• 法令上の制限税その他ー10.免除科目
  • 1.住宅金融支援機構
  • 住宅金融支援機構
  • Sec.1

1住宅金融支援機構

堀川 寿和2021/11/26 14:01


宅建業者の従業者が受講できる「登録講習」を修了すると、宅建試験において5問が免除される。その5問とは、「住宅金融支援機構」、「不動産の需給・統計」、「不当景品類及び不当表示防止法」、「土地」、「建物」である。
この分野は、あまり時間をかけず、過去の本試験で出題された内容について、知識の整理を行っておこう。


 もともと、住宅ローンのうち、長期固定の低金利の貸付けは住宅金融公庫(以下「公庫」という)が行ってきた。銀行等民間の金融機関が独力で行うことは難しいからである。しかし、赤字が増加したことや、特殊法人改革の流れを受けたこともあって、公庫は平成19年4月に解散し、公庫の権利および義務を承継する独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という)が設立された。機構の設立前に公庫が受理した申込みに係る資金の貸し付けについては、すべて機構が承継して行った。

 公庫は、直接融資業務を中心としていたが、機構では、これを原則として廃止し、民間金融機関における住宅ローン融資を支援する証券化支援業務を主要な業務とした。


住宅金融支援機構の目的

 機構は、一般の金融機関による住宅の建設等に必要な資金の融通を支援するための貸付債権の譲受け等の業務を行うとともに、国民の住生活を取り巻く環境の変化に対応した良質な住宅の建設等に必要な資金の調達等に関する情報の提供その他の援助の業務を行うほか、一般の金融機関による融通を補完するための災害復興建築物の建設等に必要な資金の貸付けの業務を行うことにより、住宅の建設等に必要な資金の円滑かつ効率的な融通を図り、もって国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

住宅金融支援機構の業務の範囲

(1) 金融機関が行う住宅資金貸付けの支援

① 証券化支援事業(買取型)

 住宅の建設・購入に必要な資金の貸付けに係る金融機関の貸付債権の譲受けを行うこと


Point1 証券化支援事業(買取型)では、一定の買取基準を満たす民間金融機関(銀行・保険会社・農業協同組合・信用金庫・信用組合など)が貸し付けた長期・固定金利の住宅ローン債権を買取り(譲受け)の対象にしている。


Point2 機構は買い取った住宅ローン債権を担保としてMBS(資産担保証券)を発行することにより、債券市場(投資家)から資金を調達している。


② 証券化支援事業(保証型)

 貸付債権を担保とする債券に係る債務の保証を行うこと


Point 証券化支援事業(保証型)では、証券化支援事業(買取型)の買取基準と同様の基準を満たす民間金融機関が貸し付けた長期・固定金利の住宅ローンについて、機構は、住宅融資保険の引き受けを行い、その住宅ローンを担保として発行された債券等の元利払いを保証する。


(2) 住宅融資保険

 住宅融資保険法による保険を行うこと


Point 住宅融資保険は、民間金融機関より貸付を受けた住宅ローン債務者の債務不履行により元利金を回収することができなかったことで生じる損害を補てんするものである。機構は、この住宅融資保険を引き受けることにより、民間金融機関による住宅資金の供給を支援している。


(3) 住情報の提供

 住宅の建設・購入・改良・移転(建設等)をしようとする者または住宅の建設等に関する事業を行う者に対し、必要な資金の調達または良質な住宅の設計・建設等に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと


(4) 融資業務(機構貸付け)

 機構は、災害復興融資、財形住宅融資、子育て世帯向け・高齢者世帯向け賃貸住宅融資など、政策上重要で一般の金融機関による貸付けを補完するための融資業務を行っている。

① 災害復興建築物の建設・購入または被災建築物の補修に必要な資金の貸付けを行うこと(災害復興融資)
② 災害予防代替建築物の建設・購入または災害予防移転建築物の移転に必要な資金、災害予防関連工事に必要な資金または地震に対する安全性の向上を主たる目的とする住宅の改良に必要な資金の貸付けを行うこと
③ 合理的土地利用建築物の建設・合理的土地利用建築物で人の居住の用その他その本来の用途に供したことのないものの購入に必要な資金またはマンションの共用部分の改良に必要な資金の貸付けを行うこと
④ 子どもを育成する家庭・高齢者の家庭に適した良好な居住性能および居住環境を有する賃貸住宅や賃貸の用に供する住宅部分が大部分を占める建築物の建設に必要な資金または当該賃貸住宅の改良に必要な資金の貸付けを行うこと(子育て世帯向け・高齢者世帯向け賃貸住宅融資)
⑤ 高齢者の家庭に適した良好な居住性能・居住環境を有する住宅とすることを主たる目的とする住宅の改良に必要な資金等の貸付けを行うこと

⑥ 事業主・事業主団体から勤労者退職金共済機構の行う転貸貸付けに係る住宅資金の貸付けを受けることができない勤労者に貸付けを行うこと(財形住宅融資)


Point1 災害復興建築物とは、災害により滅失した建築物等に代わるべき建築物等のことをいう。


Point2 合理的土地利用建築物とは、市街地の土地の合理的な利用に寄与する建築物等のことをいう。


(5) 団体信用生命保険

  債権譲受けにより機構が譲り受ける貸付債権に係る貸付けを受けた者・機構から貸付けを受けた者とあらかじめ契約を締結して、その者が死亡した場合(重度障害の状態となった場合を含む)に支払われる生命保険の保険金等を当該債務の弁済に充当すること


Point 団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者とあらかじめ契約を締結し、その者が死亡した場合(重度障害の状態となった場合を含む)に支払われる生命保険金を、住宅ローンの債務の弁済に充てる保険をいう。


証券化支援事業(買取型)

(1)貸付債権の買取基準

 機構が証券化支援事業(買取型)により譲り受ける貸付債権は、次の要件に適合するものでなければならない。

(a) 住宅の建設または購入のための貸付けであること(これらの借換えのための貸付けも含む)
(b) 自ら居住する住宅または自ら居住する住宅以外の親族の居住の用に供する住宅を建設し、または購入する者に対する貸付けに係るものであること
(c) 債権譲受けに係る住宅が、機構が定める一定の基準に適合するものであること
(d) 1戸当たりの住宅建設費または住宅購入価額が1億円以下であること
(e) 貸付額が、住宅建設費または住宅購入価額以下であり、かつ、100万円以上8,000万円以下であること
(f) 償還期間が、原則として、15年以上35年以下であるものであること
(g) 貸付金の利率が、全期間固定金利であること
(h) 原則として、毎月払いの元金均等または元利均等の方法により償還されるものであること


Point1 機構は、住宅の建設または購入に付随する土地または借地権の取得に必要な資金の貸付けに係る金融機関の貸付債権も、譲受けの対象にしている。


Point2 機構は、住宅の購入に付随する当該住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る貸付債権も、譲受けの対象にしている。


Point3 機構は、新築住宅だけでなく、中古住宅を購入するための貸付債権も、譲受けの対象にしている


Point4 譲受けの対象になる貸付債権は、本人または本人の親族の居住用住宅の建設・購入する者に対するものであり、賃貸住宅を建設・購入する者に対するものは対象外である。


Point5 証券化支援事業は「フラッ卜35」という商品で実施している。


(2)証券化支援事業の貸付金利

 証券化支援事業における住宅ローンの貸付金利は、民間金融機関が独自に決定するので、金融機関によって異なる場合がある。


(3) 優良住宅取得支援制度

 機構は、証券化支援事業において、優良住宅の取得を支援するために、バリアフリー性、省エネルギー性、耐震性、耐久性・可変性に優れた住宅を取得する場合に、貸付金の利率を一定期間引下げる制度を実施している。