- 法令上の制限税その他ー6..土地区画整理法
- 5.仮換地の指定
- 仮換地の指定
- Sec.1
1仮換地の指定
■仮換地の指定
たとえば、土地区画整理事業によって工事が行われる場所に誰かが住んでいると工事の邪魔になる。そのため、工事が完了して換地処分がなされるまでは、ひとまずどこか別の場所に仮住まいをしてもらわなければならない。この仮住まいのための土地の指定を『仮換地の指定』という。仮換地が指定されると、住民は仮換地を従前の宅地と同じように使用できるのである。
(1) 仮換地の指定
施行者は、換地処分を行う前において、次のいずれかに該当する場合においては、施行地区内の宅地について仮換地を指定することができる。
① 土地の区画形質の変更または公共施設の新設もしくは変更に係る工事のため必要がある場合
② 換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合 |
(2) 仮換地の指定の方法
仮換地の指定は、その仮換地となるべき土地の所有者および従前の宅地の所有者に対し、次の事項を通知して行われる。
① 仮換地の位置および地積
② 仮換地の指定の効力発生の日 |
(3) 仮換地の指定についての事前の同意等
施行者は、仮換地を指定しようとする場合においては、あらかじめ、その指定について、関係権利者などの同意等を得ておかなければならない。
個人施行者 | 従前の宅地の所有者および仮換地となるべき宅地の所有者の同意を得なければならない |
組合 | 総会もしくはその部会または総代会の同意を得なければならない |
都道府県・市町村など | 土地区画整理審議会の意見を聴かなければならない |
■仮換地指定の効果
仮換地が指定されると、従前の宅地の所有者は、以後、指定された仮換地について「使用・収益権」を持ち、従前の宅地は「使用・収益」できなくなる。ただし、「所有権」(この場合は処分権のこと)だけは、従前の宅地に残り、従前の宅地を売却することやそれに抵当権を設定することができる。
(1) 従前の宅地の所有者・借地権者等に対する効果
① 通常の場合
仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、または収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地について、従前の宅地について有する権利の内容である使用または収益と同じ使用または収益をすることができるようになり、従前の宅地については、使用し、または収益することができなくなる。
Point 仮換地を使用・収益できるのは、仮換地指定の効力発生日からである(通知が到達した日からではない)。
② 仮換地指定の効力発生日とは別に使用収益開始日を定める場合
施行者は、仮換地を指定した場合において、その仮換地に使用または収益の障害となる物件が存するときその他特別の事情があるときは、その仮換地について使用または収益を開始することができる日を仮換地の指定の効力発生の日と別に定めることができる。この場合は、仮換地の指定の通知に併せてその旨を通知しなければならない。
(2) 仮換地の所有者・借地権者等に対する効果
仮換地について権原に基づき使用し、または収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日(仮換地について使用または収益を開始することができる日を別に定めた場合においては、その日)から換地処分の公告がある日まで、当該仮換地を使用し、または収益することができない。
【仮換地指定の効果(まとめ)】
通知された仮換地指定の効力発生日から | 従前の宅地 | 仮換地 | |
従前の宅地の所有者 | 使用・収益 | × | ○ |
売却・抵当権の設定など | ○ | × | |
仮換地の所有者 | 使用・収益 | ― | × |
売却・抵当権の設定など | ― | ○ |
Point 仮換地の指定により、従前の宅地の所有者や仮換地の所有者は、その所有権を失うわけではない。
■使用収益の停止
(1) 使用収益の停止
施行者は、換地処分を行う前において、土地の区画形質の変更もしくは公共施設の新設もしくは変更に係る工事のため必要がある場合または換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合においては、換地計画において換地を定めないこととされる宅地の所有者等に対して、期日を定めて、その期日からその宅地について使用し、または収益することを停止させることができる。
(2) 使用収益の停止の効果
宅地について使用し、または収益することが停止された場合においては、当該宅地について権原に基づき使用し、または収益することができる者は、その期日から換地処分の公告がある日まで、当該宅地を使用し、または収益することができない。