- 憲法―7.社会権
- 3.勤労権
- 勤労権
- Sec.1
1勤労権
■勤労権の意義
国民各自の生存は、第一次的には国民の勤労によって確保される。そしてそのためには、国民の勤労の自由が保障されているだけでは足りず、適切な条件のもとで勤労する機会が与えられなければならない。
■勤労権の法的性格
勤労の権利は、自由権的側面をも有するとされるが、社会権的側面に本来的な意義があるとされ、社会権の一環として位置付けられている。
(1) 自由権的側面
勤労の自由を侵害されない。
(
2) 社会権的側面
国家に対し、積極的行為を要求する権利。
cf. 勤労の権利の法的性格については、生存権同様の争いがあるが、27条1項は、国家に対して国民に勤労の機会を提供する政治的義務を課したもので、国民に具体的権利を認めたものではないとするのが通説である。
■勤労権の内容
(1) 国の施策
勤労権は、国家に対して勤労の機会を要求する権利であり、働く能力と意思があるにもかかわらず勤労の機会が得られない場合には、それに代わる保護を要求し得る。このような勤労の権利を実現するために、国の施策として職業安定法、雇用保険法、男女雇用機会均等法などの多数の法律が制定されている。
(2) 勤労条件の決定
労働に関する契約は、本来、私的自治の原則により労使間の契約の自由に委ねられるはずであるが、私的自治の原則に任せてしまうと、労働者の不利になるおそれがある。そこで、27条2項は、労働者を保護するため、労働条件の最低基準について国家が関与し、法律によって適正な基準を定めるものとしている。
cf. この規定を具体化するものとして、労働基準法、最低賃金法などが制定された。
(3) 児童酷使の禁止
児童労働は賃金などの点で使用者に有利なため、劣悪な労働条件を押し付けた歴史的事実がある。そこで、とくに27条3項を設けて、児童の酷使を禁止している。