- 施工管理法
- 3.工程管理
- 工程管理
- Sec.1
■工程管理ー1
(1) 工程管理の目的
工程管理は、工事の施工段階を評価測定する基準を時間におき、労働力、機械設備、資材などの生産要素を、最も効果的に活用することを目的とした管理である。
Point 工程管理は、工事の着工から完成までの施工計画を時間的に管理することである。工程管理は、品質の管理ではない。
(2) 工程管理の基本
工程管理は、施工計画において品質、原価、安全など工事管理の目的とする要件を総合的に調整し、策定された基本の工程計画をもとにして実施する。
(3) 工程管理の手順と内容
① 工程管理の手順
工程管理の手順は、計画→実施→検討→処理の順となる。
(a) 計画(Plan)
施工順序、施工法などの方針により工程の手順と工程表の作成を行う。
イ) 施工計画(施工順序、施工法などの基本方針の決定) ロ) 工程計画(作業手順と日程の計画、工程表の作成など) ハ) 使用計画(労務、機械設備、資材、資金などの所要時期、品目、数量および輸送などの計画) |
(b) 実施(Do)
工事の指示、施工監督を行う。
工事の指示、承諾、協議、段階検査 |
(c) 検討(Check)
工程の進捗に伴い計画と実施作業量の比較及び機械、労力、材料など諸資源の手配を行う。
イ) 作業量管理(作業量、資材使用量などの実績の資料の整理とチェック) ロ) 進度管理(工程進捗の計画と実施の比較、進捗報告など) ハ) 手配管理(機械、労力、材料などの手配) |
(d) 処理(Act)
当初計画とずれていれば、作業の改善、工程促進、再計画などの是正措置を行う。
是正処置(作業の改善、工程促進、再計画など) |
Point 工程管理を行う場合は、工事の施工順序と進捗速度を表す工程表を用い、常に工事の進捗状況を把握して計画と実施のずれを早期に発見し、必要な是正措置を講ずることが大切である。
② 工程管理の内容
工程管理の内容は、施工計画の立案・計画を施工面で実施する統制機能と、施工途中で評価などの処置を行う改善機能に大別できる。
■工程管理ー2
(4) 品質・工程・原価の一般的な関係
工程管理においても、施工管理の目的である「より良く」、「より安く」、「より早く」の実現は重要であるが、品質・工程・原価の関係は、相反する性質があることから、これらを総合的に考慮して計画し、工期を守り、品質を保つように管理する。
品質・工程・原価の一般的な関係は、次のとおり。
引用:『土木施工管理技術テキスト 施工管理・法規編(改訂第2版)』6頁(地域開発研究所、2020)
① 工程と原価との関係
工程と原価の関係は、工程速度を上げると原価は安くなるが、さらに工程速度を上げると原価は上昇する。ある一定の限度を超えて施工速度を早めようとすると、機械の大型化や高価な資材の使用が必要となるからである。
Point 施工速度を速めれば早めるほど、益々原価が安くなっていくわけではない。
② 工程と品質との関係
工程と品質との関係は、品質のよいものは時間がかかり、工程速度を上げると品質はやや悪くなるが、さらに工程を早め突貫作業となると急激に品質は悪くなる。
③ 品質と原価との関係
品質と原価の関係は、よい品質のものは原価が高くなるが、悪い品質のものは安くできる。
(5) 工程計画
① 工程計画の作成
(a) 工程計画の作成手順
工程計画の作成手順は、次のとおり。
➊ 工種分類にもとづき、基本管理項目である工事項目(部分工事)について、施工手順を決める。 ➋ 各工種別工事項目の適切な施工期間を決める。 ➌ 全工事が工期内に完了するように、前述の工種別工程の相互調整を行う。 ➍ 全工期を通じて、労務、資材、機械の必要数を平準化し、過度の集中や待ち時間が発生しないように工程を調整する。 ➎ 以上の結果をもとに、全体の工程表を作成する。 |
(b) 工程計画作成に当たっての留意事項
工程計画の作成に当たって留意すべき事項は次のとおり。
イ) 工程計画は、工事を予定どおりかつ経済的に進めるために重要なもので、十分な予備調査に基づいて慎重に立てる必要がある。 ロ) 施工手順の検討は、全体工期や全体工事費に及ぼす影響の大きい工種を優先させ、環境、立地、部分工期などの制約条件を考慮して労働力、材料、機械など工事資源の円滑な回転に留意する。 ハ) 工程計画は、その工事の施工方法と密接に関連しているため工事条件に適した工法を想定し、これを前提に概略工程計画を作成し、工期内に入るように検討する。 ニ) 工程計画は、工事の各過程が計画どおりに遂行されているか常に比較対照し、計画とのずれが生じた場合に必要な是正措置が適切に講じられるようにしておくことが必要である。 |
② 日程計画
(a) 所要作業日数と作業可能日数との関係
日程計画では、所要作業日数〔各種工事に要する実稼働日数〕を算出し、この日数が作業可能日数より少ないか等しくなるようにする必要がある。
(b) 所要作業日数の算定
所要作業日数の算出は、工事量を1日平均施工量で除して算出する。
(c) 作業可能日数の推定
作業可能日数は、暦日による日数から、定休日、天候その他に基づく作業不能日数を差し引いて推定する。
作業可能日数=暦日数-(定休日+天候等による作業不能日数-重複日数) |
(d) 1日平均施工量の算定
1日平均施工量は、1時間平均施工量に1日平均作業時間を乗じて算出する。
1日平均施工量=1時間平均施工量×1日平均作業時間 |
(e) 1日平均施工量と工事に要する1日の施工量との関係
1日平均施工量は、工事量を作業可能日数で除して得られる1日の施工量よりも多いか等しくなるようにする必要がある。
③ 山積み及び山崩し
(a) 山積み
山積みとは、作成された日程計画の原案通りに、各作業に必要な人員、機械、資材の量を作業日ごとに集計し山積み表に表すことをいう。
(b) 山崩し
山崩しとは、山積みの結果をもとに、契約工期の範囲内で施工順序や施工時期を変えながら、人員や資機材など資源の投入量が最も効率的な配分となるよう調整し、工事のコストダウンをはかるものである。