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1所得税の申告と納付

F32022/04/21 15:04

所得税の申告と納付

 所得税は、原則として、納税者が自己で納付税額を計算し、確定申告をして納付する。

確定申告

(1) 確定申告書の提出期限

 所得税の確定申告をしなければならない者は、原則として、所得が生じた翌年の216から315までの間に、納税地の所轄税務署長に対して確定申告書を提出しなければならない。納税地は、原則として、納税者の住所地である。

 なお、提出方法には、確定申告書を税務署に持参または送付して提出する方法のほかに、e-Taxを利用する方法〔=電子申告〕がある。

 

Point 給与所得者が確定申告をする場合も、確定申告書は、その納税者の住所地の所轄税務署長に対して、直接提出する。勤務先の住所地ではない。

 

(2) 給与所得者の確定申告[実技]

 給与所得者については、毎月の給与の支払のつど所得税が源泉徴収され、年末調整で過不足が精算されて課税が終了するため、原則として、確定申告は不要である。

 しかし、給与所得者であっても、次のような場合には、確定申告が必要となる。

 

① 給与等の年間収入金額が2,000万円を越える場合

 給与所得者のうち、その年中に支払を受けるべき給与等の収入金額が2,000万円を超える者は、年末調整の対象者とならないため、所得税の確定申告をしなければならない。

 

② 給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合

 1か所から給与等の支払を受けている者で、年末調整により所得税が精算されている者であっても、その年中の給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合は、所得税の確定申告をしなければならない。

 

③ 所得控除のうち雑損控除、医療費控除、寄付金控除の適用を受ける場合

 年末調整の対象となる給与所得者は、年末調整の際に、所定の書類を勤務先に提出することにより、所得控除の適用を受けることができる。ただし、所得控除のうち年末調整において適用することができない雑損控除医療費控除セルフメディケーション税制〔=医療費控除の特例〕を含む)寄付金控除の適用を受ける場合は、所得税の確定申告をしなければならない。

 

Point1 年末調整の対象となる給与所得者は、年末調整により、生命保険料控除地震保険料控除などの所得控除の適用をうけることができる

Point2 医療費控除の適用を受けるためには、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付して提出する必要がある。

Point3 確定申告の不要な給与所得者等が「ふるさと納税」を行う場合は、各ふるさと納税先の自治体に申請書を提出して「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用することにより、確定申告を行わなくても寄付金控除の適用を受けることができる。ただし、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用することができる者は、同一年中のふるさと納税先の自治体数5以下である者に限られる。

 

④ 住宅借入金等特別控除(初年度分)の適用を受ける場合

 年末調整の対象となる給与所得者が所得税の住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合、初めて適用を受ける年分については確定申告をする必要がある。なお、その翌年以降の年分については年末調整によることができる

 

(3) 準確定申告

 所得税の確定申告書を提出すべき者がその提出期限までに申告書を提出しないで死亡した場合や、確定申告を要する者が年の途中で死亡した場合には、その相続人は、原則として、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の死亡当時の納税地の所轄税務署長に対し所得税の準確定申告書を提出しなければならない。この納税者が死亡した場合の確定申告を、準確定申告という。

 

Point たとえば、確定申告を要する納税者Aさんが令和4820日に死亡し、Aさんの相続人が同日にAさんの相続の開始があったことを知った場合、Aさんの相続人は令和4年分のAさんの所得について令和41220日までに所轄税務署長に対して所得税の準確定申告書を提出しなければならない。

青色申告

 青色申告の制度は、一定の帳簿書類を備付け、それに基づいて正確に所得を計算する納税者に対し特典を与えるための制度である。

 

(1) 青色申告

 不動産所得事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けることにより青色申告書を提出することができる。

 これを「青色申告」といい、青白申告書者には、いくつかの特典が与えられる。

 

(2) 青色申告の要件

① 青色申告の承認

 青色申告をするには、あらかじめ納税地の所轄税務署長の承認を受ける必要がある。承認申請の手続は、次のとおりである。

原則

 青色申告の承認を受けようとする者は、原則として、青色申告書による申告をしようとする年の315までに、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

例外

 その年の116日以後、新たに業務を開始した者が、その年分から所得税の青色申告の承認を受けようとする場合、原則として、その業務を開始した日から2か月以内に、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

 

② 帳簿書類の備付けと保存

 青色申告者は所定の帳簿書類を備え付けて、これに取引を記録しなければならない。また、青色申告者が備え付けるべき帳簿書類については、原則として7年間保存しなければならない。

 

(3) 青色申告者に対する主な税務上の特典

① 青色申告特別控除

 青色申告者は、所得の計算上、所得金額から青色申告特別控除額を控除することができる。控除額は「10万円」、「55万円」または「65万円」の3種類があり、それぞれ適用要件が異なる。

 

(a) 55万円」または「65万円」の青色申告特別控除

 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者が、正規の簿記の原則に従い取引を記録した帳簿を備え、貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書をその提出期限までに提出するなどの要件を満たす場合、最高55万円青色申告特別控除の適用を受けることができる。

 また、55万円の青色申告特別控除の適用要件に該当することに加えて、e-Taxによる申告〔=電子申告〕または電子帳簿保存を行うと、控除額が10万円追加されて最高65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができる。

 

Point 不動産所得のみを有する青色申告者は、不動産の貸付けの規模が事業的規模としてなされている場合に限り、最高55万円または65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができる。

 

(b) 10万円」の青色申告特別控除

 55万円」または「65万円」の青色申告特別控除の適用を受けることができない青色申告者は、最高10万円の青色申告特別控除の適用を受けることができる。

 

<青色申告特別控除の適用要件と控除額>

青色申告特別控除の要件

控除額

【以下の全ての要件を満たすこと】

不動産所得事業的規模に限る)または事業所得を生ずべき事業を営む者であること

正規の簿記の原則に従い記帳すること

➌ 申告書に貸借対照表損益計算書その他の計算明細書添付すること

➍ 申告書を提出期限までに提出すること

55万円

【上記➊~➍に該当したうえで、以下のいずれかの要件を満たすこと】

e-Taxによる申告〔=電子申告〕を行うこと

電子帳簿保存を行うこと

65万円

【上記➊~➍のいずれかの要件を満たさない場合】

10万円

 

② 青色事業専従者給与の必要経費算入

 原則として事業主と生計を一にする親族に支払う給与は必要経費に算入することができないが、生計を一にする親族が青色事業専従者に該当する場合、事前に届け出ることにより、一定の要件の下で青色事業専従者に支払った給与の全額を必要経費に算入することができる。

 

【参考】青色事業専従者の要件

青色事業専従者は、次の要件の全てに該当することが必要である。

(a) 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること

(b) その年の1231日現在で年齢が15歳以上であること

(c) その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

(d) 「青色事業専従者給与に関する届出書」をその年の315日までに提出していること

 

③ 純損失の繰越控除、純損失の繰戻還付

 青色申告者に損益通算してもなお控除しきれない損失の金額(純損失の金額)が生じた場合、所定の要件を満たすことで、その損失の金額を翌年以後最長で3年間繰り越して、翌年以後の所得金額から控除することができる。これを、純損失の繰越控除という。

 また、青色申告者が前年分も青色申告をしている場合は、純損失の金額を前年に繰り戻して、所得税の還付を受けることができる。これを、純損失の繰戻還付という。

 

④ 棚卸資産の評価について低価法の選択

 青色申告者は、事前に届け出ることにより、棚卸資産の評価について、低価法を選択することができる。

 

【用語解説】低価法

 「低価法」とは、資産の取得原価と期末時点の時価を比較して、いずれか低い方の価額を期末棚卸資産の評価額とする資産の評価方法である。