- 施工管理法
- 6.環境保全対策
- 環境保全対策
- Sec.1
■騒音・振動対策ー1
(1) 対策の基本
騒音、振動の防止対策には、発生源での対策、伝搬経路の対策、受音点、受振点での対策があり、建設工事における騒音、振動対策は、一般に発生源での対策及び伝搬経路の対策を行う。建設工事では、受音点、受振点での対策は一般的でない。
なお、発生源での対策は、比較的小さなコストで大きな効果を上げやすいので、建設工事における騒音、振動対策は、発生源の対策が基本となる。
① 騒音防止対策
建設工事の騒音防止対策は、音源対策が基本だが、伝搬経路対策及び受音側対策をバランスよく行うことが重要である。
(a) 発生源での対策(音源対策)
騒音防止対策の方法には、圧入工法のように工法自体を大幅に変更した技術と発動発電機のようにエンクロージャによりエンジン音などを清音した技術があり、どちらも発生源対策としての有効な技術である。
また、建設機械の内燃機関が音源となって発生する騒音は、音の有無と作業の効率にあまり関係なく、機械の性能を損なうことがないので、低騒音型の機械との入れ替えができる。
Point 建設機械の発生する騒音と作業効率にはあまり関係がないため、音源の騒音対策として低騒音型の機械を導入しても、作業効率が低下しないので、日程の調整も必要とならない。
(b) 伝搬経路の対策
伝搬経路の対策としては、遮音壁の設置がある。遮音壁は、音が直進する性質を利用して騒音低減をはかるもので、遮音壁が長いほど騒音低減の効果が期待できる。
② 振動防止対策
建設工事に伴う地盤振動に対する防止対策は、発生源、伝搬経路、受振対象における各対策に分類することができるが、発生源での対策を最優先で検討する。建設工事にともなう地盤振動は、施工方法や建設機械の種類によって大きく異なり、出力のパワー、走行速度などの機械の能力でも相違することから、発生振動レベル値の小さい機械や工法を選定することは、発生源での対策として有効である。
なお、振動エネルギーが拡散した状態となる受振対象での対策は、一般に広範囲、大規模になるため、一般には検討の対象とならない。
(2) 建設工事に伴う騒音振動対策技術指針
建設工事に伴う騒音、振動の発生をできる限り防止するために、国土交通省は「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」を定めている。
建設工事に伴う騒音振動対策技術指針 1 総 論 第1章 目的 1.本指針は、建設工事に伴う騒音、振動の発生をできる限り防止することにより、生活環境の保全と円滑な工事の施工を図ることを目的とする。 2.本指針は、建設工事に伴う騒音、振動の防止について、技術的な対策を示すものとする。 |
第2章 適用範囲 1.本指針は、騒音、振動を防止することにより、住民の生活環境を保全する必要があると認められる以下に示す区域におけるすべての建設工事に適用することを原則とする。 ただし、災害その他の事由により緊急を要する場合はこの限りではない。 (1) 良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域 (2) 住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域 (3) 住居の用にあわせて商業、工業等の用に供されている区域であって相当数の住居が集合しているため、騒音、振動の発生を防止する必要がある区域 (4) 学校・保育所、病院、診療所、図書館、老人ホーム等の敷地の周囲おおむね80mの区域 (5) 家畜飼育場、精密機械工場、電子計算機設置事業場等の施設の周辺等、騒音、振動の影響が予想される区域 |
第3章 現行法令 1.騒音、振動対策の計画、実施にあたっては、公害対策基本法、騒音規制法及び振動規制法について十分理解しておかなければならない。 2.地方公共団体によっては、騒音規制法及び振動規制法に定めた特定建設作業以外の作業についても条例等により、規制、指導を行っているので、対象地域における条例等の内容を充分把握しておかなければならない。 |
Point 作業効率を上げ、騒音や振動の発生期間を短縮することは騒音、振動対策となるが、騒音規制法及び振動規制法により、特定建設作業では、一時的であっても規制値を超えることは許されない。
第4章 対策の基本事項 1.騒音、振動対策の計画、設計、施工にあたっては、施工法、建設機械の騒音、振動の大きさ、発生実態、発生機構等について、十分理解しておかなければならない。 2.騒音、振動対策については、騒音、振動の大きさを下げるほか、発生期間を短縮するなど全体的に影響の小さくなるように検討しなければならない。 3.建設工事の設計にあたっては、工事現場周辺の立地条件を調査し、全体的に騒音、振動を低減するよう次の事項について検討しなければならない。 (1) 低騒音、低振動の施工法の選択 (2) 低騒音型建設機械の選択 (3) 作業時間帯、作業工程の設定 (4) 騒音、振動源となる建設機械の配置 (5) 遮音施設等の設置 4.建設工事の施工にあたっては、設計時に考慮された騒音、振動対策をさらに検討し、確実に実施しなければならない。なお、建設機械の運転についても以下に示す配慮が必要である。 (1) 工事の円滑を図るとともに現場管理等に留意し、不必要な騒音、振動を発生させない。 (2) 建設機械等は、整備不良による騒音、振動が発生しないように点検、整備を十分に行う。 (3) 作業待ち時には、建設機械等のエンジンをできる限り止めるなど騒音、振動を発生させない。 5.建設工事の実施にあたっては、必要に応じ工事の目的、内容等について、事前に地域住民に対して説明を行い、工事の実施に協力を得られるように努めるものとする。 6.騒音、振動対策として施工法、建設機械、作業時間帯を指定する場合には、仕様書に明記しなければならない。 7.騒音、振動対策に要する費用については、適正に積算、計上しなければならない。 8.起業者、施工者は、騒音、振動対策を効果的に実施できるように協力しなければならない。 |
Point1 建設工事の騒音は、工法や使用機械が異なると発生する騒音の大きさが異なるため、機械の選定にあたり考慮する必要がある。
Point2 現場の施工条件に適した機種の選定は、経済性、施工性、安全性はもとより、騒音や振動による環境問題の重要性を認識して決定する。
Point3 建設工事周辺地域の生活環境を損なわないように、住民の生活に影響の少ない時間帯を作業時間とし、低騒音、低振動の建設機械の整備を適正に行うものとする。
Point4 建設機械を稼働させる場合は、建設機械の整備、エンジンの空ぶかし・不要なアイドリングの禁止などの騒音対策を実施する。また、建設工事関連自動車による警報音・合図音については、必要最小限に止めるよう運転手に対する指導を徹底する。
Point5 建設工事に伴う地盤振動は、建設機械の運転操作や走行速度によって振動の発生量が異なるため、不必要な機械操作や走行は避ける。
Point6 建設機械の整備による騒音対策は、ブルドーザの履帯の張りの調整によって騒音が異なる場合もあり、建設機械の状態を適正に保つ。
Point7 事業者は、工事の着工に先だって近隣住民に説明会を行い、工事の目的、施工方法、騒音振動対策などについて説明し、住民の理解を得るように努めるものとする。近隣住民への説明会は原則として工事の着工前に行うべきであり、着工後では遅い。
Point8 工事の施工中に騒音、振動について地域住民から苦情があった場合は、目標値を守っていたとしても、住民の理解が得られるよう丁寧な住民対応を行うことが必要である。住民対応しないで工事を継続してはならない。
第5章 現地認査 1.建設工事の設計、施工にあたっては、工事現場及び現場周辺の状況について、施工前調査、施工時調査等を原則として実施するものとする。 2.施行前調査は、建設工事による騒音、振動対策を検討し、工事着手前の状況を把握するために、次の項目について行うものである。 (1) 現場周辺状況 工事現場周辺について、家屋、施設等の有無、規模、密集度、地質、土質及び騒音又は振動源と家屋等の距離等を調査し、必要に応じ騒音、振動の影響についても検討する。 (2) 暗騒音、暗振動 工事現場の周辺において、作業時間帯に応じた階騒音、暗振動を必要に応じ測定する。 (3) 建造物等 工事現場の周辺において、建設工事による振動の影響が予想される建造物等について工事施工前の状況を調査する。 3.施行時調査は、建設工事の施行時において、必要に応じ騒音、振動を測定し、工事現場の周辺の状況、建造物等の状態を把握するものである。 なお、施工直後においても必要に応じ建造物等の状態を把握するものとする。 |
Point1 工事による騒音・振動問題は、発生することが予見されれば事前の対策が可能となるので、建設工事が始まる前の騒音・振動の状況を把握し、建設工事による影響を事前に予測して対策を検討する必要がある。
Point2 工事の施工中も、騒音振動の発生状況及び現場内の状況を常にチェックし、工事現場周辺の環境の管理に努めなければならない。
■騒音・振動対策ー2
2 各 論 第6章 土工 (掘削、積込み作業) 1.掘削、積込み作業にあたっては、低騒音型建設機械の使用を原則とする。 2.掘削はできる限り衝撃力による施工を避け、無理な負荷をかけないようにし、不必要な高速運転やむだな空ぶかしを避けて、ていねいに運転しなければならない。 3.掘削積込機から直接トラック等に積込む場合、不必要な騒音、振動の発生を避けて、ていねいに行わなければならない。 ホッパーにとりだめして積込む場合も同様とする。 (ブルドーザ作業) 4.ブルドーザを用いて掘削押し土を行う場合、無理な負荷をかけないようにし、後進時の高速走行を避けて、ていねいに運転しなければならない。 (締固め作業) 5.締固め作業にあたっては、低騒音型建設機械の使用を原則とする。 6.振動、衝撃力によって締固めを行う場合、建設機械の機種の選定、作業時間帯の設定等について十分留意しなければならない。 |
Point1 硬い地盤を掘削する場合、バケットの爪が地盤にくい込みにくいので、バケットを落下させて衝撃力を利用することがあるが、この場合の騒音、振動は著しく大きいので、衝撃力によって「爪のくい込み」をはかることはできる限り避けなければならない。
Point2 バックホゥにより定置して掘削を行う場合は、できるだけ水平にすえつけ、片荷重によるきしみ音を出さないようにすることが安全上からも肝要なことである。
Point3 土工機械での振動は、機械の運転操作や走行速度によって発生量が異なり、不必要な機械操作や走行は避け、その地盤に合った最も振動の発生量が少ない機械操作を行う。
Point4 ブルドーザ作業は前進・後進走行をくり返し行うことになるが、高速で後進を行うと、足廻り騒音や振動が大きくなる場合もあるので注意する必要がある。なお、騒音対策型ブルドーザであっても、走行時の騒音がハイアイドル時の騒音よりかなり大きく、走行速度に比例して大きくなるので注意が必要である。
第7章 運搬工 (運搬の計画) 1.運搬の計画にあたっては、交通安全に留意するとともに、運搬に伴って発生する騒音、振動について配慮しなければならない。 (運搬路の選定) 2.運搬路の選定にあたっては、あらかじめ道路及び付近の状況について十分調査し、下記事項に留意しなければならない。なお、事前に道路管理者、公安委員会(警察)等と協議することが望ましい。 (1) 通勤、通学、買物等で特に歩行者が多く歩車道の区別のない道路はできる限り避ける。 (2) 必要に応じ往路、復路を別経路にする。 (3) できる限り舗装道路や幅員の広い道路を選ぶ。 (4) 急な縦断勾配や、急カーブの多い道路は避ける。 (運搬路の維持) 3.運搬路は点検を十分に行い、特に必要がある場合は維持補修を工事計画に組込むなど対策に努めなければならない。 (走行) 4.運搬車の走行速度は、道路及び付近の状況によって必要に応じ制限を加えるように計画、実施するものとする。なお、運搬車の運転は、不必要な急発進、急停止、空ぶかしなどを避けて、ていねいに行わなければならない。 (運搬車) 5.運搬車の選定にあたっては、運搬量、投入台数、走行頻度、走行速度等を十分検討し、できる限り騒音の小さい車両の使用に努めなければならない。 |
Point1 工事用車両による沿道交通への障害を防止するためには、工事現場周辺の道路における交通量、通学路などの有無、迂回路の状況について事前に十分調査する必要がある。
Point2 走行を伴う機械の場合、走行路の不陸が振動の発生量を支配するので、現場内及び進入路などをこまめに整地する必要がある。
Point3 運搬路はできる限り幅員の広い道路を選ぶことが望ましいが、工事用道路として住宅地の狭い道路などを使用せざるを得ない場合は、運搬車両の騒音が問題となることがあるので、車両の大きさの選定には十分な注意が必要である。
第8章 岩石掘削工 (岩石掘削の計画) 1.岩石掘削の計画にあっては、リッパ工法、発破リッパ工法、発破工法等の工法について比較検討し、総体的に騒音、振動の影響が小さい工法を採用しなければならない。 (せん孔) 2.さく岩機によりせん孔を行う場合、必要に応じ防音対策を講じた機械の使用について検討するものとする。 (発 破) 3.発破掘削を行う場合、必要に応じ低爆速火薬等の特殊火薬や、遅発電気雷管等の使用について検討するものとする。 |
第9章 基礎工 (基礎工法の選定) 1.基礎工法の選定にあたっては、既製ぐい工法、場所打ぐい工法、ケーソン工法等について、総合的な検討を行い、騒音、振動の影響の小さい工法を採用しなければならない。 (既製ぐい工法) 2.既製ぐいを施工する場合には、中堀工法、プレボーリング工法等を原則とし、次のような騒音、振動対策を検討しなければならない。 (1) 作業時間帯 (2) 低騒音型建設機械の使用 3.既製ぐいの積み卸し、吊り込み作業等は不心要な騒音、振動の発生を避けて、ていねいに行わなければならない。 (場所打ぐい工法) 4.場所打ぐい工法には、多くの種類の掘削工法があり、それらの騒音、振動の程度、発生機構も異なるので留意しておく必要がある。 5.場所打ぐい工法では、土砂搬出、コンクリート打設等による騒音、振動の低減について配慮しておかなければならない。 また、各くいが連続作業で施工されることから作業工程と作業時間帯についても留意しておかなければならない。 (ケーソン工法) 6.ニューマチックケーソン工法では、昼夜連続作業で施工されることから、エアーロックの排気音、合図音及び空気圧縮機等の騒音、振動対策を検討しておく必要がある。 |
Point 既製杭工法には、動的に貫入させる打込み工法と静的に貫入させる埋込み工法があるが、騒音振動対策として、中堀工法、プレボーリング工法などの埋込み工法を採用するのが原則である。
第10章 土留工 (土留工法の選定) 1.土留工法の選定にあたっては、鋼矢板土留工法、鋼ぐいと土留板による工法、地下連続壁工法等について、総合的な検討を行い、騒音、振動の小さい工法を採用しなければならない。 (鋼矢板工留工法、鋼ぐいと土留板による工法) 2.鋼矢板、鋼ぐいを施工する場合には、油圧式圧入引抜き工法、多滑車式引抜き工法、アースオーガによる掘削併用圧入工法、油圧式超高周波くい打工法、ウォータジェット工法等を原則とし、次の騒音、振動対策を検討しなければならない。 (1) 作業時間帯 (2) 低騒音型建設機械の使用 3.H鋼、鋼矢板等の取り付け、取り外し作業及び積込み、積卸し作業等は不必要な騒音、振動の発生を避けて、ていねいに行わなければならない。 (地下連続壁工法) 4.地下連続壁工法は、土留部材を本体構造に利用できる場合や工事現場の周辺の地盤沈下に対する制限が厳しい場合には、騒音、振動の低減効果も考慮し採否を検討する。 |
第11章 コンクリート工 (コンクリートブラント) 1.コンクリートブラントの設置にあたっては、周辺地域への騒音、振動の影響が小さい場所を選び、十分な設置面積を確保するものとする。なお、必要に応じ防音対策を講じるものとする。 2.コンクリートブラント場内で稼働、出入りする関連機械の騒音、振動対策について配慮する必要がある。 (トラックミキサ) 3.コンクリートの打設時には、工事現場内及び付近におけるトラツクミキサの待機場所等について配慮し、また不必要な空ぶかしをしないように留意しなければならない。 (コンクリートポンプ車) 4.コンクリートポンプ車でコンクリート打設を行う場合には、設置場所に留意するとともにコンクリート圧送パイプを常に整備して不必要な空ぶかしなどをしないように留意しなければならない。 |
第12章 舗装工 (アスファルトブラント) 1.アスファルトブラントの設置にあたっては、周辺地域への騒音、振動の影響ができるだけ小さい場所を選び、十分な設置面積を確保するものとする。なお、必要に応じ防音対策を講じるものとする。 2.アスファルトブラント場内で稼働、出入りする関連機械の騒音、振動対策について配慮する必要がある。 |
(舗 装) 3.舗装にあたっては、組合せ機械の作業能力をよく検討し、段取り待ちが少なくなるように配慮しなければならない。 (舗装版とりこわし) 4.舗装版とりこわし作業にあたっては、油圧ジャッキ式舗装版破砕機、低騒音型のバックホウの使用を原則とする。また、コンクリートカッタ、ブレーカ等についても、できる限り低騒音の建設機械の使用に努めるものとする。 5.破砕物等の積込み作業等は、不必要な騒音、振動を避けて、ていねいに行わなければならない。 |
第13章 鋼構造物工 (接 合) 1.現場における高力ボルトによる鋼材の接合には、電動式レンチ又は油圧式レンチの使用を原則とする。 2.現場における鋼材の穴合わせには、必要に応じドリフトピンを打撃する方法にかえて、油圧式又は電動式の静的方法の採用を検討するものとする。 (クレーン車の選定) 3.クレーン車の選定にあたっては、低騒音型建設機械の採否について検討するものとする。 (架設) 4.架設に使用するクレーン等の運転は、作業時間帯に留意するとともに、無理な負荷をかけないようにていねいに行わなければならない。 |
第14章 構造物とりこわし工 (とりこわし工法の選定) 1.コンクリート構造物を破砕する場合には、工事現場の周辺の環境を十分考慮し、コンクリート圧砕機、ブレーカ、膨脹剤等による工法から、適切な工法を選定しなければならない。 (小 割) 2.とりこわしに際し小割を必要とする場合には、トラックへ積込み運搬可能な程度にブロック化し、騒音、振動の影響の少ない場所で小割する方法を検討しなければならない。なお、積込み作業等は、不必要な騒音、振動を避けて、ていねいに行わなければならない。 (防音シート等) 3.コンクリート構造物をとりこわす作業現場は、騒音対策、安全対策を考慮して必要に応じ防音シート、防音パネル等の設置を検討しなければならない。 |
Point ブレーカによりコンクリート構造物を取壊す場合に、作業現場の周囲にメッシュシートを設置しても、騒音防止対策としての効果は期待できない。