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1鉄道
■鉄道
「鉄道」の分野は、「鉄道構造物」、「軌道の工事・維持管理」、「鉄道(在来線)の営業線路内及び営業線近接工事の保安対策」の3つに分かれる。このうち「鉄道構造物」では、「路盤」からの出題が多い。
■鉄道構造物ー1
(1) 盛土
① 盛土
盛土とは、土又は岩石などの材料を十分に締め固めて構築したもので路盤以外のものをいう。
また、盛土のうち施工基面から3mの深さまでの盛土部分(ただし、路盤部分を除く)を上部盛土といい、上部盛土の下にある盛土部分を下部盛土という。
② 盛土の施工
(a) 盛土の材料
盛土材料は、締固めの施工がしやすく、外力に対して安定を保ち、かつ有害な圧縮沈下が生じないものとする。
現場発生土は、盛土材料としてそのまま使用可能でない場合であっても、安定処理などにより適切な処理を行い、積極的に利用することが望ましい。なお、現場発生土のうち、鉄道盛土にそのままで使用可能な土質区分は、第1種建設発生土及び第2種建設発生土である。第3種建設発生土は、適切な土質改良を行えば使用可能である。
Point 建設発生土の再利用については、国土交通省が「発生土利用基準について」を定めている。詳しくは、「Chapter 1 土木一般」の「1土工」の「盛土」を参照。
(b) 締固め時の仕上がり厚さ
盛土を締め固める際の一層の仕上がり厚さは所定の締固めの程度を満足するための厚さとし、30㎝程度を標準とする。
(c) 締固めの程度
盛土は外力に対して安定を保ち、かつ有害な圧縮沈下が生じないよう、十分に締固めを行う。
鉄道盛土における建設発生土の締固め管理方法は、性能ランクと盛土部位により、締固め密度比、K30値及び空気間隙率により定められている。
【参考】性能ランクと使用できる盛土材料
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』84頁(丸善出版、2013)
【参考】盛土材料の群分類
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』85頁(丸善出版、2013)
【参考】各性能ランクにおける盛土部位の締固め程度と締固め管理方法
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』91頁(丸善出版、2013)
■鉄道構造物ー2
(2) 路盤
路盤とは、軌道を支持する土構造物の表層部分であり、荷重を分散させて路床に伝える機能を持つ。
① 路盤の機能と種類
(a) 路盤の機能
路盤は、列車の安定走行を確保するために軌道を十分強固に支持し、軌道に対して(適当な弾性を与えるとともに)適切な剛性を有し、路床の軟弱化防止、路床への荷重を分散伝達し、排水勾配を設けることにより道床内の水を速やかに排除するなどの機能を有する。
(b) 路盤の種類
路盤には、コンクリート路盤、アスファルト路盤及び砕石路盤などがある。コンクリート路盤は省力化軌道に用いられ、アスファルト路盤は省力化軌道及び重要度の高い線区の有道床軌道に用いられる。砕石路盤は一般的な線区の有道床軌道に用いられる。
イ) 省力化軌道を支持する路盤
省力化軌道とは、軌道保守量の低減を目的としたスラブ軌道やまくらぎ直結軌道などの軌道である。
省力化軌道を支持する路盤には、コンクリート路盤又はアスファルト路盤を用いることを基本とする。これらの路盤の選定にあたっては、線区の特性、軌道構造との適合性、経済性、工期及び施工時期などを勘案する。
ロ) 有道床軌道を支持する路盤
有道床軌道とは、道床バラストによってまくらぎを支持する軌道である。
有道床軌道を支持する路盤には、アスファルト路盤(強化路盤)又は砕石路盤(土路盤)を用いることを基本とする。これらの路盤のいずれを用いるかは、線区の重要度、経済性、保守態勢などを勘案して決定する。
ⅰ) アスファルト路盤(強化路盤)
アスファルト路盤(強化路盤)は、道路、空港などの舗装に既に広く用いられているアスファルト混合物(アスファルトコンクリート)、粒度調整材料などを使用しており、繰返し荷重に対する耐久性に優れている。
ⅱ) 砕石路盤(土路盤)
砕石路盤(土路盤)は、良質な自然土又はクラッシャランなどの単一層で構成する路盤であり、一般にアスファルト路盤(強化路盤)に比べて工事費が安価である。
【参考】路盤の名称
従来の名称 |
新しい名称 |
軌道の種類 |
コンクリート路盤 |
コンクリート路盤 |
省力化軌道 |
アスファルト路盤 |
省力化軌道用アスファルト路盤 |
|
強化路盤 |
有道床軌道用アスファルト路盤 |
有道床軌道 |
土路盤 |
砕石路盤 |
② コンクリート路盤
(a)コンクリート路盤
コンクリート路盤は省力化軌道を支持する路盤として適用される。
イ) コンクリート路盤の構造と役割
コンクリート路盤は、鉄筋コンクリート版と粒度調整砕石層で構成される。
鉄筋コンクリート版の役割は軌道から荷重を下部に伝達するとともに、大きな曲げ剛性により変位を抑制するように平坦な路盤面を確保することである。
粒度調整砕石層の役割は、鉄筋コンクリート版を支持しこれから伝えられる荷重を分散して路床に伝達することである。
コンクリート路盤を用いた構造例は、次のとおり。
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』201頁(丸善出版、2013)
ロ) コンクリート路盤の断面形状及び長さ
ⅰ) コンクリート路盤の標準的な断面形状の構造
コンクリート路盤の標準的な断面形状の構造は、次のとおり。切土及び素地の場合は粒度調整砕石層の下に排水層(150㎜)を設ける。
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』201頁(丸善出版、2013)
Point 路床の排水層は、盛土の場合には設置しないが、切土及び素地の場合には地下水排水のためコンクリート路盤部の粒度調整砕石層の下に排水層を設ける。
ⅱ) コンクリート路盤の設計
コンクリート路盤の設計に当たっては、次の値を標準とする。
|
線区分 |
荷重を支持する路盤幅:B(m) |
標準厚さ(m) |
鉄筋コンクリート版 |
標準軌 狭軌* |
3.20 2.60 |
t1=0.30 t1=0.30 |
粒度調整砕石層 |
標準軌 狭軌* |
― ― |
t2=0.15 t2=0.15 |
* 狭軌の軌間は、1067㎜である。
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』202頁(丸善出版、2013)
Point1 軌道スラブの施工及び列車荷重の分散範囲を考慮して決めた構造上必要な鉄筋コンクリート路盤の幅は、標準機では3.2m、狭軌では2.6mである。
Point2 標準軌用も狭軌用も、鉄筋コンクリート版の厚さは30㎝に、粒度調整砕石層の厚さは15㎝に仕上げる。
ⅲ) 鉄筋コンクリート版の標準断面(標準軌)
列車荷重、温度・乾燥収縮等を考慮して、鉄筋コンクリート版(標準軌)の上側鉄筋にはD16の鉄筋を用いることを基本とする。ただし、盛土の場合には、不同沈下の影響を考慮して、上側鉄筋にD19を用いる。また、ボックスカルバート部では、ボックスカルバート上部の支持ばねが前後に比べて硬くなり、列車荷重による断面力が大きくなるので、ボックスカルバート上部の上側鉄筋にはD22を用いる。
区分 |
上側鉄筋径の種類 |
盛土部 切土・素地部 橋台・トンネル接続部 ボックスカルバート上部 |
D19 D16 D16 D22 |
なお、鉄筋コンクリート版の標準断面(標準軌)は、次の値を標準とする。
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』202頁(丸善出版、2013)
Point 橋梁との取付け部の上側鉄筋にはD16を用いる。
ⅳ) コンクリート路盤の長さ
コンクリート路盤の長さについては、鉄筋コンクリート版の1回当たりの現実的な施工延長と極力ひび割れを抑制するために最大長さ60mを標準とする。