- 憲法―12.裁判所
- 3.裁判官の地位
- 裁判官の地位
- Sec.1
1裁判官の地位
■裁判官の職権行使の独立性
すべての裁判官は独立して職権を行使することが保障され(76条3項)、裁判官の職権行使の独立性を確保するため、厚い身分保障が与えられている(78条)。
「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律のみに拘束される」(76条3項)。ここで、『良心』の意味については争いがあり、裁判官個人の主観的良心であるとする主観的良心説と、裁判官としての客観的良心ないし裁判官の職業倫理であるとする客観的良心説(通説)が対立している。
裁判官の職権行使の独立性の範囲と限界が問題となるのは、次の場合である。
(1) 議院の国政調査権
両議院のもつ国政調査権の範囲には、裁判に関する調査も含まれている。しかし、①現に裁判所に係属中の事件について、裁判官の訴訟指揮を対象とする国政調査、②裁判の内容について、もっぱらその当否を判断するための国政調査などは、裁判官の職権行使の独立性を侵害するものであって許されないと考えられている。
(2) 司法部内における監督権
司法行政上上位の裁判所が下位の裁判所に対してもつ「監督権は、裁判官の裁判権に影響を及ぼし、又はこれを制限することはない」(裁判所法81条)。したがって、個々の裁判への干渉となるような監督権の行使は許されない。
■裁判官の任命
(1) 最高裁判所裁判官の任命
最高裁判所長官は、内閣の指名に基づいて、天皇が任命する(6条、裁判所法39条1項)。最高裁判所長官以外の最高裁判所判事は、内閣が任命し、天皇が認証する(79条1項、裁判所法39条2項、3項)。
(2) 下級裁判所裁判官の任命
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。下級裁判所裁判官の任期は10年であり、再任されることができる(80条1項、裁判所法40条3項)。