- 施工管理法
- 5.品質管理
- 品質管理
- Sec.1
1品質管理
■品質管理
「品質管理」では、「品質管理の方法」、「盛土の締固めの品質管理」、「道路舗装工事の品質管理」(特に「アスファルト舗装の品質管理」)、「コンクリート工の品質管理」(特に「レディーミクストコンクリートの受入れ検査」、「鉄筋の加工及び組立ての検査」)からの出題が多い。
■品質管理
(1) 品質管理の定義
品質管理は、契約図書に示された品質の構造物を最も経済的に作り出すためのすべての手段の体系である。
(2) ISO 9000ファミリー規格
ISO 9000ファミリー規格とは、国際標準化機構(ISO)による品質マネジメントシステムに関する規格の総称であり、次の4つの規格から構成されている。
① ISO 9000(品質マネジメントシステム-基本及び用語) ② ISO 9001(品質マネジメントシステム-要求事項) ③ ISO 9004(組織の持続的成功のための運営管理-品質マネジメントアプローチ) ④ ISO 19011(品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針) |
① ISO 9000(品質マネジメントシステム-基本及び用語)
ISO 9000は、品質マネジメントシステムの基本的考え方と関連する用語の定義を定めており、他の品質マネジメントシステムに関する規格の基礎となるものである。
ISO 9000では、品質マネジメントの原則として、次の7つが示されている。
(a) 顧客重視 (b) リーダーシップ (c) 人々の積極的参加 (d) プロセスアプローチ (e) 改善 (f) 客観的事実に基づく意思決定 (g) 関係性管理 |
② ISO 9001(品質マネジメントシステム-要求事項)
ISO 9001は、品質マネジメントシステムに関する要求事項を定めており、あらゆる業種、形態、規模の組織が効果的な品質マネジメントシステムを実施し、運用することを支援する規格である。
Point1 ISO 9001は、製品に関する要求事項については規定していない。
Point2 JIS Q 9001規格は、ISO 9000ファミリー規格を翻訳して作成した日本工業規格としての品質マネジメントシステムの要求事項である。
■品質管理の方法ー1
(1) 品質管理の目的
品質管理の目的は、契約約款、設計図書などに示された規格を満足するような構造物を最も経済的に施工することである。
品質管理は、施工者自らが必要と判断されるものを選択し実施すればよいが、発注者から示された設計図書など事前に確認し、品質管理計画に反映させるとよい。
Point 不良個所が発生した場合はその対応を速やかに行うべきであるが、不良箇所の発見が品質管理の第一の目的ではない。
(2) 品質管理の手順
品質管理は、品質特性を決めてから、品質標準を決め、作業標準に従って作業を実施し、データを取るという手順で行い、できるだけ早期に異常を見つけ、品質の安定をはかるものである。
具体的に品質管理を進めるときに実行していく手順は、次のとおり。
➊ 品質特性の選定 |
管理しようとする品質特性を選定する。 |
➋ 品質標準の設定 |
選んだ品質特性に関する品質標準を設定する。 |
➌ 作業標準の決定 |
品質標準を満足させるための作業標準(作業の方法)を決定する。 |
➍ データ採取 |
作業標準に従って施工し、一定の期間、データを採る。 |
➎ 分析確認 |
各データが十分ユトリをもって品質規格を満足しているかどうかを工程能力図、ヒストグラム等により確かめたのち、管理図をつくり、工程が安定しているかどうかを確かめる。 |
➏ 作業方法の見直し |
施工の途中で管理図により工程に異常が生じたと判定された場合、原因を追求し、再発しないよう作業方法を見直すなどの措置をとる。 |
➐ 作業の継続 |
引き続き作業を続け、データを監視しながら、前回と同程度の期間、あるいは、データが一定の数に達したら、手順➎以下を繰り返す。 |
品質管理を進めるうえで大切なことは、目標を定めて、その目標に最も早く近づくための合理的な計画を立て、それを実行に移すことである。また、品質管理は、公正な試験による試験値、正確な現場測定値をもとに統計的手法を活用して行うことが大切である。なお、手順➎から➐における統計的手法として、工程能力図、ヒストグラムや管理図などが用いられる。
Point1 品質管理は、施工計画立案の段階で管理特性を検討し、それを施工段階でつくり込むプロセス管理の考え方である。
Point2 品質管理の手順は、一般に管理しようとする品質特性を決めてから品質標準を決める。品質標準を決めてから品質特性を決めるのではない。
① 品質特性の選定
構造物に要求される品質は、一般に設計図書(図面)と仕様書に規定されており、この品質を満たすには、何を品質管理の対象項目とするかを決める必要がある。施工時における品質管理は、使用材料、構造物の強度、締固め密度などの品質の管理が主要なものである。この、品質管理の具体的な対象項目を品質特性という(管理特性と呼ぶこともある)。
品質特性を決める場合、品質特性は次のようなものであることが望ましい。
(a) 工程(作業)の状態を総合的に表わすものである。 (b) 品質に重要な影響を及ぼすものである。 (c) 代用特性(真の品質特性と密接な関係があり、その代わりとなり得る品質特性)又は、工程要因を品質特性とする場合は、真の品質特性との関係が明らかなもの。 (d) 測定しやすいもの。 (e) 工程に対して処置がとりやすいもの。 (f) 早期に結果が得られるもの。 (g) できるだけ工程の初期段階において測定できるもの。 |
Point1 品質特性は、異常となる要因を把握しやすく、工程の状態を総合的に表わすものであることが望ましい。工程に左右されない独自の特性を表すものは、品質特性としてふさわしくない。
Point2 品質特性は、品質に重要な影響を及ぼすものであることが望ましい。品質に影響の小さいものは、品質特性としてふさわしくない。
Point3 目的としている真の品質特性との関係が明らかなものであれば、品質特性として代用特性を用いることもできる。
Point4 品質特性は、早期に結果が得られるものであることが望ましい。時間をかけて結果が得られるものや完成後に結果が得られるものは、品質特性としてふさわしくない。
Point5 施工段階においては、問題が発生してから対策をとるのではなく、小さな変化の兆しから問題を事前に予見し、手を打っていくことが原価低減や品質確保につながる。したがって、品質特性は、できるだけ工程の初期段階において測定できるものが望ましい。
② 品質標準の選定
品質標準とは、現場施工の際に実施しようとする品質の目標である。品質は必ずある値付近にばらつくものであり、設計値を十分満足するような品質を実現するためには、ばらつきの度合いを考慮して余裕を持った品質を目標とする必要がある。
③ 作業標準の決定
作業標準は、品質標準を実現するための各段階の作業での具体的な管理方法や試験方法を決めるものである。
作業ごとに、品質標準を守るための作業方法及び作業順序などをできるだけ詳細に決定する。