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1労働安全衛生法

堀川 寿和2022/04/15 15:35

労働安全衛生法

 「労働安全衛生法」では、特に「コンクリート造の工作物の解体等の作業における危険の防止」、「作業主任者」からの出題が多いが、「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」、「計画の届出」からもよく出題されている。

労働安全衛生法の概要

(1) 労働安全衛生法の目的

 労働安全衛生法(以下この節において「法」という。)は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としている(法1条)。

 

(2) 用語の定義

① 労働災害

 労働災害とは、労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう(法21号)。

 

② 労働者

 労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう(法22号、労働基準法9条)。

 

③ 事業者

 事業者とは、事業を行う者で、労働者を使用するものをいう(法23号)。

 

④ 元方事業者

 元方事業者とは、1つの場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者をいう(法151項)。なお、二次下請けなどで仕事の一部を請け負わせる契約が複数ある場合は、そのうち最も先次の請負契約の注文者が元方事業者とされる(同項)。

 

⑤ 特定元方事業者

 特定元方事業者とは、元方事業者のうち、建設業又は造船業を行う者をいう(法151項、労働安全衛生法施行令71項)。

 

⑥ 関係請負人

 関係請負人とは、元方事業者の請負人をいい、元方事業者の仕事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む(法151項)。

労働者の危険又は健康障害を防止するための措置

(1) 事業者の講ずべき措置等

 事業者は、次の①から⑥までの措置を講じなければならず(法20条~25条の2)、労働者は、これらの事業者が講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない(法26条)。

 

① 危険を防止するため必要な措置

(a) 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない(法20条)。

) 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険

) 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険

) 電気、熱その他のエネルギーによる危険

(b) 事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない(法211項)。

(c) 事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない(法212項)。

 

② 健康障害を防止するため必要な措置

 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない(法22条)。

(a) 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害

(b) 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害

(c) 計器監視、精密工作等の作業による健康障害

(d) 排気、排液又は残さい物による健康障害

 

③ 作業場について、労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置

 事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない(法23条)

 

④ 労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置

 事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない(法24条)。

 

⑤ 労働災害発生の急迫した危険があるときの必要な措置

 事業者は、労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない(法25条)。

 

⑥ 救護措置がとられる場合に備えてあらかじめ必要とされる措置

 建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者は、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害の発生を防止するため、次の措置を講じなければならない(法25条の2)。

(a) 労働者の救護に関し必要な機械等の備付け及び管理を行うこと。

(b) 労働者の救護に関し必要な事項についての訓練を行うこと。

(c) (a)及び(b)に掲げるもののほか、爆発、火災等に備えて、労働者の救護に関し必要な事項を行うこと。

 事業者は、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の措置のうち技術的事項を管理する者を選任し、その者に当該技術的事項を管理させなければならない。

 

(2) 元方事業者の講ずべき措置等

① 元方事業者の講ずべき措置

(a) 指導

 元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない(法291項)。

 

(b) 指示

 元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行なわなければならない(法292項)。

 指示を受けた関係請負人又はその労働者は、当該指示に従わなければならない(法293項)。

 

② 建設業の元方事業者が講ずべき措置〔関係請負人に対する技術上の指導等〕

 建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所その他の厚生労働省令で定める場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない(法29条の2)。

 

Point 土砂等が崩壊する場所において関係請負人の労働者が作業を行う場合に、当該場所に係る危険を防止するための措置を講じるのは、当該関係請負人であって、元方事業者ではない。この場合に、元方事業者は、当該関係請負人が講ずべき措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない。