• 法令上の制限税その他ー8.宅地・建物に関する税
  • 4.印紙税
  • 印紙税
  • Sec.1

1印紙税

堀川 寿和2021/11/26 10:12

印紙税は、契約書や領収書といった課税文書の作成者に国が課税する国税である。

課税主体・課税対象・納税義務者

(1) 課税主体

 印紙税の課税主体は、国である。


(2) 課税対象

 課税の対象は、課税文書の作成である。課税文書とは契約の成立等の一定の事項を証する書面であり、主なものは、次のとおり。

① 不動産の譲渡に関する契約書(土地・建物の売買契約書・交換契約書・贈与契約書など)
② 地上権・土地の賃借権の設定・譲渡に関する契約書(土地の賃貸借契約書など)
③ 消費貸借に関する契約書(金銭消費貸借契約書など)
④ 請負に関する契約書(宅地造成工事請負契約書・家屋建設工事請負契約書など)
⑤ 売上代金に係る金銭の受取書、その他の受取書(売買代金の領収書など)


Point1 「契約書」とは、文書の名称のいかんにかかわらず、契約(予約を含む)の成立、更改、内容の変更や補充の事実(契約の成立等)を証明する目的で作成される文書をいう。したがって、不動産売買に係る契約内容を補充する念書および覚書や、不動産売買契約書に先立って作成される仮契約書も、印紙税の課税対象となる


Point2 同一内容の文書を2通以上作成した場合は、それぞれの文書が契約の成立等を証明する目的で作成されたものであるときは、それぞれの文書が課税文書となる。


Point3 不動産の売買契約を媒介した宅建業者に交付された契約書(売買契約書の控など)も課税文書に該当し、印紙税の課税の対象となる。ただし、この場合の宅建業者は、売買契約の当事者ではないため、課税文書の作成者ではない。納税義務があるのは売買契約の当事者である。


 ただし、契約書や受取書であっても、次のものは課税文書とはされず、印紙税が課税されない。

① 建物の賃借権の設定・譲渡に関する契約書(建物の賃貸借契約書など)
② 委任に関する契約書(媒介契約書・委任状など)
③ 受取書で記載された受取金額が5万円未満のもの
④ 受取書で営業に関しないもの


Point4 受取書は、記載された受取金額が5万円未満の場合や、営業に関しないものである場合は、非課税文書として、印紙税が課税されない。

(3) 納税義務者

 納税義務者は、課税文書の作成者である。売買契約書のように1つの課税文書を2人以上で共同して作成した場合には、連帯して納税義務を負う。

 ただし、国や地方公共団体(国等)が作成した文書については、印紙税が課税されない。


Point1 委任に基づく代理人が、当該委任事務の処理に当たり、代理人名義で作成する課税文書については、その文書中に委任者の名義が表示されていても、代理人が作成者(納税義務者)となる。例えば、不動産の売買契約を代理した宅建業者が、「売主の代理人」として買主から土地の売買代金を受領し、受領証を作成した場合は、受領書に売主の名前が表示されていても、宅建業者が課税文書の作成者として納税義務者となる。売主は、納税義務者ではない。


Point2 国等と国等以外の者とが共同して作成した文書については、国等が保存するものは国等以外の者が作成したものとみなして課税の対象となるのに対して、国等以外の者が保存するものは国等が作成したものとみなして課税の対象とならない


課税標準

 印紙税の課税標準は課税文書に記載された金額(記載金額)である。

 具体的な記載金額は以下のとおり。

文書の種類対象となる記載金額
売買契約書売買金額
交換契約書交換金額
交換対象物の双方の金額が記載されているとき→高いほうの金額
交換差金のみが記載されているとき→交換差金の金額
交換金額の記載がない場合→記載金額のない契約書
贈与契約書記載金額のない契約書
地上権・土地の賃借権の設定・譲渡に関する契約書設定・譲渡の対価たる金額
(権利金その他名称のいかんを問わず、契約に際して相手方当事者に交付し、後日返還されることが予定されていない金額)
設定・譲渡の対価たる金額の記載がない場合→記載金額のない契約書
請負契約書請負金額
変更契約書契約金額の増額変更増加金額
契約金額の減額変更記載金額のない契約書
受取書受取金額


Point1 1通の売買契約書に2以上の売買代金が記載されている場合は、その合計額が記載金額となる。たとえば1通の売買契約書に「甲土地の代金6,000万円、乙建物の代金3,000万円」と記載されている場合は、記載金額9,000万円の売買契約書となる。


Point2 1通の文書に不動産の譲渡契約と請負契約が併記されている場合、その文書は、原則として、不動産の譲渡に関する契約書として扱われる。ただし、その文書に譲渡金額と請負金額とが区分記載されており、請負金額が譲渡金額を超える場合は、請負に関する契約書として扱われる。この場合の記載金額は、請負金額となる。


Point3 贈与契約書は、記載金額のない契約書となる。契約書に贈与対象物の金額(評価額)が記載されていても、これは記載金額にならない。


Point4 地上権・土地の賃借権の設定・譲渡に関する契約書の記載金額は、借地権の設定・譲渡の対価たる金額、つまり、権利金その他名称のいかんを問わず、契約に際して相手方当事者に交付し、後日返還されることが予定されていない金額をいう。したがって、後日返還されることが予定されている保証金、敷金等や、契約成立後における使用収益上の対価たる賃貸料記載金額にあたらない。


Point5 文書に記載された単価・数量・記号などにより契約金額等を計算することができる場合は、その計算により算出した金額が、その文書の記載金額となる。


Point6 後日返還されることが予定されている保証金、敷金等であっても、その受取書(領収証・預り証など)は、非課税文書に該当するものでない限り、印紙税の課税の対象となる。建物の賃貸借契約に際して作成した保証金、敷金等の受取書も同様である。


Point7 記載金額は、原則として、消費税額等(消費税および地方消費税の額)を含んだ金額である。ただし、①不動産の譲渡に関する契約書、②請負に関する契約書、および③受取書については、消費税額等を区分して記載している場合、または、税込価格および税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかである場合には、記載金額に消費税額等を含めないこととされる。


税率

 税率は、課税文書の区分ごとに、記載金額に応じて、1通につきに何円になるかが定められている。贈与契約書のように記載金額のない契約書も、1通につき一律200円の印紙税が課税される。なお、課税文書の区分は、その記載内容により判断する。


Point 記載金額のない契約書も、印紙税が課税される。印紙税が課税されないわけではない。