- 法令上の制限税その他ー10.免除科目
- 3.土地
- 土地
- Sec.1
1土地
この分野は、「常識問題」として出題される。基本テキストの内容にひととおり目を通しておけば、決して難解な問題ではない。内容としては、土地の性質や宅地としての適否等が問われる。過去問の出題事項についてだけしっかりとした知識をつけておけば十分得点可能である。
■地形ごとの宅地としての適否
住宅地としての立地条件として最も基本的な条件は、地形、地盤に関することである。
(1) 山地・山麓
【山地】 火山活動による隆起、堆積、あるいは大陸移動による褶曲(しゅうきょく)や断層運動などの地理的要因により形成される山が集まって、1つのまとまりを形成している地域である。傾斜は急で、表土の下に岩盤またはその風化土が現れる地盤。
【山麓】 山すそ、山のふもとのこと。
国土を山地と平地に大別すると、山地の占める比率は、国土面積の約75%である。火山地は、国土面積の約7%を占め、山林や原野のままのところも多く、水利に乏しい。
山地の地形は、かなり急峻で、大部分が森林となっている。したがって、一般的には宅地に適さない。
山麓部は、傾斜が緩やかであれば、水はけもよく、一般的には宅地として利用することができる。ただし、山麓部では土砂災害が起こる場合があるため、その利用にあたっては、背後の地形、地質、地盤について、十分吟味する必要がある。
山麓や火山麓の地形の中で、土石流や土砂崩壊による堆積でできた地形や地すべりによってできた地形は崩れやすく、危険性が高いため宅地には適さない。
土石流は、急勾配の渓流に多量の不安定な砂礫(されき)の堆積がある所や、流域内で豪雨に伴う斜面崩壊の危険性の大きい場合に起こりやすい。
【宅地に適さない場所】
① 急傾斜地
② 土石流や土砂崩壊による堆積でできた地形
③ 地すべりによってできた地形
(2)丘陵・台地・段丘
【丘陵】 平地の周縁や山地の入りロに位置し、似たような起伏が帯状に続いた、高度300m程度以下のやや高い土地をいう。
【台地・段丘】 河川・湖・海などに接する階段状の地形で、広い段丘面と周縁部の急傾斜の段丘崖から構成される。
丘陵・台地・段丘は、水はけもよく、地盤も安定しており、一般的には宅地に適した地形である。
丘陵地帯で地下水位が深く、固結した砂質土で形成された地盤では、地震の際に液状化する可能性は低い。
台地・段丘は、国土面積の約12%で、農地として利用され、また都市的な土地利用も多い。一般に地盤が安定しており、低地に比べ、自然災害に対して安全度は高く、土地利用に適した土地である。
ただし、次の点に注意しなければならない。
① 台地や丘陵の縁辺部は、豪雨などによる崖崩れの危険性が高く、山腹で傾斜角が25度を超えると、急激に崩壊地が増加する。
② 台地や段丘上の浅く広い谷は、豪雨のとき浸水することがあり、現地に入っても気付かないことが多いが、住宅地としては注意を要する。
③ 台地や段丘上の浅い谷にみられる池沼を埋め立てた地盤は、地震の際に液状化が生じる可能性がある。
(3) 低地
【低地】 標高200m以下で、周辺より低い平野のこと。扇状地、氾濫原、三角州等に大別される。
低地は、国土面積の約13%であり、ここ数千年の間に形成され、湿地や旧河道であった若い軟弱な地盤の地域がほとんどである。低地は、洪水や地震による液状化などの災害に対して危険度が高いため、宅地に適していない。大部分が水田として利用される。
しかし、わが国の大都市地域は、大部分が低地に立地している。臨海部の低地は、水利、海陸の交通に恵まれているが、地震災害に対して脆弱で、洪水、高潮、地震による津波などの災害が多く、住宅地として利用するためには、十分な防災対策と注意が必要である(宅地の標高や避難経路を把握しておくことなど)。
①扇状地
扇状地は、山地から平野部の出口(谷出口)で、勾配が急に緩やかになる所に見られ、山地から河川により運ばれてきた砂礫(されき)等が扇状に堆積して形成された地盤である。
扇状地は、地盤は堅固で、宅地として利用することができるが、土石流災害に対して危険であることが多い。
②氾濫原
氾濫原は、河水により運搬された土砂が堆積して河川沿いにできた平野で、旧河道・自然堤防・後背湿地等に分けられる。
③三角州
三角州は、河川の河口付近に見られる河川の水が運搬した土砂が堆積して生じた三角形の土地のことである。軟弱な地盤であり、地震時の液状化現象の発生に注意が必要である。
低地の中でも比較的危険度の「低い」のは、砂質で水はけのよい微高地である。
具体的には、
① 自然堤防
低地の河川沿いに、過去の洪水による堆積土砂で作られた微高地で、砂質や砂礫質の土質からなり、排水性がよく地盤の支持力もある。
② 川底が周辺の低地より高い廃川敷(旧天井川)
③ その他(砂丘、砂州等)
逆に、低地の中で災害の危険度が「高い」のは
① 沿岸部の低いデルタ地域(三角州)
ここは、地下水の汲み上げによる地盤沈下や地震時に液状化する危険がある。
② 旧河道
過去の河川流路である旧河道は、沖積平野の蛇行帯に分布する軟弱な地盤であり、水はけの悪い土が堆積していることが多く、建物の不同沈下が発生しやすい。また、地震による地盤の液状化や洪水などによる災害を受ける危険度が高い所である。
③ 後背湿地
後背湿地は自然堤防や砂丘の背後に形成される軟弱な地盤であり、水田に利用されることが多く、宅地としての利用は少ない。
④ 河川近傍の低平地
河川近傍の低平地で、周辺に盛土を施した古い家屋が多い土地は、洪水の常習地帯である可能性が高い。
⑤ 谷底平野
谷底平野は、河川の堆積作用によって山間部の谷底に形成される狭長な沖積平野である。周辺が山に囲まれ、小川や水路が多く、ローム、砂礫等が堆積した軟弱な地盤であり、宅地には適していない。土砂災害とともに水害の危険性も高い。
(5) 干拓地・埋立地
干拓地・埋立地は、一般的に、どちらも宅地としてはあまり好ましくない。
ただし、埋立地は、一般に海面に対して数mの比高を持ち、水害などの災害に対して、干拓地よりは安全である。しかし、高潮や津波あるいは地震等の頻発地帯では、工場、倉庫、公園等の利用を優先すべきである。また、塵芥(じんかい)や産業廃棄物等による埋立地の場合には、地盤沈下が激しい場合が多い。
地震などのときに起きる液状化現象(地下水位が高いところで起こりやすい)は、埋立地などに起こりやすい。
【液状化現象】
地盤の液状化(液状化現象)は、地盤の条件と地震の揺れ方により、発生することがある。地下水位の高い砂地盤において、地震の振動により、水分を多く含んだ砂層の砂粒子が水中に浮遊したような状態(液状)になり、これにより、建物が倒壊したり、下水管等が浮き上がったりする。
■宅地造成および宅地災害
(1) 宅地造成に関する注意点
① 切土と盛土により造成した宅地は、その境目での地盤の強度が異なるため、不同沈下が起こりやすい。
切土斜面は、掘削直後の斜面安定が確認できても、その後、雨や雪等により不安定となることを忘れてはならない。
② 宅地の安定に排水処理は重要であり、擁壁の水抜き穴、盛土のり面の小段の排水溝等による排水処理の行われていない宅地は、不適当であることが多い。
宅地周りの既存の擁壁の上に、ブロックを積み増し、盛土して造成することは、宅地面積を広げることにはなるが、安全な宅地として利用できないことが多い。
③ 盛土をする場合には、盛土をした後の地盤に雨水その他の地表水の浸透によるゆるみ、沈下または崩壊が生じないように締め固めるとともに、必要に応じて、地滑り抑止ぐい等の設置その他の措置を講じなければならない(宅地造成等規制法施行令5条3号)。
④ 切土または盛土をした崖の擁壁は、鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造または練積み造のものとしなければならない(宅地造成等規制法施行令6条)。
⑤ 造成して平坦になった宅地では、一般に切土部分に比べて盛土部分で地盤沈下量が大きくなる。
(2) 最近の宅地災害の傾向
最近の宅地災害の傾向として、都市部の小河川の氾濫が多いことがあげられる。
この原因の一つには、急速な都市化、宅地化に伴い、降雨時に降水が短時間に川に流れ込むことがある。もう一つは、本流筋の改修が進み、これに流入する支川との流入調整が円滑になっていないことである。
近年、洪水氾濫危険区域図、土砂災害危険区域図等災害時に危険性があると予想される区域を表示した図書が一般に公表されており、これらは安全な宅地を選定するための資料として有益である。
■崖崩れ、地すべり、土石流等
(1) のり面・自然斜面
① 自然斜面は、地層分布、土質等が複雑かつ不均一で地盤の強さが場所により異なることが多いので、特にのり高の大きい切土を行う際は、のり面の安定性の検討をする必要がある。
② マサ、シラス、山砂、段丘砂礫などの主として砂質土からなるのり面は、地表水による浸食には比較的弱いため、排水施設の設置により安定を図ることが必要である。
③ 樹木が生育する斜面地では、その根が土層と堅く結合しても、根より深い位置の斜面崩壊に対しては、樹木による安定効果を期待することはできない。
【のり面】
切土や盛土によって人工的に造られた斜面のこと。
(2) 地すべり地
地すべり地は、特定の地質や地質構造を有する地域に集中して分布する傾向が強く、その多くは、地すべり地形と呼ばれる独特の地形を呈し、棚田などの水田として利用されることがある。地すべり地形は、上部は急斜面、中部は緩やかな斜面、下部には末端部に相当する急斜面があり、等高線は乱れて表れることが多い。一見なだらかで、水はけもよく、住宅地として好適のように見えるが、末端の急斜面部等は斜面崩壊の危険度が高い。
宅地予定地周辺の擁壁や側溝、道路等にひび割れが見られる場合、地すべりが活動している可能性が高い。
(3) 断層
断層は、ある面を境にして地層が上下または水平方向にくい違っているものである。断層の周辺では地盤の強度が安定していないため、断層に沿った崩壊、地滑りが発生する危険性が高い。
断層によってできた地形を断層地形という。断層地形は、直線上の谷など、地形の急変する地点が連続して存在するといった特徴がみられることが多い。
(4) 崖崩れ、崖錐等
① 崖崩れは、梅雨の時期や台風時の豪雨によって発生することが多く、崖に近接する住宅では日頃から降雨に対する注意が必要である。
② 花崗岩が風化してできた、まさ土地帯においては、近年発生した土石流災害によりその危険性が再認識された。
③ 豪雨による深層崩壊は、山体岩盤の深いところに亀裂が生じ、巨大な岩塊が滑落し、山間の集落などに甚大な被害を及ぼす。
④崖錐(がいすい)、河川の出口で堆積物の多い所等は、土石流の危険が大きい。
崖錐とは、急斜面や崖の下に、風化等により崩落した砂礫等が半円錐状に堆積した地形のことである。
⑤崖錐堆積物は、一般的に透水性が高く、基盤との境付近が水の通り道となって、そこをすべり面とした地すべりが生じやすい。崖錐堆積物におおわれた地域は、一般的に、切土をすると、崩壊や地すべりを起こしやすい。
⑥崩壊跡地は、微地形的には馬蹄形状の凹地形を示すことが多く、また、地下水位が高いため、竹などの好湿性の植物が繁茂することが多い。
⑦砂質土は、粘性土(粘土)に比べ、剛性(硬さ)、強度に優れており、建物の基礎の支持力においてまさっている。