- 不動産
- 2.不動産の見方
- 不動産の見方
- Sec.1
1不動産の見方
■不動産とは
民法の定義によると、「不動産」とは、土地およびその定着物をいう。代表的な土地の定着物が建物である。
土地と建物とは一体となっているが、わが国では、法律上も取引上も、土地と建物とは別個の独立した不動産として扱われる。
■不動産登記
不動産登記とは、不動産取引の安全と円滑を図るために、不動産の物理的状況や権利関係など一定の登記事項を公示〔=一般に公開〕する制度である。
不動産の登記記録を調査することにより、登記記録上の所有者や、抵当権や賃借権など所有権以外の権利があるかどうかを確認することができる。
(1) 不動産の登記記録の構成
不動産の登記記録は、土地の登記記録と建物の登記記録に分けられ、それぞれ「表題部」と「権利部」により構成される。
① 表題部
不動産の登記記録の表題部には、表示に関する事項が記録される。
(a) 土地の登記記録の表題部
土地の登記記録の表題部には、所在や地番、地目、地積など、土地の表示に関する事項が記録される。
(b) 建物の登記記録の表題部
建物の登記記録の表題部には、所在や家屋番号、種類、構造、床面積など、建物の表示に関する事項が記録される。
建物の床面積は、原則として、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積〔=壁芯面積〕で算出される。ただし、区分建物に係る登記に記録される区分建物の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積〔=内法面積〕により算出される。
【用語解説】区分建物
「区分建物」とは、いわゆる「マンションの専有部分」のことである。 |
② 権利部
不動産の登記記録の権利部には、権利に関する事項が記録される。「権利部」はさらに「権利部(甲区)」と「権利部(乙区)」に区分される。
(a) 権利部(甲区)
不動産の登記記録の権利部(甲区)には、所有権に関する事項が記録される。
たとえば、不動産を最初に取得した者がする所有権保存登記や、不動産が売買により取得された場合に買主がする所有権移転登記は、権利部(甲区)に記録される。
(b) 権利部(乙区)
不動産の登記記録の権利部(乙区)には、抵当権や賃借権などの所有権以外の権利に関する事項が記録される。
たとえば、工場を建設する際に、金融機関から融資を受け、土地を担保として抵当権が設定される場合、抵当権設定登記は、権利部(乙区)に記録される。
Point 不動産の登記記録において、抵当権に関する事項は、権利部(乙区)に記録される。
【用語解説】抵当権
「抵当権」とは、土地や建物などの不動産を担保にする権利のことである。 たとえば、住宅ローンを借りる場合は、金融機関から、購入する住宅の土地と建物に抵当権の設定を求められることが一般的である。 |
<不動産の登記記録の構成>[実技]
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記録事項 |
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不動産登記記録 |
表題部 |
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表示に関する事項 |
土地:所在、地番、地目、地積 など |
建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積 など |
||||
権利部 |
甲区 |
所有権に関する事項 |
所有権保存登記、所有権移転登記 など |
|
乙区 |
所有権以外の権利に関する事項 |
地上権設定登記、抵当権設定登記 など |
(2) 登記の効力
不動産登記には対抗力が認められるが、公信力は認められない。
① 対抗力がある
「対抗力」とは、当事者以外の第三者に対して、自分に権利があることを対抗〔=主張〕することができる法律上の効力である。
不動産登記には対抗力が認められているため、所有権の移転や抵当権の設定などの権利変動は、登記をしなければ、当事者以外の第三者に対抗することができない。
② 公信力がない
「公信力」とは、登記などによって真実と異なる権利関係が公示されている場合に、その公示を信頼して取引した者が法的に保護される効力のことをいう。
不動産登記には公信力が認められていないため、登記記録上の権利者が真実の権利者と異なっている場合に登記記録を信頼して取引をしても、原則として法的に保護されない。
Point 不動産の登記事項証明書に記載されている所有者と当該不動産の売買取引を行ったが、後にその者は真の所有者でないことが判明した場合に、登記事項証明書を信用して取引したことを証明しても、当該不動産の所有権を取得できるとは限らない。
(3) 仮登記
不動産〔=土地・建物〕の売買において、所有権の移転が発生したものの、登記申請に必要な書類が提出できないなどの手続上の要件が備わっていない場合、仮登記をすることができる。この仮登記をすることで、その後に行う本登記の順位が保全される。しかし、所有権の移転を第三者に対抗することはできない。
(4) 登記事項証明書の交付請求
不動産の権利関係を確認するために、誰でも〔=当該不動産の所有者以外の者であっても〕、登記事項証明書の交付を請求することができる。交付にあたっては、原則として、交付請求書に土地の地番、建物の家屋番号を記載する必要があるので、これらを確認のうえ、申請しなければならない。
なお、登記事項証明書の交付は、法務局のホームページからオンライン請求することも可能である。
Point1 不動産の登記事項証明書の交付を請求することができる者は、当該不動産の所有者に限られない。
Point2 不動産の登記事項証明書には、全部事項証明書(登記簿謄本)などがある。
■不動産の価格
(1) 土地の価格
土地の価格には実勢価格〔=取引価格〕のほかに、公示価格、基準地標準価格、相続税路線価、固定資産税評価額の4つの公的な価格がある。実勢価格は、これらの価格を目安にして決められることが多い。
① 公示価格
公示価格は、地価公示法に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日を価格判定の基準日(価格時点)として標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、一般の土地の取引価格の指標等として毎年3月に官報で公示〔=公表〕するものである。
② 基準地標準価格
都道府県地価調査の基準値の標準価格は、毎年7月1日を価格判定の基準日として調査され、都道府県知事により毎年9月頃に公表される。
③ 相続税路線価
宅地の相続税評価の基礎となる相続税路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価格であり、国税局長が毎年1月1日を価格判定の基準日として評価するもので、当該価格は地価公示の公示価格の80%を価格水準の目安として設定されている。
④ 固定資産税評価額
固定資産税評価額は、土地・家屋に係る固定資産税の課税標準となる価格であり、原則として、3年ごとの基準年度において評価替えが行われる。
土地の固定資産税評価額は、原則として基準年度の前年の1月1日を価格判定の基準日として、地価公示の公示価格の70%を価格水準の目安として設定されている。
<公的な土地の価格>[実技]
価格の種類 |
公示価格 |
基準地標準価格 |
相続税路線価 |
固定資産税評価額 |
所管 |
国土交通省 |
都道府県 |
国税庁 |
市町村(東京 23区は東京都) |
評価時点 |
毎年1月1日 |
毎年7月1日 |
毎年1月1日 |
原則として基準年度の前年1月1日(3年に1度評価替え) |
評価割合 |
― |
公示価格の100% |
公示価格の 80%程度 |
公示価格の 70%程度 |
実施目的 |
一般の土地取引の指標など |
一般の土地取引の指標など (公示価格の補完) |
相続税、贈与税等の財産評価の基礎 |
固定資産税や登録免許税等の課税標準の基礎 |
(2) 不動産の価格を求める鑑定評価の手法
不動産鑑定評価基準に規定されている不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法には、原価法、取引事例比較法および収益還元法がある。
① 原価法
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。
② 取引事例比較法
取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正および時点修正を行い、かつ、地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である。
③ 収益還元法
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である。