- 共通工学
- 4.建設機械・電気設備
- 建設機械・電気設備
- Sec.1
■建設機械
(1) 建設機械の最近の技術的動向
① 省エネ化(燃費の改善)
建設機械の省エネルギーの技術的な対応としては、エネルギー効率を高めることやアイドリング時にエンジン回転数を抑制することで、燃費を改善することが行われている。
また、ハイブリッド型油圧ショベルは、旋回制動時やブームの下げ時のエネルギー回生を電気エネルギーに変換しそれを蓄えたものを使ってエンジンをアシストする方式であり、従来型のエンジンのみによる方式より省エネ効果が期待できる。
Point ハイブリッド型油圧ショベルでは、蓄えられた電気エネルギーを使って、機械の前進や後進時にエンジンをアシストする。
② 省人化
熟練オペレーターの不足からの機械の自動化としては、一般の運転でも一定の作業レベルを確保できるような運転の半自動化、電子化された操作機構などの活用が進められている。
また、超小旋回形油圧ショベルは、小型機の進歩と現場適応性の向上として、いろいろな工種で省人化をはかる応用製品とアタッチメント類が考案され使われている。
③ 機械の標準操作
ブルドーザなどの建設機械は、操作レバーの配置や操作方式が各メーカーごとに異なっていたが、誤操作による危険をなくすため、標準操作方式建設機械の普及活用がはかられている。
④ 排出ガスの抑制
排出ガス対策型建設機械の型式指定については、排出ガス対策型建設機械の指定制度、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(オフロード法)などにより実施されている。
また、電動モータを搭載し系統電力を動力源とする電動型建設機械は、地下工事などにおける作業環境の維持、防火などの観点から現場での排気ガスを出さない機械のニーズに対応して開発されている。
(2) 建設機械用エンジン
エンジンにはガソリンエンジンとディーゼルエンジンがある。建設機械では、一般に負荷に対する即応性、燃料消費率、耐久性及び保全性などが良好であるため、ディーゼルエンジンの使用がほとんどである。
① ガソリンエンジン
ガソリンエンジンは、エンジン制御システムの改良に加え排出ガスを触媒(三元触媒)を通すことにより、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)をほぼ100%近く取り除くことができる。しかし、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは、エンジンに供給された燃料のもつエネルギーのうち正味仕事として取り出せるエネルギーは、ガソリンエンジンの方が小さい。
② ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンは、排出ガス中に多量の酸素を含み、すすや硫黄酸化物を含むことから後処理装置(触媒)によって排出ガス中の各成分を取り除くことが難しいため、エンジン自体の改良を主体とした対策を行っている。
建設機械用ディーゼルエンジンは、自動車用ディーゼルエンジンより大きな負荷が作用するので耐久性、寿命の問題などからエンジンの回転速度を下げている。
(3) 各種建設機械
① ショベル系掘削機
(a) バックホウ(ドラグショベル)
バケットを車体側に引き寄せて掘削する方式をバックホウという。
バックホウは、機械が設置された地盤より低い所を掘るのに適した機械で、水中掘削もでき、機械の質量に見合った掘削力が得られる。また、掘削したあとの仕上り面がきれいで垂直掘りなど正確に掘れるので、溝掘りや法面の整形などに使用する。
(b) ショベル
爪付きのバケットを前方に動かして掘削する方式をショベルという。
油圧ショベルは、クローラ式のものが圧倒的に多く、機械が設置された地盤より高い所を削り取るのに適した機械で、山の切りくずしなどに使用する。
また、都市部の土木工事において便利な超小旋回型や後方超小旋回型が普及し、道路補修や側溝掘りなどに使用される。
(c) クラムシェル
機械式クラムシェルは、ロープに吊り下げられたバケットを重力により落下させて、バケットの重みで土砂に食い込み掘削するもので、一般土砂の孔掘り、ウェルなどの基礎掘削、河床・海底の浚渫などに使用する。
油圧式クラムシェルもあり、これは、バケットを油圧で土砂に食い込ませ、本体の反力を利用して掘削するものである。
Point バケットの重みを利用して掘削をするのは、機械式クラムシェルである。油圧式ではない。
(d) ドラグライン
ドラグラインは、ロープで保持されたバケットを旋回による遠心力を利用して遠くに放り投げ、地面に沿って手前に引き寄せながら掘削するもので、機械の設置地盤より低い所を掘る機械である。掘削半径が大きく、ブームのリーチより遠い所まで掘れ、水中掘削も可能で、河川や軟弱地の改修工事などに適しているが、硬い地盤の掘削には適さない。
② 敷均し機械
路盤の敷均し機械として使用されるモータグレーダは、GPS装置、ブレードの動きを計測するセンサーや位置誘導装置を搭載することにより、オペレータの技量に頼らない高い精度の敷均しができる。
③ 締固め機械
(a) ロードローラ
ロードローラは、表面が滑らかな鉄輪によって締固めを行うもので、マカダム型とタンデム型があり、アスファルト混合物や路盤の締固め及び路床の仕上げ転圧など道路工事に使用される。
Point ロードローラで高含水比の粘性土を締め固めることはできない。
(b) タイヤローラ
タイヤローラは、タイヤの空気圧を変えて接地圧を変化させ、バラストを付加して輪荷重を調整することにより締固め効果を大きくすることができ、路床、路盤の施工に使用される。
Point タイヤローラは、空気入リタイヤの特性を利用して締固めを行うもので、タイヤの接地圧は載荷重及び空気圧で変化させることができるため、機動性に富み、比較的種々の土質に適用できる。なお、タイヤローラのタイヤの空気圧を変えても、輪荷重に影響しない。
(c) タンピングローラ
タンピングローラは、ローラの表面に突起をつけ、突起の先端に荷重を集中させることができ、土塊や岩塊などの破砕や締固め、粘質性の強い粘性土の締固めに効果があり、厚層の土の転圧に適している。
(d) 振動ローラ
振動ローラは、ローラに起振機を組み合わせ、振動によって小さな重量で大きな締固め効果を得るものであり、一般に粘性に乏しい砂利や砂質土の締固めに効果的である。
Point 振動ローラは、自重による重力に加え、鉄輪を強制振動させて締め固める機械であり、比較的小型でも高い締固め効果を得ることができる。
■電気設備
(1) 工事用電力設備
① 電力の受電方式
電力の受電方式には、低圧受電、高圧受電などがあり、その方式は電力会社との契約電力量により決定される。
(a) 低圧受電
小規模な工事現場などで、電力会社と契約する電力が、電灯・動力を含め50kW未満のものについては、低圧受電となり、低圧の電気の供給を受ける。
工事現場で低圧にて受電する場合、電力会社からは100V又は200Vの電圧で供給を受ける。
(b) 高圧受電
電力会社と契約する電力が、電灯・動力を含め50kW以上2,000kW未満ものについては、高圧受電となり、高圧の電気の供給を受ける。
工事現場で高圧にて受電し、現場内の自家用電気工作物に配電する場合、電力会社からは6kV〔=6,000V〕の電圧で供給を受ける。
② 自家用受変電設備
工事現場で高圧にて受電し現場内の自家用電気工作物に配電する場合、電力会社との責任分界点の近くに保護施設を備えた受電設備を設置する。
工事現場に設置する自家用受変電設備の位置は、一般にできるだけ負荷の中心に近い位置を選ぶ。
③ 電気設備の容量の決定
工事現場における電気設備の容量は、月別の電気設備の電力合計を求め、このうち最大となる負荷設備容量に対して受電容量不足をきたさないように決定する。
(2) 電気設備による危険の防止
電気設備による危険を防止するために事業者が講ずべき措置が、労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)に定められている
① 手持型電灯等のガード
事業者は、移動電線に接続する手持型の電灯、仮設の配線又は移動電線に接続する架空つり下げ電灯等には、口金に接触することによる感電の危険及び電球の破損による危険を防止するため、ガードを取り付けなければならない(安衛則330条1項)。
② 溶接棒等のホルダー
事業者は、アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ、使用してはならない(安衛則331条)。
③ 漏電による感電の防止
(a) 原則(感電防止用漏電遮断装置の接続)
事業者は、電動機を有する機械又は器具(以下「電動機械器具」という。)で、対地電圧が150Vをこえる移動式若しくは可搬式のもの又は水等導電性の高い液体によって湿潤している場所その他鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に、当該電路の定格に適合し、感度が良好であり、かつ、確実に作動する感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなければならない(安衛則333条1項)。
Point 水中ポンプやバイブレータなどを使用する場合は、漏電による感電防止のため感電防止用漏電しゃ断装置を接続する必要がある。自動電撃防止装置を取り付けるのではない。
(b) 例外(感電防止用漏電しゃ断装置の接続が困難な場合)
事業者は、電動機械器具に、漏電による感電の危険を防止する感電防止用漏電しゃ断装置を接続することが困難なときは、電動機械器具の金属製外わく、電動機の金属製外被等の金属部分を、定められた方法により接地して使用しなければならない(安衛則333条2項)。
④ 電気機械器具の操作部分の照度
事業者は、電気機械器具の操作の際に、感電の危険又は誤操作による危険を防止するため、当該電気機械器具の操作部分について必要な照度を保持しなければならない(安衛則335条)。
⑤ 仮設の配線等
事業者は、仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない(安衛則338条本文)。ただし、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときは、この限りでない(同条ただし書)。なお、「絶縁被覆の損傷のおそれがない状態」とは、例えば「防護覆いを装着した状態」である
Point 仮設の配線又は移動電線を通路面において使用する場合は、絶縁被覆の損傷のおそれのないよう防護覆いを装着した状態で使用する必要がある。「金属製のステップルで固定した状態」は、「絶縁被覆の損傷のおそれのない状態」とはいえない。