• 民法ー3.物権(担保物権を除く)
  • 8.地上権・永小作権・地役権
  • 地上権・永小作権・地役権
  • Sec.1

1地上権・永小作権・地役権

堀川 寿和2021/12/02 13:22

 地上権・永小作権・地役権は「用益物権」と呼ばれる。用益物権とは、他人の所有する土地を一定の目的のために使用・収益することができる権利である。

地上権

(1) 地上権の内容

 地上権とは、工作物(建物など)または竹木を所有するために他人の土地を使用する権利である(265条)。地代は必ずしも必要ない(無料でもよい)。


Point 建物所有を目的とする地上権には、借地借家法の適用がある。


(2) 地下または空間を目的とする地上権

 地下または空間は、工作物(地下鉄や送電線)を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる(269条の2第1項前段)。


永小作権

 永小作権とは、小作料を支払って、耕作または牧畜をするために他人の土地を使用する権利である(270条)。

地役権

(1) 地役権の内容

 地役権とは、自分の土地(要役地)の便益のために他人の土地(承役地)を利用する権利である(280条)。これは、自分の土地の価値を高めるために、他人の土地を利用することができるということである。

たとえば、近道するために他人の土地を通行させてもらう通行地役権や、マンションの眺望のために隣地に高い建物を建てないようにしてもらう眺望地役権などがある。


(2) 地役権の性質

① 地役権の付従性

 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、または要役地について存する他の権利の目的となる(281条本文)。 また、地役権は、要役地から分離して譲り渡し、または他の権利の目的とすることができない(281条2項)。


② 地役権の不可分性

 土地の共有者の1人は、その持分につき、その土地のためにまたはその土地について存する地役権を消滅させることができない(282条1項)。


(3) 地役権の時効取得

① 地役権の時効取得の要件

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる(283条)。


Point 「継続」の要件をみたすには、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設があっただけでは足りず、その開設が要役地所有者によってなされたことを要する(最判昭33.2.14)。


② 要役地が共有土地である場合の地役権の時効取得

土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する(284条1項)。

共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない(284条2項)。

地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する(284条3項)。