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1裁判所の組織

堀川 寿和2021/12/01 12:35

 裁判所は、最高裁判所と下級裁判所に大別される(76条1項)。裁判所法がその詳細について定めている。

最高裁判所と下級裁判所

 最高裁判所は、その長たる裁判官(最高裁判所長官)及び法律の定める員数のその他の裁判官(最高裁判所判事)で構成される(79条1項)。すなわち、14人の最高裁判所判事(裁判所法5条3項)に長官を加えた合計15人の裁判官によって構成される。

 下級裁判所には、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所および簡易裁判所の4種類がある(裁判所法2条1項)。


審級と司法行政権における関係

(1) 審級関係

 裁判所間には審級がある。すなわち、同一訴訟事件または決定命令事件について、裁判に不服がある当事者の上訴に基づいて、上級審において原裁判の当否が審理、判断される。こうした上訴制度における裁判所間の審判の順序や上下関係が審級である。上級審裁判所は、上訴に理由があると認める場合、下級審裁判所による裁判を取消または変更する裁判を行うことができる。「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する」(裁判所法4条)。しかし、これは、下級審裁判所が上級審裁判所の指揮監督の下で裁判を行うことを意味しない。すべての裁判所は司法権をそれぞれ独立に行使するのである。

 

(2) 司法行政における裁判所間の関係

 これに対して、裁判所の行政作用に関しては、裁判所間に指揮監督の関係がある。最高裁判所は、最高裁判所の職員ならびに下級裁判所及びその職員を監督し、以下同様に、上位の裁判所は下位の裁判所の司法行政に関する監督権を有する(裁判所法80条各号)。


(3) 規則制定権

 「最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有」し(77条1項)、検察官はこの規則に従わなければならない(77条2項)。「最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる」(77条3項)。


特別裁判所の設置禁止

 特別裁判所を設置することは禁止されている(76条2項前段)。特別裁判所とは、特定の身分をもつ者や特定の種類の事件について、司法権を行使する裁判所である。旧憲法下で設置されていた行政裁判所、皇室裁判所や軍法会議は特別裁判所に当たり、日本国憲法下で設置することは禁止される。

 ただし、特定の種類の事件についてのみ司法権を行使する裁判所であっても、それが最高裁判所の系列に属するならば、特別裁判所には当たらない。例えば、家庭裁判所は、家事事件や少年事件という特定の種類の事件についてのみ司法権を行使するが(裁判所法31条の3第1項各号)、家庭裁判所の審判に不服がある当事者は高等裁判所へ上訴することが認められており、この意味で、家庭裁判所は通常の裁判所の系列に属する裁判所であって、特別裁判所にはあたらない(最大判S31.5.30)。

 なお、弾劾裁判所は特別裁判所に当たるが、憲法自身が認めた例外として設置が許される(64条)。