• 憲法―10.国会
  • 5.国会の権能
  • 国会の権能
  • Sec.1

1国会の権能

堀川 寿和2021/12/01 10:43

 国会の権能と、国会を構成する各議院の権能とは区別される。後者は、各議院の活動の独立性を確保するためのものである。



先ず、国会の権能は、次のとおりである。

法律の議決権

 法律の議決は、唯一の立法機関たる国会の専権事項である。法律案は、憲法に特別の定めがある場合を除いては、両議院で可決したときに法律となる(59条1項)。衆議院の優越が認められている(59条2項、3項)。

内閣総理大臣の指名権

 内閣総理大臣は、国会議員の中から、国会の議決により指名される(67条1項)。衆議院の優越が認められている(67条2項)。

弾劾裁判所の設置権

 弾劾裁判所とは、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判する裁判所であり、両議院の議員によって組織される(64条1項)。裁判官の弾劾に関する事項は法律事項であり(64条2項)、裁判官弾劾法や国会法がその詳細を定めている。なお、国会は弾劾裁判所の設置権を有するが、弾劾裁判所は国会の機関ではないので、一旦設置された後は、国会閉会中もその職務を行うことができる。

 ところで、弾劾裁判とは何であろうか。76条2項前段により裁判所以外の機関が裁判を行うことは禁止されている(特別裁判所の禁止)。弾劾裁判は、特別裁判所の禁止に対する例外を憲法が明文で認めたものである(64条)。国会が裁判所に対して一定のコントロールを及ぼすことは、裁判の公正と司法に対する国民の信頼を確保することにつながるからである。

 弾劾裁判は、(1)訴追委員会による訴追→(2)弾劾裁判所における裁判という手順を踏んで行われる。


(1) 訴追委員会

① 訴追委員会

 訴追委員会は、裁判官について弾劾事由があると考えられる場合、その事由について調査を行い、調査結果に基づき裁判官について罷免の訴追または訴追猶予を決定する(裁判官弾劾法11条)。弾劾事由とは、職務上の義務に著しく違反し、または職務を甚だしく怠ったとき、およびその他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときである(裁判官弾劾法2条)。

② 構成

 各議院で選挙により選出された訴追委員(衆議院から10名、参議院から10名の計20名)により構成される(国会法126条1項、裁判官弾劾法5条1項)。訴追委員は、弾劾裁判所の裁判員との兼職は禁止される(国会法127条)。


(2) 弾劾裁判所

① 機能

 弾劾裁判所は、訴追委員会による裁判官の罷免の訴追があった場合、当該裁判官を罷免するか否かを決定する裁判を行う。

② 構成

 各議院で選挙により選出された裁判員(衆議院から7名、参議院から7名の計14名)により構成される(国会法125条1項、裁判官弾劾法16条1項)。