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1贈与税

F32022/04/22 14:29

贈与税の課税財産・非課税財産

(1) 贈与税の課税財産

 贈与税の課税財産は、贈与税の課税対象となる財産であり、本来の贈与財産とみなし贈与財産がある。

 

① 本来の贈与財産

 本来の贈与財産は、贈与により取得した財産をいう。財産は有形無形を問わず、経済的価値があり金銭に見積もることができるものであれば、贈与税の課税対象となる。

 ただし、死因贈与により受贈者が取得した財産は、課税の対象とならない財産を除き、贈与税ではなく、相続税の課税対象となる。

 

Point 相続税法上、建物の所有を目的とした個人間での土地の使用貸借に係る土地の使用権の価額はゼロとして取り扱われため、たとえば、子が父の所有する土地を無償で借り受け、その土地の上に建物を建築した場合であっても、父から子へ借地権の贈与があったものとされることはなく、贈与税の課税対象とはならない

 

② みなし贈与財産

 みなし贈与財産は、贈与により取得した財産ではないが、実質的に贈与を受けたのと同じ効果があるために、贈与により取得したものとみなされる財産をいう。

 みなし贈与財産のうち主なものは、次のとおりである。

 

(a) 生命保険金等

 契約者〔=保険料負担者〕と被保険者と保険金等の受取人すべて異なる場合、受取人が受け取る生命保険金等は、贈与税の課税対象となる。たとえば、契約者が、被保険者が、死亡保険金受取人がである生命保険契約において、子が死亡保険金を受け取ったような場合である。

 

【参考】生命保険金等の課税関係

保険料負担者

被保険者

受取人

 

相続税

贈与税

所得税・住民税(一時所得)

 

(b) 低額譲渡による利益

 個人間において著しく低い価額で財産の譲渡が行われた場合、原則として、その譲渡があった時の譲渡財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額について、贈与税の課税対象となる。たとえば、子が父から時価300万円の株式を50万円で譲渡を受けたような場合である。

 

(2) 贈与税の非課税財産

 贈与税の非課税財産は、贈与により取得した財産ではあるが、贈与税の課税対象とならないものである。したがって、贈与税の非課税財産の価額は、贈与税の課税価格に算入されない

 贈与税の非課税財産のうち主なものは、次のとおりである。

 

① 法人からの贈与により取得した財産

 個人が法人からの贈与により取得した財産は、贈与税の課税対象とならない。この場合は、一時所得として所得税の課税対象となる。

 

② 相続開始の年に被相続人からの贈与により取得した財産

 相続または遺贈により財産を取得した者が、相続開始の年において被相続人から贈与によって取得した財産については、原則として、相続税の課税価格に算入されるので、贈与税の課税価格には算入されない

贈与税の税額の計算(暦年課税)

(1) 贈与税の課税価格

 贈与税の課税価格は、受贈者が、その年の11から1231までの間〔=暦年〕に贈与により取得した財産〔=本来の贈与財産〕および贈与により取得したものとみなされる財産〔=みなし贈与財産〕の価額の合計額となる。

贈与税の課税価格本来の贈与財産の価額+みなし贈与財産の価額

 

(2) 贈与税の税額の計算

① 原則

 贈与税の税額は、贈与税の課税価格から贈与税の基礎控除額を控除した後の金額に税率を適用して算出する。暦年課税における贈与税の基礎控除額110万円である。

贈与税の税額=(贈与税の課税価格110万円)×税率

 

Point 同一暦年間に複数人から贈与を受けた場合であっても、その年分の暦年課税による贈与税の計算上、課税価格から控除することができる基礎控除額は、最高で110万円である。

 

② 「贈与税の配偶者控除」の適用を受ける場合[実技]

 贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20以上である配偶者から居住用不動産の贈与または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受け、所定の要件を満たす場合、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円を控除することができるものである。

贈与税の税額=(贈与税の課税価格110万円2,000万円)×税率

 

Point1 夫婦間で居住用不動産を贈与した場合に贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、贈与を受けた日において夫婦間の婚姻期間が20以上なければならない。

Point2 贈与税の配偶者控除の適用を受ける場合、贈与税の課税価格から控除することができる金額は、基礎控除を含めると最高2,110万円である。

 

(3) 贈与税の税率と税額

 贈与税の税率は超過累進税率となっており、贈与税の税額は、下記の<贈与税の速算表>を用いて計算する。

 贈与を受けた年の11において18以上である者直系尊属から贈与を受けた財産〔=特例贈与財産〕については、「特例税率」を用い、それ以外の財産〔=一般贈与財産〕については「一般税率」を用いる。

 

【用語解説】直系尊属

直系尊属」とは、本人の父母祖父母など、直系血族のうち自分よりも先の世代の者をいう。

 

<贈与税の速算表>[実技]

 

《速算表の使い方》

 基礎控除後の課税価格に対し、その該当欄の税率を乗じた金額から控除額を差し引いた額が贈与税の税額である。なお、試験では問題文中に速算表が示されるため、数値を覚える必要はない。

贈与税の税額=(基礎控除後の課税価格×税率)-控除額

* 贈与税の配偶者控除の適用を受ける場合は、表中の「基礎控除後の課税価格」とあるのは「基礎控除および配偶者控除後の課税価格」となる。

<速算表を用いた贈与税の税額の算出方法>[実技]   ※「速算表」については前ページを参照。

相続時精算課税

 相続時精算課税は、父母や祖父母から生前贈与を受けたときに、特別控除額および一定の税率で贈与税の税額を計算し、贈与者が死亡したときに相続税で精算する制度である。

 

(1) 相続時精算課税の選択

 父母または祖父母からの贈与により取得した財産については、所定の要件を満たす場合、相続時精算課税を選択することができる。

 相続時精算課税を選択すると、その選択に係る同一の贈与者〔=特定贈与者〕からの贈与により取得した財産については、その選択をした年分以降はすべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできない

 

Point 子が父からの贈与により取得した財産について相続時精算課税の適用を受けた場合、その適用を受けた年以後、子は父からの贈与により取得した財産について暦年課税を選択することはできない。

 

(2) 相続時精算課税の適用要件[実技]

 相続時精算課税の適用を受けるための要件は、次のとおりである。

(a) 受贈者〔子・孫〕は、贈与を受けた年の11において18以上であること

(b) 贈与者〔父母・祖父母〕は、贈与をした年の11において60以上であること

 

(3) 税額の計算[実技]

 相続時精算課税の適用を受けた場合、特定贈与者ごとに特別控除額として累計2,500万円までの贈与には贈与税が課されず、それを超えた部分については一律20の税率により贈与税が課される。

 

【参考】相続時精算課税の適用を受けた場合の相続時の精算

 特定贈与者が死亡したときに、相続時精算課税の適用を受けた当該特定贈与者からの贈与財産の贈与時の価額を相続財産の価額に加算して相続税額を計算し、既に納めた贈与税額は相続税額から控除して過去の生前贈与分を精算する。