• 法令上の制限税その他ー10.免除科目
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  • Sec.1

1建物

堀川 寿和2021/11/26 15:59

 この分野は対策が立てにくい。やさしい出題もされる一方、建築士レベルの知識がないと解けない問題も出題されることがあり、確実に1点稼ぐことを計算するのは不可能といってよい。よって、「土地」同様、過去問の出題事項についてだけしっかりとした知識をつけておいて、そのレベルに収まる出題がされればボーナスとして得点、そうでなければ、「正解できれば儲けもの」程度の取り組み方でよい。


「木造」に関する基本事項

 木造とは、骨組みを木材で構成する建物の総称である。

(1) 木材

① 樹木の構成

 木口部分を見ると、髄(樹心)に近い部分は、色が濃く、樹皮に近い部分は色が淡い。

 一般的には、前者の部分を心材(赤身)といい、後者の部分を辺材(白太)という。一般に、辺材は心材に比べて軟らかく、乾燥収縮による変形が大きい。また、虫害を受けやすく、耐久性も乏しい。


② 木材の性質

 木材の強度は、含水率が小さい(乾燥している)状態の方が高くなるため、建築物に使用する際には、その含水率を確認することが好ましい。含水率は15%以下が望ましい。

 木材の強度は、比重・含水率によっても多少影響されるが、加力方向によって、その強度はかなり異なる。「引張力および圧縮力」については、繊維方向が最も強く、直角方向に対して引張では10~30倍、圧縮では5~10倍位である。「せん断」に対しては、繊維に直角方向のほうが強い。


③ 集成材

 集成材は、単板などを積層したもので、大規模な木造建築物に使用される。厚さ2.5~5cm程度の木材を積み重ね、接着剤で張り合わせたものであり、均一性に優れ、伸縮しにくく、変形にも強い。

集成木材構造は、集成木材で骨組を構成した構造で、体育館等に用いられる。


(2) 木造建築物

① 屋根

屋根は、できるだけ軽量にする。日本瓦は重く、耐震性が低い。


② 柱

(a) 柱は、なるべく均等に設け、上下階の柱を1本で通す通し柱を多くする。

(b) なお、枠組壁工法(ツーバイフォー) は、2インチ×4インチ用材枠組を作り壁および床により構造体とする工法であり、耐震性が高く、通し柱でなくてもよい。

(c) 木造2階建の建築物で、隅柱を通し柱としない場合、柱とけた等との結合部を金物で補強することにより、通し柱と同等以上の耐力をもつようにすることができる。

(d) 構造耐力上主要な部分である柱の張り間方向およびけた行方向の小径は、それぞれの方向でその柱に接着する土台、足固め、胴差、はり、けたその他の構造耐力上主要な部分である横架材の相互間の垂直距離に対して、原則として一定の割合以上のものでなければならない。


③ 壁

(a) 壁は、その軸組の要所(建物の隅角部等)にできるだけ多くの筋かい等を組み入れた耐力壁(構造体の壁で、鉛直と水平荷重を負担する壁)を均等に設ける。

(b) 平面形状が長方形の木造建築物の壁は、多くの場合張り間方向とけた行方向とで風圧力を受ける面積が異なるので、それぞれ所定の計算方式により算出して耐力壁の長さを決める必要がある。


④ 基礎、土台

(a) 木造は湿気に弱い構造であるため、地盤面からの十分な基礎の立上がりをとる必要がある。

(b) 基礎、土台は、耐震・耐風性を強化するために、建物形態をできるだけ単純なものとするとともに、基礎は地盤の不同沈下に対して変形破壊されないよう鉄筋コンクリート造の布基礎(連続基礎)とする。

(c) 「杭基礎」は、建築物自体の重量が大きく、浅い地盤の地耐力では建築物が支えられない場合に用いられる。

(d) 建築物の基礎に木ぐいを用いる場合、その木ぐいは、平家建の木造の建築物に使用する場合を除き、常水面下にあるようにしなければならない。

(e) 基礎と上部構造は、土台を介してアンカーボルトで堅固に接合する。仕口および継手を金物で緊結する。

(f) 原則として、土台は、基礎に緊結しなければならない。

(g) 建築物には、原則として、異なる構造方法による基礎を併用してはならない。建築物に異なる構造方法による基礎を併用した場合は、構造計算によって構造耐力上安全であることを確かめなければならない。


⑤ 仕口および継手

仕口および継手は、意匠の面よりも強度を重視すべきである。


⑥ 防腐措置等

(a) 木造の外壁のうち、鉄網モルタル塗その他軸組が腐りやすい構造である部分の下地には、防水紙その他これに類するものを使用しなければならない。

(b) 木造建物の寿命は、木材の乾燥状態や防虫対策などの影響を受ける。

(c) 構造耐力上主要な部分である柱、筋かいおよび土台のうち、地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。

(d) 構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質は、節、腐れ、繊維の傾斜、丸身等による耐力上の欠点がないものでなければならない。


⑦ 筋かい

(a) 筋かいには、欠込み(かきこみ)をしてはならない。ただし、筋かいをたすき掛けにするためにやむを得ない場合において、必要な補強を行ったときは、この限りではない。

(b) はり、けたその他の横架材には、その中央部附近の下側に耐力上支障のある欠込みをしてはならない。


(3) その他

① 広い部屋は2階に、小さい部屋は1階に配置した方が、建物が安定する。


② 建築物の設計においては、クリープ(一定過重のもとで時間の経過とともに歪みが増大する現象)を考慮する必要がある。


③ 木造建築物の耐久性を大きくするためには防虫・防腐対策が必要であり、特に常時水がかかる場所や湿気が多い浴室、台所、便所等の土台、柱脚は、防水対策が必要である。


「鉄骨造」に関する基本事項

 鉄骨造とは、骨組みを鉄鋼材で構成する建築物の総称である。

(1) 鋼材

 鋼材は、靭性(じんせい、粘り強さのこと)に富むが、耐火性・耐食性に乏しいため、建築材料として使用する場合には、耐火被覆や防錆処理が必要である。

① 一般に建築で用いられる鋼材は軟鋼であり、形状としては、形鋼・棒鋼・鋼板・鋼管が多く使用されている。

② 鉄の性質は炭素量が大きく影響するが、一般的には、炭素量が多いほど、比重、熱膨張率、熱伝導率、電気伝導度が減少する。

③ 鋼は引張力に対して大変強度があり、引張部材として用いられる場合が多い。

④ 温度による影響については、温度が500℃付近になると、鋼材の引張強度、弾性率などがほぼ半減する。

⑤ 鉄骨造の建築物の構造耐力上主要な部分の材料は、炭素鋼もしくはステンレス鋼または鋳鉄としなければならない。ただし、鋳鉄は、圧縮応力または接触応力以外の応力が存在する部分には、使用してはならない。

⑥ 鋼材の接合方法としては、溶接のような冶金的方法とボルト等により接合する機体的方法がある。鉄骨造においても、こうした方法が用いられ、必ずしも溶接によって接合しなければならないわけではない。


(2) 鉄骨造の特徴

① 鉄骨造は、自重が軽く、靭性が大きいことから、大空間の建築や高層建築の骨組に適している。

②鉄骨構造は、不燃構造であるが、火熱に遭うと耐力が減少するので、耐火構造にするためには、耐火材料で耐火被覆する必要がある。

③ 鋼材は、錆により断面が減少するので、防錆処理を行い耐久力を増す必要がある。

④ 従来、鉄骨造は、工場、倉庫、体育館、講堂等の単層で大空間をもつ建物や鉄塔等の高い構築物に利用されてきたが、耐火被覆構法の進展や鋼材の加工の良さが見直され、現在、住宅、店舗、事務所、工業化建築等にも進出している。


「鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造」に関する基本事項

(1) コンクリート

 コンクリートは、水、セメント、砂および砂利を混練したものをいう。使用骨材によって、普通コンクリート、軽量コンクリートなどに分かれる。骨材とは、砂と砂利をいい、砂を細骨材、砂利を粗骨材と呼んでいる。一方、一般に水、セメントおよび砂を練り混ぜたものは、モルタルと呼ばれる。


① コンクリートの性質

(a) コンクリートの圧縮強度は引張強度より大きい。

普通コンクリートでは、一般に引張強度は圧縮強度の約1/10程度である。

(b) 耐久性、耐火性が大きい。

(c) 断熱性、遮音性に優れている。

(d) 質量が重い。


② 調合

 コンクリートは、打上りが均質で密実になり、かつ、必要な強度が得られるようにその調合を定めなければならない。


③ 中性化

 コンクリートは、アルカリ性で、鉄筋の防錆に役立っているが、経年とともに空気中の炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムに変化し、表面からアルカリ性が失われて中性化する。コンクリートの中性化速度は、水セメント比が大きくなるほど速くなる。また、調合や施工が不適当でコンクリート面のじゃんか(打設したコンクリートの表面に見られる砂利の凝集・露出部分)やコールドジョイント(打設したコンクリートに一定時間をおいて打ち足したときに生ずる打継ぎあと)、ひび割れが発生した個所の中性化も速い。


(2) 鉄筋コンクリート造の特徴

 鉄筋コンクリート造とは、鉄筋(棒鋼)とコンクリートを複合した材料で骨組みを形成する建物の総称である。

 鉄筋コンクリート構造は、耐火性、耐久性があり、耐震性、耐風性にも優れた構造である。鋳造によりつくることができるため骨組形態を自由にできる。骨組の形式はラーメン式の構造が一般に用いられる。

 短所として、自重が大きい、施工期間が長く施工が難しいことがある。鉄筋コンクリート構造の中性化は、鉄筋を錆びやすくするため、構造体の耐久性や寿命に影響する。また、鉄筋コンクリート構造におけるコンクリートのひび割れは、鉄筋の腐食に関係する。

① 「耐久力」を大きくするには

(a) 鉄筋コンクリート造に使用される骨材、水および混和材料は、鉄筋をさびさせ、またはコンクリートの凝結および硬化を妨げるような酸、塩、有機物または泥土を含んではならない。

(b) 中性化(鉄筋を錆びないよう保護しているコンクリートのアルカリ性が減少すること)の防止、鉄筋を錆びさせる要因となるコンクリートの亀裂防止などを注意する必要がある。

② 常温、常圧において、鉄筋と普通コンクリートを比較すると、熱膨張率は、ほぼ等しい。

③ 鉄筋は、炭素含有量が多いほど、引張強度が増大する傾向がある。

④原則として、鉄筋コンクリート造の柱については、主筋は4本以上とし、主筋と帯筋は緊結しなければならない。

鉄筋コンクリート造における「柱の帯筋」や「はりのあばら筋」は、地震力に対するせん断補強のほか、内部のコンクリートを拘束したり、柱主筋の座屈を防止したりする効果がある。

⑤耐力壁と周囲の柱およびはりとの接合部は、その部分の存在応力を伝えることができるものとしなければならない。

⑥原則として、鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、コンクリートから抜け出ないように定着しなければならない。

⑦ 鉄筋コンクリート構造のかぶり厚さとは、鉄筋の表面から、これを覆うコンクリート表面までの最短寸法をいう。鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁または床にあっては2cm以上、耐力壁、柱またははりにあっては3㎝以上、直接土に接する壁、柱等にあっては4cm以上、基礎にあっては捨コンクリート部分を除いて6㎝以上としなければならない。ただ、プレキャスト鉄筋コンクリートで造られた部材であって、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものについては、この限りでない。

⑧構造耐力上主要な部分に係る型わくおよび支柱は、コンクリートが自重および工事の施工中の荷重によって著しい変形またはひび割れその他の損傷を受けない強度になるまでは、取りはずしてはならない。


(3) 鉄骨鉄筋コンクリート造

 鉄筋コンクリートに鉄骨を併用した複合構造で骨組みを形成した建物の総称である。

 鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄筋コンクリート造に、さらに強度と靭性を高めた構造であり、高層建築物に用いられる。特徴は鉄筋コンクリート造とほぼ同様である。