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1労働基準法
■労働基準法
「労働基準法」では、特に「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」、「年少者及び妊産婦の危険有害業務の就業制限」からの出題が多いが、「労働契約」、「災害補償」、「就業規則」からもよく出題されている。
■労働基準法総則
労働基準法(以下この節において「法」という。)は、労働者の保護を基本理念として、労働条件の最低の基準を定める法律である。
(1) 労働条件の原則
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない(法1条1項)。
この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない(法1条2項)。
(2) 労働条件の決定
労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである(法2条1項)。
労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない(法2条2項)。
(3) 均等待遇
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない(法3条)。
(4) 男女同一賃金の原則
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない(法4条)。
(5) 強制労働の禁止
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない(法5条)。
(6) 中間搾取の排除
何人も、法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない(法6条)。
(7) 公民権行使の保障
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない(法7条)。ただし、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる(同条)。
(8) 定義
① 労働者
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう(法9条)。
② 使用者
「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう(法10条)。
③ 賃金
「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう(法11条)。
④ 平均賃金
「平均賃金」とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう(法12条1項)。
Point 賃金の総額には、「臨時に支払われた賃金」は算入されない(法12条4項)。
■労働契約
(1) 労働基準法違反の契約
労働基準法は、労働条件の最低基準を定めているが、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となる(法13条)。この場合、無効となった部分は、労働基準法で定める基準による(同法)。
(2) 契約期間
① 原則
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年を超える期間について締結してはならない(法14条1項)。
② 例外
次のいずれかに該当する労働契約は、5年を超える期間について締結してはならない(法14条1項)
(a) 専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約 (b) 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約((a)に掲げる労働契約を除く。) |
(3) 労働条件の明示
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない(法15条1項)。
(4) 賠償予定の禁止
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない(法16条)。
(5) 前借金相殺の禁止
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない(法17条)。
(6) 解雇制限
① 解雇制限
使用者は、次の期間は労働者を解雇してはならない(法19条1項)。
(a) 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間 (b) 産前産後の女性が休業する期間〔産前6週間、産後8週間〕及びその後30日間 |
② 解雇宣言の例外
次のいずれかに該当する場合は、解雇制限の期間中であっても、使用者は労働者を解雇することができる(法19条1項ただし書)。
(a) 使用者が、打切補償〔法81条〕を支払う場合 (b) 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合 |
ただし、この場合は、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない(法19条2項)。
(7) 解雇の予告
① 解雇の予告
使用者は、労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前にその予告をしなければならない(法20条1項)。また、30日前までに予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金〔解雇予告手当〕を支払わなければならない(同項)。
② 解雇の予告の例外
次のいずれかに該当する場合は、解雇の予告及び解雇予告手当の支払を要しない(法20条1項ただし書)。
(a) 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合 (b) 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合 |
③ 解雇予告の制度が適用されない場合
次のいずれかに該当する場合は、解雇予告の制度が適用されない(法21条)。つまり、上記②の(a)又は(b)に該当しない場合であっても、解雇の予告及び解雇予告手当の支払を要しない。
(a) 日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く。) (b) 2か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く。) (c) 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く。) (d) 試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く。) |
(8) 退職時等の証明
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合は、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない(法22条1項)。
(9) 未成年者の労働契約
親権者又は後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結してはならない(法58条1項)。