- ライフプランニングと資金計画
- 2.ファイナンシャル・プランニングにおける倫理と関連法規
- 2.ファイナンシャル・プランニングにおける倫理と関連法規
- Sec.1
12.ファイナンシャル・プランニングにおける倫理と関連法規
■ファイナンシャル・プランナー(FP)
(1) ファイナンシャル・プランナー
ファイナンシャル・プランナー(FP:Financial Planner)とは、顧客の収入、資産・負債など関するあらゆる情報を集め、顧客の目標や希望を把握したうえで、必要に応じて他の専門家〔=税理士、弁護士、保険・金融・不動産の専門家など〕と連携しながら、資産の貯蓄・運用計画、保険設計、税務対策、相続対策などに関する包括的な資金計画を提案し、その実行の援助を行う専門家である。つまり、FPの役割は、資金計画に基づいて、顧客のライフプラン上の夢や目標の実現を経済的な面で支援することである。
(2) ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
FPの国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士は、名称独占資格である。つまり、その資格を有する者だけが「○級ファイナンシャル・プランニング技能士」を名乗ることができる。なお、業務独占資格ではないため、法律により固有の業務を独占的に行うことが認められているわけではない。
■FPの職業倫理
(1) 顧客情報に関する守秘義務の厳守
FPは、職業倫理上、顧客情報に関する守秘義務を厳守しなければならない。
Point FPは、「個人情報の保護に関する法律」に定められる個人情報取扱事業者に該当しない場合であっても、顧客情報に関する守秘義務を遵守しなければならない。
(2) アカウンタビリティ〔=顧客への説明義務〕
ファイナンシャル・プランニングにおいては、職業倫理上、その提案内容等をあらかじめ顧客に十分に説明し、顧客がその内容を理解したかどうかを確認しながら進めることが求められている。
■ファイナンシャル・プランニングと関連法規[実技]
ファイナンシャル・プランニング業務を行うにあたっては、関連法規を遵守することが重要である。
(1) 税理士法
税理士法上、税理士資格を有しないFPは、営利目的の有無や有償無償の別にかかわらず、税理士法に定める税理士業務を行うことができない。その行為が無償であっても税理士法に抵触する。したがって、税理士資格を有しないFPが顧客から税務に関する相談を受けたときは、一般的・抽象的な説明を行うにとどめ、個別・具体的な税額計算などは税理士に委ねる必要がある。
税理士資格がないと(無償でも)できない |
税理士資格がなくてもできる |
税理士業務 ・確定申告書の作成の代行 ・個別具体的な税務相談〔=具体的な税額計算など〕 |
税制の一般的・抽象的な説明・解説(有料でも) ・税額計算の手順の説明・解説 |
(2) 保険業法
保険業法上、生命保険募集人・保険仲立人の登録を受けていないFPは、ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を有する者であっても、生命保険の募集を行うことができない。
一方で、生命保険募集人・保険仲立人の登録を受けていないFPが、ライフプランの相談に来た顧客に対し、将来の必要保障額の試算をすることや、加入している生命保険の保障内容や生命保険商品の一般的な商品内容を説明することは、保険業法で禁止されていない。
Point ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得しても、生命保険募集人の登録を受けたとはみなされない。
(3) 金融商品取引法
金融商品取引法では、金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができないとしている。金融商品取引業のうち、ファイナンシャル・プランニング業務において問題となりうるのは、投資助言・代理業、投資運用業である。FPが投資助言・代理業、投資運用業を行うには、金融商品取引業の登録を受けなければならない。
投資助言・代理業 |
顧客と投資顧問契約を締結し、その契約に基づき特定の上場株式・有価証券の投資判断について助言する業務など |
投資運用業 |
顧客と投資一任契約を締結し、その契約に基づき金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券等に対する投資により顧客の財産を運用する業務 |
一方で、金融商品取引業(投資助言・代理業、投資運用業)の登録を受けていないFPが、顧客が保有する投資信託の運用報告書に基づき、その記載内容について説明することや、資産運用を検討している顧客に対し、NISA(少額投資非課税制度)の一般的な仕組みを説明することは、金融商品取引業法で禁止されていない。
(4) 弁護士法
弁護士法上、弁護士資格を有しないFPは、報酬を得る目的で弁護士法に定める法律事務を取り扱うことを業とすることができない。たとえ、顧客利益を優先して行ったものである場合であっても、弁護士法に抵触する。
一方で、弁護士資格を有しないFPが、顧客に対して、法制度について民法の条文を基に一般的な説明を行う行為は、たとえ有償であっても弁護士法に抵触しない。したがって、弁護士資格を有しないFPが顧客から法律相談を受けた際には、一般的・抽象的な説明を行うにとどめ、具体的な法律事務や権利関係の処理については弁護士に委ねる必要がある。
また、弁護士資格を有しないFPが、顧客の依頼を受けて、顧客の任意後見受任者や公正証書遺言作成時の証人になることは、(これらになるのに、特別な資格は必要とされていないため)弁護士法に抵触しない。
弁護士資格がないと(有償で)できない |
弁護士資格がなくてもできる |
法律事務 ・遺産分割調停手続の代理 ・離婚時の財産分与協議における代理 ・離婚協議書の作成の代理 ・具体的な権利関係の処理〔=遺産分割をめぐって係争中の相続人間の利害調整など〕 |
法制度の一般的・抽象的な説明 任意後見受任者となる 公正証書遺言作成時の証人となる |
(5) 社会保険労務士法
社会保険労務士法上、社会保険労務士資格を有しないFPは、顧客の求めに応じ報酬を得て、業として、国民年金法などの労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、申請書等の提出手続の代行などの一定の業務を行うことができない。
一方で、社会保険労務士資格を有しないFPが、顧客からの質問に応じて、日本の公的年金制度のしくみと特徴について説明をすることや、顧客の「ねんきん定期便」等の資料を参考に公的年金の受給見込み額を試算することは、社会保険労務士法に抵触しない。
(6) 宅地建物取引業法
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業は、宅地建物取引業の免許を受けた者でなければ行うことができないとしている。したがって、宅地建物取引業の免許を受けていないFPは、業務の一環として、宅地や建物(マンションを含む)の貸借の媒介を行うことができない。