二重に譲渡(二重譲渡)した場合に、債務者はどちらの譲受人に弁済すればよいのか。
これらは、対抗要件で解決される。
(1) 債務者への対抗要件
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、以下の①②のいずれかがなければ、債務者に対抗することができない(467条1項)。
① 譲渡人から債務者への通知(口頭でもよい)
② 債務者の承諾(口頭でもよい) |
事例 債権者Aが、債務者Bに対して有する金銭債権を、Cに譲渡した。
Point 通知とは、債権譲渡があった旨を伝えることである。この通知は、譲渡人による通知でなければならず、譲受人による通知は対抗要件とはならない。譲受人が自分で通知をしてきても、それが真実か否かは定かでないからである。
承諾とは、債権譲渡があった事実を知った旨を伝えることである。この承諾は、譲渡人・譲受人のいずれに対するものであってもよい。
(2) 債務者以外の第三者への対抗要件
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、以下の①②のいずれかがなければ、債務者以外の第三者(債権を二重に譲り受けた者)に対抗することができない(467条2項)。
① 確定日付ある証書による譲渡人から債務者への通知
② 確定日付ある証書による債務者の承諾 |
確定日付のある証書には、内容証明郵便や公正証書などがある。
事例 債権者Aが、債務者Bに対して有する金銭債権を、CおよびDに二重に譲渡した。この場合、CD間においては確定日付のある証書で通知または承諾がされているかどうかで決着がつけられることになり、いずれかの対抗要件を備えた者が、債権譲渡があったことを対抗できる。
Point1 C・Dが共に「確定日付のある通知」を備えている場合は、確定日付の先後ではなく、通知書がBに到達した日時の先後により決する(最判昭49.3.7)。
Point2 「確定日付のある通知」がC・Dに「同時」に到着した場合は、C・Dが共にBに対して債権全額の弁済を請求することができる(最判昭55.1.11)。この場合、Bは、C・Dいずれか一方に弁済をすれば、債務を免れることになる(債権者不確知を理由に弁済供託をすることもできる)。
■債権譲渡における債務者の抗弁権・相殺権
(1) 債務者の抗弁権
債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる(468条1項)。
例えば、債権譲渡の通知や承諾までに債務者が譲渡人に弁済をしていた場合は、譲受人に対して弁済による債務の消滅を譲受人に対抗することができる。このほかにも、債務者が主張できる抗弁権としては同時履行の抗弁権や無効・取消しの主張などがあげられる。
Point 対抗要件具備時とは、譲渡人が債権譲渡の対抗要件となる譲渡通知をし、または債務者が債権譲渡の対抗要件となる承諾をした時である。したがって、「通知を受けるまで」だけでなく「承諾をするまで」に譲渡人について生じた事由についても、譲受人に対抗することができる。
(2) 債務者の相殺権
債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる(469条1項)。
事例 AはBに100万円の代金債権を有しており、BはAに100万円の貸金債権を有している。双方の債権の弁済期が到来すればBは相殺を主張することができたのだが、それまでにAがその債権をCに譲渡してしまった。この場合、Cからの支払請求に対して、Bは、Aに対する貸金債権による相殺を主張することができる。