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1薬液注入

堀川 寿和2022/04/15 15:05

薬液注入

 「薬液注入」では、特に「施工管理」及び「注入効果の確認方法」からの出題が多い。

薬液注入工法ー1

(1) 薬液注入工法

 薬液注入工法とは、凝固する性質を有する化学薬品(いわゆる薬液)を地盤中の所定の個所に注入管を通じて注入し、地盤の止水性または強度を増大させることを目的とする工法である。

 

(2) 注入材料の選定

① 注入材料の分類

 注入材料としては、水ガラス系薬液が使用されている。薬液の種類としては溶液型懸濁型2つがある。

 

(a) 溶液型

 溶液型は粒子を含まない材料を使用しているものをいい、砂地盤への浸透性能が高く、砂地盤を対象としている薬液注入工事の大部分に用いられている。

 

(b) 懸濁型

 懸濁型は粒子を含む材料を使用しているものをいい、セメントを硬化材として使用しているものが基本である。溶液型に比べて高い強度を得ることができるが、地盤への浸透性能は著しく落ちる

 

[注入材料の分類]

 

第Ⅰ分類(液態)

第Ⅱ分類(pH

第Ⅲ分類(ゲル強度)

水ガラス系薬液

溶液型

(1) アルカリ系

() 無機系硬化材

() 有機系硬化材

(2) 中性・酸性系

() 無機系硬化材

懸濁型

(1) アルカリ系

() 無機系硬化材

(2) 中性・酸性系

() 無機系硬化材

 

② 土質と注入形態の関係

(a) 浸透注入

 浸透注入は、土粒子の間隙を埋める水を追い出し、そこに薬液が浸透固化して、土粒子と一体化した固結物を形成する注入形態で、薬液注入工法が最も効果を発揮する注入形態である。

 砂質系地盤では、土粒子の間隙に注入材料が浸透固化し、それが接着材となることで崩壊が起こり難くなり透水性も低下するので、掘削面への湧水を防止できる。

 

(b) 割裂注入

 割裂注入は、注入材が脈状や枝状に走って固化する注入形態である。

 粘性土では、注入された薬液は土粒子の間隙に浸透できずに割裂の形態となるため、脈状に固化した薬液と圧縮された土の複合的効果で強度は増加する。ただし、増加の度合いは砂質土層に比較して顕著ではない。

 

(c) 大間隙充填注入とその後の浸透注入(礫・玉石層への注入)

 礫や玉石層などでは、最初に安価で強度のある懸濁型を使用して粗詰めし、その後礫や砂の間隙に溶液型浸透注入を行う2段階の注入が必要となる。

 

(d) 特殊な場合(埋戻砂)

 埋戻し後の時間経過が少なく十分締固まっていない砂地盤では、効果的な注入を行うためカバーロックなどをしっかり行い、注入速度を遅くするなどの特別な工夫を行う。

 

[土質と注入形態の区分]

土質

注入形態

礫・玉石層

大間隙を充填注入浸透注入

砂質土・砂礫層

浸透注入

粘性土を含む砂質土層

割裂浸透注入

粘性土層

割裂注入

 

③ 選定の目安

対象土地

区分

注入形態

固化状況

砂質土、砂礫土、礫質土

溶液型

浸透注入

土粒子の間隙を埋め、土と一体化

粘性土、礫質土の大きな間隙

懸濁型

割裂注入

土中に割裂脈を形成、大間隙への補充

 

薬液注入工法ー2

(3) 注入工法の選定

① 注入工法の種類

 現在一般に使用されている注入工法のうち主要なものは、二重管ストレーナー工法(複相型)及びダブルパッカー工法である。

 

(a) 二重管ストレーナー工法(複相型)

 二重管ストレーナー工法(複相型)は、ボーリングロッド(削孔パイプ)をそのまま注入管として利用する。

 施工手順は次のとおり。

➊ ボーリングロッドの下から水を送りつつ所定の深度まで削孔する。

➋ 削孔が終了したら、一次注入として、瞬結ゲルタイムの薬液を注入する。

➌ その後、二次注入として緩結ゲルタイムの薬液を注入する。

➍ ➋~➌の作業を注入範囲の下側から2050㎝のステップで順次繰り返し、所定範囲の改良を行う。

引用:日本グラウト協会編『新訂 正しい薬液注入工法 ―この一冊ですべてがわかる―』276頁(日刊建設工業新聞社、4版、2015

 

 二重管ストレーナー工法(複相型)では、瞬結ゲルタイムの薬液を注入することによって所定外への薬液の拡散を防止し、緩結ゲルタイムの薬液を注入することによって土粒子の間隙への薬液の均一な浸透をはかる。この工法の特徴は、地盤条件によって瞬結ゲルタイムと緩結ゲルタイムを使い分けることができる点である。それに対して、短いゲルタイムの薬液のみを注入する方法は、二重管ストレーナー工法(単相型)と呼ばれている。

 

(b) ダブルパッカー工法(二重管ダブルパッカー工法)

 ダブルパッカー工法は、注入管設置と注入作業を分離して行う。

 施工手順は次のとおり。

➊ ケーシングで所定の深度まで削孔する。

➋ ケーシングの中にスリーブ付きの注入外管を建て込む。

➌ ケーシングと外管の間にシール材を充填してケーシングを引き抜く。

➍ シール材の硬化後、ダブルパッカーを装着した注入内管を挿入して、薬液を注入する。

 薬液の注入は、地盤の大きな間隙を埋めるために一次注入としてCB(セメントベントナイト)を注入した後に、二次注入として地盤の間隙に浸透するような溶液型の薬液を注入する。二重管ストレーナー工法と大きく異なるのは、非常に長いゲルタイムの薬液を注入することと、注入速度が非常に遅いことである。施工手順が複雑で注入速度も遅いため、ダブルパッカー工法は二重管ストレーナー工法よりも高い改良効果が見込める反面、工費の面では劣っている。

 

② 選定の目安

 効果と工期、コストが最も適切であるのは二重管ストレーナー工法(複相型)であり、現在では、ほとんどこの方法で施工されている。

 しかし、二重管ストレーナー工法(複相型)ではボーリングロッドをそのまま注入管として利用するのに対して、ダブルパッカー工法ではパーカッションドリルを使用して削孔するため、大深度の削孔では、二重管ストレーナー工法(複相型)よりもダブルパッカー工法の方が削孔精度は高い