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■上水道管の布設ー1
(1) 管路土工事
① 掘削工
上水道管の布設工事は、原則として、地盤を直接掘削する開削工法で施工される。
床付け及び接合部の掘削は布掘り又はつぼ掘りとし、配管及び接合作業が完全にできるよう所定の形状に仕上げる。なお、掘削に当たって、えぐり掘りを行ってはならない。
床付面に岩石、コンクリート塊などの支障物が出た場合は、床付面より10㎝以上取り除き、砂などに置き換える。
② 地盤改良
軟弱地盤や、地下水位が高く地震時に液状化のおそれがある砂質地盤では、必要に応じて地盤改良などを行う必要がある。
地盤改良には、砕石などの透水性の高いもので置換する工法や浅層部をセメントなどで安定処理した上で置き換える工法などがある。
③ 埋戻工
埋戻しは、片埋めにならないように注意しながら、厚さ30㎝以下に敷き均し、現地盤と同程度以上の密度となるように締め固める。
(2) 管の据付けと接合
① 管の取扱い
上水道管には、ダクタイル鋳鉄管、鋼管、ステンレス鋼管、硬質ポリ塩化ビニル管及び水道配水用ポリエチレン管などがある。管の取扱いについては、管の変形等を生じさせないよう慎重に行う。
Point 水道用硬質塩化ビニル管を横積みで保管する場合は、平地に積み上げ、高さ1m以下とし、崩れないように措置する必要がある。
② 管の基礎
管の据付けにあたっては、管に影響を与えないよう床付面を平滑に仕上げる。場合によってはクッションとして砂を敷くこともあるが、原則として特別な基礎は必要としない。しかし、基礎地盤が軟弱で管の不同沈下のおそれのある場合には、梯子胴木など適当な基礎工を施さなければならない。
不同沈下を防止するため梯子胴木を用いる場合は、胴木に直接管体を接触させると応力集中が生じるので、接触面にゴム板などクッション材を設置することが必要である。
[梯子胴木基礎]
引用:松田暢夫ほか『現場技術者のための 上水道工事ポケットブック』329頁(山海堂、1985)
■上水道管の布設ー2
③ 配水管の埋設位置及び深さ
配水管は、維持管理の容易性に配慮し、原則として道路(公道)に布設する。
(a) 配水管の頂部と路面との距離
道路法施行令によって、配水管の本線を道路に埋設する場合は、その頂部と路面との距離は1.2m(工事実施上やむを得ない場合にあっては、0.6m)以下としないことと規定されている
(b) 配水管と他の地下構造物との間隔
配水管を他の地下埋設物と交差又は近接して布設するときは、少なくとも0.3m以上の間隔を保つ。この間隔を保たないと、地震時に管路に大きな応力が発生し破損の原因となるおそれや、災害復旧作業も困難となる。
(c) 地下水位が高い場合
地下水位が高い場合又は高くなることが予想される場合には、管内空虚時に管が浮上しないように最小土被り厚の確保に注意する。
(d) 寒冷地における管の埋設深さ
寒冷地で土地の凍結深度が標準埋設深さよりも深い場合は、それ以下に埋設するが、埋設深度が確保できない場合は断熱マットなどの適当な措置を講じる。
【参考】管の浮上防止のための最小土被り
④ 軟弱地盤などの不安定な地盤に管路を布設する場合
(a) 軟弱地盤に管路を布設する場合
将来、管路の不同沈下を起こすおそれのある軟弱地盤に管路を布設する場合には、地盤状態や管路沈下量について検討し、適切な管種、継手、施工方法を用いる。
軟弱層が浅い地盤に管を布設する場合は、管の重量、管内水重、埋戻し土圧などを考慮して、管底部での土圧増加分などを計算し、沈下量を推定した上、施工する。
軟弱層が深い場合、あるいは重機械が入れないような非常に軟弱な地盤では、薬液注入、サンドドレーン工法などにより地盤改良を行うことが必要である。
軟弱層が深く予想沈下量が大きい地盤に管を布設する場合は、伸縮可とう性が大きく、かつ、離脱防止性能を持った継手を適所に用いることが望ましい。
(b) 液状化のおそれがある地盤に管路を布設する場合
砂質地盤で地下水位が高く、地震時に間げき水圧の急激な上昇による液状化の可能性が高いと判定される場所では、適切な管種・継手を選定するほか必要に応じて地盤改良などを行う。
⑤ 継手
(a) 伸縮継手
伸縮継手は、温度変化による伸縮、地盤の不同沈下、地震による地盤変位等を吸収し、管路に無理な力が作用するのを避ける目的で使用する。
軟弱地盤や水管橋又はバルブ室など構造物の取付け部には、不同沈下に伴う応力集中が生じるので、伸縮可とう性の大きな伸縮継手を使用することが必要である。
(b)ダクタイル鋳鉄管の継手の種類
ダクタイル鋳鉄管の継手は鎖継手、柔継手及び剛継手の3つに分類できる。
イ) 鎖継手
鎖継手は大きな伸縮性と可とう性に加えて離脱防止性能を有する継手である。このため、この継手を使用した管路は大きな地盤の動きに対しても柔軟に順応でき、かつ継手部が抜け出さない構造となっている。地震時にはあたかも地中に埋められた鎖のように挙動することから鎖継手と呼ばれている。
軟弱地盤や液状化のおそれのある地盤では、鎖継手を使用した管路全体が鎖構造となる鋳鉄管を選定することが望ましい。
ロ) 柔継手
柔継手は伸縮性と可とう性はあるが、離脱防止性能を有しない継手である。このため、軟弱地盤など地盤条件が悪く地震時の地盤の動きが大きい場合には継手部が抜け出す可能性がある。
ハ) 剛継手
剛継手は伸縮・屈曲のない継手で、管路を一体化するために使用する離脱防止継手である。
⑥ 管の曲げ配管
管路は、水平、鉛直とも急激な屈曲を避けることを原則とし、ダクタイル鋳鉄管などの継手を屈曲させる場合は、許容曲げ角度(許容の屈曲角度)内で曲げて布設する。
Point ダクタイル鋳鉄管の継手は一般的に可とう性があるが、継手の種類ごとに許容曲げ角度がある。この許容曲げ角度の範囲内であれば、不同沈下などの地盤の動きに無理なく順応できる。
⑦ 管の切断
管の切断方法は管の種類、材質により異なる。
鋼管の切断は、切断線を中心に幅30㎝の範囲の塗覆装をはく離し、切断線を表示して行う。
⑧ 既設管との接続
(a) 試掘調査
既設管との連絡工事箇所(接続工事箇所)では、試掘調査を行い、連絡する既設管の位置、管径、管種など及び他の埋設物の確認を行う。
(b) 断水連絡工法
断水連絡工法とは、既設管を制水弁によって断水し、その間に新設管に連絡したあと、再び通水する工法である。
既設管との連絡工事で栓止りとなっている管の栓の取外し及び防護の取壊しには、空気及び水を抜き、内圧がないことを確認した後に行う。
(c) 不断水連絡工法(不断水工法)
不断水連絡工法は、既設管の断水を行わずに、特殊な器具を用いて分岐管を取り出して新設管と連絡する工法である。バルブの設置にも用いることができる。
既設管に割T字管を取り付けたのち、所定の水圧試験を行って漏水のないことを確認してから、穿孔作業を行う。
Point 不断水連絡工の割T字管は、原則として管軸に水平に取り付けなければならない。
⑨ 水圧試験
管路の布設後は、原則として水圧試験によって管路の水密性、安全性を確認する。
管径800㎜以上の鋳鉄管継手は、原則として監督員立会いのうえ、各継手ごとに内面からテストバンドで水圧試験を行う。