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■防波堤
防波堤は港内の静穏を維持し、荷役の円滑化、船舶の航行・停泊の安全及び港内施設の保全を図るために設けられるものである。
(1) 防波堤の構造様式による分類
防波堤は構造様式により、一般に次のように分類される。
1 |
傾斜堤 |
捨石式傾斜堤 |
捨ブロック式傾斜堤 |
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2 |
直立堤 |
ケーソン式直立堤 |
ブロック式直立堤 |
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セルラーブロック式直立堤 |
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コンクリート単塊式直立堤 |
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3 |
混成堤 |
ケーソン式混成堤 |
ブロック式混成堤 |
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セルラーブロック式混成堤 |
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コンクリート単塊式混成堤 |
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4 |
消波ブロック被覆堤 |
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5 |
その他の形式の防波堤 |
(2) 傾斜堤
傾斜堤は石やコンクリートブロックを台形状に捨て込んだもので、主として斜面での砕波によって波のエネルギーを散逸させる。
傾斜堤は使用材料により、捨石式傾斜堤及び捨ブロック式傾斜堤に分類される。
捨石式の傾斜堤は、捨石の大きさに限度があることから一般に波力の弱いところに用いられるが、やむを得ず波力の強い箇所に用いる場合には法面をブロックで被覆する必要がある。
傾斜堤の長所としては、施工設備が簡単であり、直立堤ほど波の影響を受けないで施工できる。また、工程が単純であり、施工管理が容易である。
(3) 直立堤
直立堤は前面が鉛直である壁体を海底に据えた構造であり、主として波のエネルギーを反射させるものである。
直立堤は堤体によりケーソン式直立堤、ブロック式直立堤などに分類される。
① ケーソン式直立堤
ケーソン式は本体にケーソンを用いたものである。一般に堤体全体が一体となるため波力に対して強く、本体製作をドライワークで行うことができるため施工が確実で海上施工日数を短縮することができる。
ケーソンの製作設備や施工設備に相当な工費を要すると共に、荒天日数の多い場所では海上施工日数に著しい制限を受ける。
② ブロック式直立堤
ブロック式はコンクリートブロックを積み上げて本体としたものである。一般に、施工が確実で容易であり、施工設備も簡単であるなどの長所を有する。しかし、各ブロック間の結合が十分でなく、ケーソン式に比ベ一体性に欠ける。海上作業期間は一般に長くなり、ブロック数の多い場合、広い製作用地を必要とするなどの短所がある。
引用:安達逸雄ほか『最新 港湾工事施工技術』11頁(山海堂、1991)
(4) 混成堤
混成堤は捨石部の上に直立壁を設けたもので、波高に比べ捨石天端が浅いときは傾斜堤の機能に近く、深いときは直立堤の機能に近くなる。
混成堤は、長所として、水深の大きい箇所や比較的軟弱な地盤にも適し、捨石部と直立部の高さの割合を調整して経済的な断面とすることができるが、端緒として、施工法及び施工設備が多様となる。
(5) 消波ブロック被覆堤
消波ブロック被覆堤は、直立堤あるいは混成堤の前面に消波ブロックを設置したもので、消波ブロックで波のエネルギーを散逸させるとともに直立部で波の透過を抑える。
■浚渫工ー1
浚渫工事とは、一般に水面下の土砂を掘って、その土砂を他の場所へ土捨する工事のことをいう。
(1) 浚渫工事のための事前調査
浚渫工事の計画は、気象、海象および地理的、地形的条件を十分把握して行わなければならない。
① 深浅測量
深浅測量では、測量を始める前に必ず測深機械を検定し、毎日の測量の開始・終了時及び作業途中にベルトやペンなどを調整、交換した時刻を記述し、その時刻の測深地域でバーチェックによる測深値のチェックを行う必要がある。
また、深浅測量の測量範囲は、必要区域より法部などを考慮したある程度外側までする必要があり、測線間隔は、測量の目的、所要精度、使用機械、海底の起伏の状態を勘案して、おおむね10~20m程度である。
水深の深いところでは深浅測量は音響測深機による場合が多い。音響測深機による深浅測量は、連続的な記録がとれる利点があり、さらに、海底の状況をよりきめ細かく測深する必要がある場合は、送受波器の素子数を多くして、未測深幅を狭くする。
Point 音響測深機による深浅測量は、測線間隔が小さく、未測深幅が狭いほど測深精度は高くなる。
② 土質調査
浚渫工事の施工方法を検討する場合には、海底土砂の硬さや強さ、その締まり具合や粒の粗さなど、土砂の性質が浚渫工事の工期、工費に大きく影響するため、事前に土質調査を行う必要がある。一般的に、浚渫工事の土質調査としては、粒度分析、比重試験、標準貫入試験でほぼ必要な試料を得ることができる。
Point 浚渫工事の施工方法を検討するための土質調査の内容は、一般に粒度分析、比重試験、標準貫入試験である。
③ 水質調査
水質調査の主な目的は、海水汚濁の原因が、バックグラウンド値か浚渫による濁りかを確認するために実施するもので、事前及び浚渫中の調査が必要である。
Point 水質調査は、事前及び浚渫中に実施する必要がある。原則として浚渫工事完成後の水質調査は行う必要はない。
④ 底質調査
浚渫工事に伴って海底土砂を捨土する場合は、浚渫土砂が「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」に規定する有害な水底土砂であるか否かについて、浚渫に先立ち所定の検定試験を行い有害物質などの濃度の確認を行う必要がある。
⑤ 探査
浚渫作業中に海底下に埋没している機雷や爆弾等が爆発して、浚渫船などに大きな被害を受けないように、機雷などの危険物が残存すると推定される海域においては、浚渫に先立って工事区域の機雷などの探査を行い、浚渫工事の安全を確保しなければならない。
(a) 磁気探査
浚渫に先立って工事区域の機雷等危険物の有無を確認する場合は、まず磁気探査を行う。
(b) 潜水探査
磁気探査によって、一定値以上の磁気反応を示す異常点がある場合は、その位置を求め、次に潜水探査を行う。潜水探査の結果、もし爆発物を発見した場合は、速やかに港長等に報告する。異常物を除却した後、再度磁気探査を行い、爆発物が残存されていないことを確認のうえ、浚渫工事に着手する。
Point1 磁気探査によって異常点がある場合は、次に潜水探査を行う必要がある。潜水探査を省略することはできない。
Point2 潜水探査の結果、爆発物を発見した場合は、速やかに港長等に報告する必要がある。爆発物の撤去後に港長等に報告するのではない。
(c) 経層探査
土厚が4m程度以上の浚渫を実施する場合は、磁気探査の有効探査厚が4m程度であるため、層別に磁気探査及び潜水探査を実施する必要がある。
⑥ 水質汚濁防止対策
水質汚濁防止対策として、浚渫区域が漁場に近い場合には、作業中の濁りによる漁場などへの影響が問題となる場合が多いので、事前に漁場などの利用の実態、浚渫土質、潮流などを調査し、工法を検討して、水質汚濁の防止に努める必要がある。
⑦ 潮流調査
潮流調査は、浚渫による汚濁水が潮流により拡散することが想定される場合や、狭水道における浚渫工事の場合に行う。
⑧ 漂砂調査
漂砂調査は、浚渫工事を行う現地の海底が緩い砂の場合や近くに土砂を流下させる河川がある場合に行う。
(2) 作業船の選定
浚渫工事には、一般に浚渫船を使用する。海底土質、水深などの施工条件を考慮し、適切なものを選ぶ必要がある。浚渫船のうち主なものは、次のとおり。
① ポンプ浚渫船(ポンプ船)
ポンプ浚渫船は、サンドポンプを船上に据え付け、土砂と水を一緒に吸い上げて浚渫をする。
ポンプ浚渫船は、あまり固い地盤には適さないが、大量の浚渫や埋立に適しており、掘削後の水底面の凹凸が比較的大きいため、構造物の築造箇所ではなく、航路や泊地の浚渫に使用される。
② グラブ浚渫船(グラブ船)
グラブ浚渫船は、グラブバケットで土砂をつかんで、浚渫をする。
グラブ浚渫船は、適用される地盤の範囲はきわめて広く、軟泥から岩盤まで対応可能で、浚渫深度の制限も少ない箇所に使用されることが多い。中小規模な浚渫や岸壁など構造物周辺の浚渫に適している。
Point グラブ浚渫船は、大規模な浚渫工事には適さない。
③ ドラグサクション浚渫船
ドラグサクション浚渫船は、自航式のポンプ浚渫船である。
ドラグサクション浚渫船は、浚渫土を船体の泥倉に積載し自航できることから機動性に優れ、主に船舶の往来が頻繁な航路などの維持浚渫に使用されることが多い。
④ バックホゥ浚渫船(バックホウ浚渫船)
バックホゥ浚渫船は、バックホゥと呼ばれるかき込み型(油圧ショベル型)掘削機を台船上に搭載した硬土盤用浚渫船で、比較的規模の小さい浚渫工事に使用されることが多い。