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1セーフティネットと金融取引に関連する法規

F32022/04/22 11:22

セーフティネット

(1) 預金保険制度

 預金保険制度とは、銀行等が破綻した場合に、預金者を保護する制度である。

 

① 預金保険制度による保護

(a) 原則

 預金保険制度により、定期預金や利息の付く普通預金などの一般預金等は、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までとその利息等が保護される。

 

(b)決済用預金〔例外〕

 決済用預金とは、無利息・要求払い・決済サービスを提供できる、という3つの条件を満たす預金をいう。当座預金、利息の付かない普通預金などが該当する。

 預金保険制度の対象金融機関に預け入れた決済用預金は、預入金額の多寡にかかわらず、その全額が預金保険制度による保護の対象となる

 

② 保護の対象

 預金保険制度による保護の対象となるのは、原則として、当座預金、普通預金定期預金などの預金である。ただし、外貨預金など一定の預金は、預金保険制度による保護の対象とならない

 また、銀行を通じて購入し銀行で管理されているものであっても、株式投資信託個人向け国債などは、そもそも預金に該当しないので、預金保険制度による保護の対象とならない

 

(2) 日本投資者保護基金

 日本投資者保護基金は、証券会社の不正等によって損失を被った投資家を保護するための機関である。

 

① 日本投資者保護基金による補償

 日本投資者保護基金は、会員である金融商品取引業者が破綻やそれ以外の財政的な困難のために、分別管理の義務に違反したことによって、一般顧客から預託を受けていた有価証券・金銭を返還することができない場合、一般顧客1につき1,000万円を上限に金銭による補償を行う。

 

② 補償の対象となる資産・対象とならない資産

(a) 補償の対象となる資産

 日本投資者保護基金の補償対象となる顧客の資産は、証券会社が行っている有価証券関連業務に関するものである。主なものは、証券会社が保管の委託を受けている株式、公社債、投資信託などで、海外で発行されたものを含む。

 

Point 証券会社が保管の委託を受けている外国株式外貨建てMMFも、日本投資者保護基金の補償の対象となる

 

(b) 補償の対象とならない資産

 補償対象となる顧客の資産は、証券会社が行っている有価証券関連業務に関するものに限られるので、証券会社が取り扱っていても外国為替証拠金取引(FX取引)の証拠金など、有価証券関連業務に含まれない取引に係る顧客の資産は補償の対象とならない

 また、銀行は日本投資者保護基金の会員ではないので、銀行で購入し銀行で管理されている投資信託は、日本投資者保護基金の補償の対象とならない

金融取引に関連する法規

(1) 金融サービスの提供に関する法律〔金融商品販売法〕

 金融サービスの提供に関する法律〔金融商品販売法〕は、金融商品の販売・勧誘をめぐるトラブルから顧客を保護することを目的として、顧客に対する金融商品販売業者等の重要事項の説明義務断定的判断の提供等の禁止のほか、重要事項説明を行わなかった場合や断定的判断の提供等を行った場合の金融商品販売業者等の損害賠償責任などを規定している。

 

① 金融商品の販売、金融商品取引業者等

 金融商品の販売に該当する行為のうち主なものは、次のとおりである。

(a) 銀行による預金の受入れ

(b) 保険会社による保険契約の締結

(c) 有価証券を取得させる行為

(d) デリバティブ取引

 そして、金融商品の販売等を業として行う者を、金融商品販売業者等という。

 

② 重要事項の説明義務

 金融サービスの提供に関する法律の規定によれば、金融商品販売業者等には、金融商品の販売にあたって、所定の重要事項について顧客に説明することが義務付けられている。説明しなければならない重要事項のうち主なものは、次のとおりである。

(a) 金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨および当該指標等について

(b) 当該金融商品の販売業者等の業務または財産の状況の変化を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨

 

③ 断定的判断の提供等の禁止

 金融商品販売業者等は、金融商品の販売等を業として行うときは、金融商品の販売にあたって、すべての顧客に対し、不確実な事項について断定的判断の提供等を行ってはならない。

 

Point 金融商品販売業者等の断定的判断の提供等の禁止に関する規定は、一定の投資経験を有する顧客に対する金融商品の販売等にも適用される

 

④ 重要事項説明を行わなかった場合や断定的判断を行った場合の損害賠償責任

 金融商品販売業者等は、金融商品の販売に際し、顧客に対し重要事項の説明をしなければならない場合においてその説明をしなかったとき、または断定的判断の提供等を行ったときは、それによって生じた顧客の損害を賠償しなければならない

 

(2) 金融商品取引法

 金融商品取引法は、金融商品取引業者等が金融商品の販売・勧誘をする際に遵守すべき行為規制を定める法律である。なお、銀行による外貨預金など特定預金等の契約の勧誘については、銀行法により、金融商品取引法に規定された行為規制の一部が準用される。

 

① 適合性の原則

 金融商品取引法の規定によれば、金融商品取引業者等は、金融商品取引行為において、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当な勧誘を行ってはならないとされている。これを適合性の原則という。

 

② 金融ADR制度

 金融ADR制度とは、金融分野における裁判外紛争解決制度〔=Alternative Dispute Resolution〕である。内閣総理大臣が指定する指定紛争解決機関には、全国銀行協会証券・金融商品あっせん相談センター生命保険協会日本損害保険協会などがある。

 

【用語解説】指定紛争解決機関

 「指定紛争解決機関」は、銀行・証券・保険などの業態ごとに設立されており、紛争解決等業務を行う。金融機関との間でトラブルが発生した場合、利用者は指定紛争解決機関に対して紛争解決の申立てをすることができる。この申立てがあった場合、指定紛争解決機関に所属する金融分野に見識のある弁護士などの中立・公正な専門家(紛争解決委員)が和解案を提示し、解決に努める。裁判よりも短期間で紛争〔=トラブル〕を解決することができ、利用料も一部を除き無料である。

セーフティネットと金融取引関連の法規ーチェック問題

【チェック問 セーフティネットと金融取引関連の法規】

 

1. 国内銀行に預け入れられた外貨預金は、預金保険制度の保護の対象となる。[2019-9-15

 

2. 銀行による預金の受入れや保険会社による保険契約の締結は、「金融サービスの提供に関する法律」における金融商品の販売に該当する。[2014-1-14改]

 

3. 金融サービスの提供に関する法律では、金融商品販売業者等の断定的判断の提供等の禁止に関する規定は、一定の投資経験を有する顧客に対する金融商品の販売等には適用されない。[2015-9-15改]

 

4. 金融商品取引法に規定される「適合性の原則」とは、金融商品取引業者等は、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行ってはならないというルールである。[2018-1-15

 

5. 金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)において、内閣総理大臣が指定する指定紛争解決機関には、全国銀行協会、証券・金融商品あっせん相談センター、生命保険協会、日本損害保険協会などがある。[2017-5-15

 

6. 預金保険による保護の対象となる預金等のうち、定期預金などの一般預金等については、1金融機関ごとに預金者1人当たり元本(   )までとその利息等が保護される。[2015-1-45

1) 1,000万円

2) 2,000万円

3) 3,000万円

 

7. 預金保険制度の対象金融機関に預け入れた(   )は、預入金額の多寡にかかわらず、その全額が預金保険制度による保護の対象となる。[2019-9-45

1) 定期積金

2) 決済用預金

3) 大口定期預金

 

8. 日本投資者保護基金は、会員である金融商品取引業者が破綻し、分別管理の義務に違反したことによって、一般顧客から預託を受けていた有価証券・金銭を返還することができない場合、一定の範囲の取引を対象に一般顧客1人につき(   )を上限に金銭による補償を行う。[2021-3-45

1) 1,000万円

2) 2,000万円

3) 2,500万円

 

9. 国内の(   )は、日本投資者保護基金の補償の対象となる。[2018-1-45

1) 銀行で購入し銀行で管理されている投資信託

2) 証券会社が取り扱っている外国為替証拠金取引(FX取引)の証拠金

3) 証券会社が保管の委託を受けている外貨建てMMF

 

10. 金融商品の販売にあたって、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨および当該指標等について顧客に説明することが、(   )で義務付けられている。[2019-5-45改]

1) 商法

2) 消費者契約法

3) 金融サービスの提供に関する法律