- 憲法―16.天皇
- 3.天皇の権能
- 天皇の権能
- Sec.1
1天皇の権能
「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(4条1項)。
■天皇の行うことができる「国事に関する行為」(国事行為)
(1) 7条の定める国事行為
① 憲法改正、法律、政令および条約を公布すること。
② 国会を召集すること。
③ 衆議院を解散すること。
④ 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
⑤ 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免、全権委任状と大使および公使の信任状を認証すること
⑥ 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を認証すること。
⑦ 栄典を授与すること。
⑧ 批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
⑨ 外国の大使および公使を接受すること。
⑩ 儀式を行うこと。
(2) 6条の定める国事行為
① 国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命すること。
② 内閣の指名に基づいて最高裁判所長官を任命すること。
(3) 4条2項の定める国事行為
法律の規定に基づいて国事行為を委任すること。
■国事行為に対する内閣の助言と承認
すべての国事行為には、「内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」(3条)。
国事行為に内閣の助言と承認を要する理由については、次のような争いがある。
(1) 結果的形式説
国事行為には国政に関する行為の要素が含まれているところ、天皇は国政に関する行為を行うことはできないから、内閣の助言と承認を要するとすることによって、天皇が行う国事行為のうち国政に関する行為の要素を形式的なものとするためであるという説。
(2) 本来的形式説
もとより国事行為は国政に関する行為の要素を含まない形式的・名目的・儀礼的行為であるが、そうした国事行為についても内閣の助言と承認を要するとすることによって、国政に関する権能をもたない象徴天皇制を確認するためであるという説。