• 民法ー4.債権総論
  • 1.債権の発生
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  • Sec.1

1債権の発生

堀川 寿和2021/12/02 13:30

 財産権には、物に対する権利である「物権」と、人に対する権利である「債権」がある。ここでは、そのうち「債権」を学習する。

債権の単元は「債権総論」と「債権各論」に分かれ、そのうち「債権総論」では債権に共通のルールを学ぶ。それに対して、「債権各論」では、債権の発生原因ごとに特有のルールを学ぶ。


債権の発生原因

 債権とは、特定の人に対して一定の行為を請求することができる権利をいう。

債権の発生原因は「契約」、「不法行為」、「不当利得」、「事務管理」の4種類がある。


(1) 契約

 契約が有効に成立すると、債権者は債務者に対して、契約で合意された内容の履行を請求することができる。


事例 A所有の土地建物につき、AB間で売買契約が成立した。この場合、売主Aは買主Bに対して代金の支払いを請求することができ、買主Bは売主Aに対して土地建物の引渡しを請求することができる。




(2) 不法行為

 故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(709条)。


事例 BがA所有の建物に放火したため、建物が全焼してしまった。この場合、被害者Aは加害者Bに対して、損害賠償を請求することができる。



(3) 不当利得

 法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う(703条)。


事例 A所有の土地建物につき、AC間で売買契約が成立したが、Aは誤って買主ではないBに土地建物を引き渡してしまった。この場合、損失者Aは受益者Bに対して、不当利得(土地建物)の返還を請求することができる。




(4) 事務管理

 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる(702条1項)。


事例 Bは、隣人Aの留守中に台風が接近して、A所有の建物の屋根の一部が壊れていたため、Aからの依頼なくその屋根を修理した。この場合、管理者Bは本人Aに対して、屋根の修理に要した費用の償還を請求することができる。




契約の種類

(1) 財産の移転に関する契約

① 贈与

 贈与契約は、当事者の一方(贈与者)がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方(受贈者)が受諾をすることによって、成立する(549条)。



② 売買

 売買契約は、当事者の一方(売主)がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方(買主)がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、成立する(555条)。



(2) 物の貸借に関する契約

① 賃貸借

 賃貸借は、当事者の一方(賃貸人)がある物の使用および収益を相手方にさせることを約し、相手方(賃借人)がこれに対してその賃料を支払うことおよび引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、成立する(601条)。



② 消費貸借(書面でしない場合)

消費貸借契約は、当事者の一方(借主)が種類、品質および数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方(貸主)から金銭その他の物を受け取ることによって、成立する(587条)。



(3) 労務の利用に関する契約

① 請負

 請負契約は、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、成立する(632条)。



② 委任

委任契約は、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方(受任者)がこれを承諾することによって、成立する(643条)。




契約の分類


分類①双務契約 当事者の双方が対価的な意義をもつ債務を互いに負担する契約(売買契約、賃貸借契約、請負契約)
片務契約 当事者の一方だけが債務を負担する契約(贈与契約)
分類②有償契約 当事者の双方が互いに対価的な意義をもつ経済的な負担をする契約(売買契約、賃貸借契約、請負契約)
無償契約 当事者の一方のみが経済的な負担をする契約(贈与契約)
分類③諾成契約 当事者双方の意思表示の合致のみで成立する契約(売買契約、請負契約、委任契約)
要物契約 当事者双方の意思表示の合致のほか、物の引渡し等が必要になる契約(書面でしない消費貸借契約)