- 法令上の制限税その他ー8.宅地・建物に関する税
- 7.贈与税
- 贈与税
- Sec.1
1贈与税
贈与税は、個人からの贈与により財産を取得した個人に対して、国が課税する国税である。例えば、土地家屋等の不動産やその取得資金などの贈与を受けると、贈与を受けた者に贈与税が課税される。
■暦年課税
贈与税は、原則として、納税者がその年の1月1日から12月31日までの間に贈与により取得した財産の合計額を課税価格として贈与税額を計算する。これを「暦年課税」という。
贈与税には基礎控除110万円がある。贈与税額は、課税価格から基礎控除110万円を控除した額に、超過累進税率(10%~55%)を適用して計算される。したがって、贈与税の課税価格が110万円以下である場合は、贈与税は課税されない。
■相続時精算課税
(1) 制度の概要
相続時精算課税とは、贈与税と相続税とを一体化した制度である。贈与時の贈与税を安くするものであり、受贈者および贈与者が所定の要件を満たす場合に、納税者は、「暦年課税」に代えて、「相続時精算課税」を選択することができる。この選択は、贈与者ごとにすることができる。
相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの累計2,500万円までの贈与については贈与税が課税されない。この金額を超えると、超える部分につき贈与時に一律20%の税率で贈与税が課税される。その後、贈与者の相続開始時に、この制度の適用を受けて贈与を受けた財産の価額と、相続により取得した財産の価額とを合計した額を課税価格として相続税額を計算し、すでに贈与税として納付した金額との差額を相続税として納付する(贈与税額が相続税額を上回る場合は差額の還付を受ける)。
(2) 適用対象者
受贈者および贈与者が所定の要件を満たす場合に、相続時精算課税の適用を受けることができる。適用要件は、次のとおり。
①受贈者(相続時精算課税適用者)
(a) 贈与者の推定相続人である直系卑属(孫を含む)であること (b) 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること ②贈与者(特定贈与者) 贈与をした年の1月1日において60歳以上であること |
(3) 相続時精算課税における贈与税額の計算方法
特定贈与者ごとにその年中に贈与により取得した財産の価額を合計した額が贈与税の課税価格となる。相続時精算課税では、特定贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除額がある。贈与税額は、課税価格から特別控除額を控除した金額に税率(一律20%)を適用して計算される。したがって、相続時精算課税選択後の贈与税の課税価格の累計が2,500万円以下であれば、贈与時に贈与税は課税されず、課税価格の累計が2,500万円を超えれば、贈与時に一律20%の税率で贈与税が課税される。
■特定贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
(1) 制度の概要
贈与により住宅取得等資金(自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭)を取得した場合に、所定の要件を満たすときは、贈与者の年齢がその年の1月1日において60歳未満であっても、相続時精算課税の適用を受けることができる。
Point1 この特例は、住宅取得等資金の贈与を受けた場合に適用を受けることができるものである。したがって、住宅用の家屋などの不動産の贈与を受けても、この特例の適用は受けられない。
Point2 この特例は、贈与者ごとに適用を受けることができる。したがって、たとえば父母の双方から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に、父が60歳以上であっても、母が60歳未満であれば、母からの贈与について、この特例の適用を受けることができる。
(2) 特例の適用要件(主なもの)
この特例の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要がある。
① 受贈者の要件
(a) 住宅取得等資金の贈与をした者の直系卑属である推定相続人(孫を含む)であること (b) 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること (d) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築・取得・増改築等をすること (e) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または、同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること (f) 受贈者の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある者から住宅用の家屋を取得したものではないこと ② 対象となる家屋等の要件 (a) 家屋の床面積が40㎡以上であること (b) 家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること (c) 中古住宅の場合は、一定の耐震基準または経過年数基準(原則築20年以内、耐火建築物の場合は築25年以内)に適合すること (d) 増改築等の場合は、工事に要した費用の額が100万円以上であること |
※ 対象となる住宅用の家屋は、日本国内にあるものに限られる
※ 住宅用の家屋の新築・取得・増改築等には、これらとともに取得するその敷地の用に供される土地等の取得も含む。
Point1 この特例の受贈者には、所得要件がない。後述の「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」と混同しないように注意。
Point2 新築および取得の場合には、要した費用の額の要件はない。
(3) 特例適用の効果
特例の適用を受けると、住宅取得等資金の贈与者の年齢が、贈与をした年の1月1日において60歳未満であっても、相続時精算課税の適用を受けることができる。