- 憲法―5.経済的自由権
- 2.外国移住の自由・国籍離脱の自由
- 外国移住の自由・国籍離脱の自由
- Sec.1
1外国移住の自由・国籍離脱の自由
■外国移住の自由・国籍離脱の自由の意義
外国に移住する自由とは、外国が入国を認めることを前提に、外国に移住することにつき公権力によって禁止されないことを意味する。22条2項は外国移住・国籍離脱の自由について規定しているが、22条1項と異なり、移動する地が国外であるため、憲法は別の規定を設けたのである。
■外国移住の自由
(1) 海外旅行の自由
海外旅行の自由の憲法上の根拠については争いがある。
① 13条説
一般的自由または幸福追求権の一部として保障される。
② 22条1項説
「移転の自由」に含まれる。
③ 22条2項説(判例・通説)
「外国移住の自由」に含まれる。
(2) 旅券制度の合憲性
日本国民は、海外渡航のための出国に際し、有効な旅券(パスポート)を所持しなければならず(出入国管理及び難民認定法60)、旅券の交付が海外渡航の条件となっている。そこで、旅券の交付について、「著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」に対して、外務大臣が発給を拒否しうることを定めている旅券法13条1項5号の合憲性が問題となるが、判例は、旅券法による制限は公共の福祉に合致するものとして合憲であるとする。
判例 | 帆足計事件(最大判S33.9.10) |
前参議院議員であった帆足計氏が、モスクワで開催される国際経済会議への出席を渡航目的とするソ連邦(当時)行きの一般旅券の発給を外務大臣に申請したところ、発給拒否処分がなされた事件。 |
《争点》 | 1. 海外渡航の自由は憲法何条により保障されるか?
2. 旅券発給を拒否することができる場合を「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」と定める旅券法13条1項5号の規定は、漠然不明確ゆえに憲法31条に反し、違憲か? |
《判旨》 | (争点1)
憲法22条2項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由を含むものと解すべきである。 (争点2) 外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきである。そして旅券発給を拒否することができる場合として、旅券法13条1項5号が、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」と規定したのは、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたものと見ることができ、右規定が漠然たる基準を示す無効のものであるということはできない。 |
■外国人の出入国の自由
(1) 外国人の入国の自由
外国人の入国の自由に対する規制は、国際慣習法上、国家の裁量に委ねられている。判例も、「憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでない」とする(マクリーン事件最大判S53.10.4)。
(2) 外国人の出国の自由
外国人の出国の自由は、憲法上保障されている。その根拠については争いがあるが、22条2項で保障される外国移住の自由に含まれるとするのが判例・通説である。
(3) 外国人の再入国の自由
判例は、「わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでない」とする(森川キャサリーン事件最判H4.11.16)。