• 法規
  • 11.港則法
  • 港則法
  • Sec.1

1港則法

堀川 寿和2022/04/15 16:15

港則法

 「港則法」では、港長の許可・港長への届出に関する問題が多い。港長の許可が必要なケースか港長への届出でよいケースかを整理しておこう。

港則法の概要

(1) 目的

 港則法は、港内における船舶交通の安全と港内の整とんを図ることを目的として、定められた法律である(法1条)。

 なお、海上交通のルールを定めた法律として海上衝突予防法があるが、港則法(以下この節において「法」という。)は輻輳する港内交通に対処するため、海上衝突予防法の特則を定めるものである。

 

(2) 法の適用対象となる港

① 法の適用対象となる港

 法が適用される港及びその区域は、政令〔港則法施行令〕によって定められており(法2条)、全国に500港ある。

 

② 特定港

 「特定港」とは、法の適用対象となる港のうち、喫水の深い船舶が出入できる港又は外国船舶が常時出入する港であって、政令〔港則法施行令〕で定めるものをいう(法32項)。これは全国に87港ある。

 特定港には、港則法に基づく事務を執行するために、港長が置かれている。

船舶の入出港及び停泊に関する規制

(1) 入出港の届出

 船舶は、特定港に入港したとき又は特定港を出港しようとするときは、国土交通省令〔港則法施行規則〕の定めるところにより、港長に届け出なければならない(法4条)。

 

(2) 停泊

 特定港内に停泊する船舶は、、法52項の規定により港長にびょう地を指定された場合を除き、国土交通省令〔港則法施行規則〕の定めるところにより、各々そのトン数又は積載物の種類に従い、当該特定港内の一定の区域内に停泊しなければならない(法51項)。

 これを受けて、港則法施行規則(以下この節において「規則」という)は、特定港内の区域及びこれに停泊すべき船舶を定めている。なお、びょう地の指定については、下記【参考】を参照。

 

【参考】びょう地の指定

 総トン数500トン以上の船舶は、京浜港、阪神港及び関門港内に停泊しようとするときは、けい船浮標、さん橋、岸壁その他船舶がけい留する施設(以下「けい留施設」という。)にけい留する場合の外、原則として、港長からびょう泊すべき場所(以下「びょう地」という。)の指定を受けなければならない(法52項、規則41項・3項)。

 

(3) 移動の制限〔停泊した区域から移動するための許可〕

 汽艇等以外の船舶は、次の場合を除き、港長の許可〔停泊した区域から移動するための許可〕を受けなければ、法51項の規定〔上記(2)〕により停泊した一定の区域外に移動し、又は港長から指定されたびょう地から移動してはならない(法71項)。

入出港の届出〔法4条〕をした場合

② 修繕及び係船の届出〔法81項〕をした場合

③ 港長から移動を命じられた場合〔法10条〕

④ 危険物荷役の許可〔法231項〕を得た場合

⑤ 危険物運搬の許可〔法234項〕を得た場合

⑥ 海難を避けようとする場合その他やむを得ない事由のある場合(法71項ただし書)

 なお、「汽艇等」とは、汽艇(総トン数20t未満の汽船をいう。)、はしけ及び端舟その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する船舶をいう(法31項)。

 

Point 汽艇等以外の船舶が特定港を出港しようとする場合、入出港の届出〔上記(1)〕は必要であるが、港長の許可〔停泊した区域から移動するための許可〕は不要である。

 

(4) 修繕及び係船

① 修繕及び係船の届出

 特定港内においては、汽艇等以外の船舶を修繕し、又は係船しようとする者は、その旨を港長に届け出なければならない(法81項)。

 

② 修繕及び係船に係る停泊場所の指定

 修繕中又は係船中の船舶は、特定港内においては、港長の指定する場所に停泊しなければならない(法82項)。

 

Point 停泊場所は港長が指定する。届出をする者が定めるのではない。

 

(5) 係留等の制限

 汽艇等及びいかだは、港内においては、みだりにこれを係船浮標若しくは他の船舶に係留し、又は他の船舶の交通の妨げとなるおそれのある場所に停泊させ、若しくは停留させてはならない(法9条)。

 

(6) 停泊の制限

 港内における船舶の停泊及び停留を禁止する場所又は停泊の方法について必要な事項は、国土交通省令〔規則〕で定められている(法11条)。

 

① 停泊及び停留を禁止する場所

 船舶は、港内においては、次に掲げる場所にみだりにびょう泊又は停留してはならない(規則6条)。

(a) ふ頭、桟橋、岸壁、係船浮標及びドックの付近

(b) 河川、運河その他狭い水路及び船だまりの入口付近

 

② 停泊の方法

 港内に停泊する船舶は、異常な気象又は海象により、当該船舶の安全の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、適当な予備びょうを投下する準備をしなければならない(規則7条)。