• 法令上の制限税その他ー8.宅地・建物に関する税
  • 2.不動産取得税
  • 不動産取得税
  • Sec.1

1不動産取得税

堀川 寿和2021/11/26 09:47

 不動産取得税は、原則として、不動産を取得した者に対して、当該不動産が所在する都道府県が課税する地方税である。

課税主体・課税対象・納税義務者

(1) 課税主体

 不動産取得税の課税主体は、不動産が所在する都道府県である。


(2) 課税対象

 課税の対象は、不動産の取得である。

 ここでいう「不動産」とは、土地および家屋のことをいう。土地とは、田、畑、宅地、山林、原野などをいう。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫などをいう。

 「取得」とは、所有権を取得することをいう。登記をしていなくても、現実に所有権を取得したと認められれば課税される。課税の対象となる取得の具体例は次のとおり。

① 売買・交換による取得
② 贈与による取得
③ 家屋の新築・増築・改築による取得
④ 相続人以外の者に対してなされた特定遺贈による取得
など


Point1 取得は有償であるか無償であるかを問わないので、贈与による取得であっても、課税される。


Point2 改築については、それにより当該家屋の価格が増加した場合に限り、課税される。


 ただし、形式的な所有権の移転は、課税の対象とされない。課税の対象とならない取得の例は次のとおり。

① 相続による取得(包括遺贈・被相続人から相続人に対してなされた特定遺贈を含む)
② 法人の合併による取得
③ 共有物の分割による取得(ただし、取得者の分割前の持分の割合を超える部分の取得を除く)
など


Point3 「包括遺贈」や、被相続人から相続人に対してなされた「特定遺贈」は、相続に準ずる性質のため、課税されない。したがって、「特定遺贈」であっても、相続人以外の者に対してなされたものは、課税される


Point4 共有物の分割による不動産の取得は、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超えなければ、形式的な所有権の移転として、課税されない。超えた部分は、不動産の取得として課税の対象となる。


(3) 納税義務者

 納税義務者は、不動産を取得した者(個人および法人)である。

家屋が新築された場合は、「みなし取得者」が納税義務者となる。


Point1 家屋が新築された場合は、当該家屋について最初の使用または譲渡が行われた日において家屋の取得がなされたものとみなし、当該家屋の所有者または譲受人を取得者とみなして、これに対して不動産取得税を課する。


Point2 家屋が新築された日から6月を経過して、なお、当該家屋について最初の使用または譲渡が行われない場合においては、当該家屋が新築された日から6月を経過した日において家屋の取得がなされたものとみなし、当該家屋の所有者を取得者とみなして、これに対して不動産取得税を課する。


Point3 宅建業者が販売する新築住宅に上記「Point2」のルールを適用するにあたっては、「6月」とあるところが「1年」に延長される(宅建業者等が取得する新築住宅の取得日に係る特例)。


ただし、国、非課税独立行政法人、国立大学法人等および日本年金機構ならびに都道府県、市町村、特別区、地方公共団体の組合、財産区、合併特例区および地方独立行政法人に対しては、不動産取得税を課することができない


Point4 不動産取得税が課税されない「非課税独立行政法人」とは、独立行政法人のうち総務大臣が指定したものをいい、独立行政法人の中には不動産取得税が課税されるものもある


課税標準

 不動産取得税の課税標準は、固定資産課税台帳の登録価格である。取引において、当事者が実際に支払った金額ではない。

課税標準の特例

(1) 宅地の取得に係る課税標準の特例

 宅地を取得した場合は、その宅地の取得に対して課される不動産取得税の課税標準が、その土地の価格の2分の1の額となる。


(2) 新築住宅の取得に係る課税標準の特例

 所定の要件を満たす新築住宅を取得したときは、課税標準の算定に当たり、その家屋の課税標準となるべき価格から1戸につき1,200万円が控除される(アパート、マンションについては1区画ごとに1戸として控除)。また、認定長期優良住宅である新築住宅を取得した場合は、控除される額が、1戸につき1,300万円となる(認定長期優良住宅取得に係る課税標準の特例)。

特例の適用要件は次のとおり。この要件を満たす住宅を、「特例適用住宅」いう。

住宅の床面積が50㎡以上(1戸建以外の貸家住宅は40㎡以上)240㎡以下であること


Point 新築住宅の取得に係る課税標準の特例では、取得者は個人・法人を問わない。また、取得した住宅の用途にも制限がなく、貸家住宅であっても特例の適用を受けることができる。


(3)中古住宅(既存住宅)の取得に係る課税標準の特例

 所定の要件を満たす中古住宅(既存住宅)を取得したときは、課税標準の算定に当たり、その家屋の課税標準となるべき価格から、当該中古住宅が新築された時期に応じて、1戸につき100万円から1,200万円が控除される。特例の適用要件は、次のとおり。

① 住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること
② 個人が自己の居住の用に供する住宅であること
③ 昭和57年1月1日以後に新築されたものであること、または、新耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること


Point 中古住宅の取得に係る課税標準の特例は、個人自己居住用の住宅にしか適用されない。したがって、法人が住宅を取得した場合や、住宅の用途が貸家住宅である場合には、特例の適用を受けることができない