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1海岸

堀川 寿和2022/04/15 11:52

海岸

 「海岸」では、特に「海岸堤防及び護岸」からの出題が多いが、「潜堤・人工リーフ」、「養浜」からもよく出題されている。

海岸堤防及び護岸ー1

(1) 海岸堤防及び護岸

① 海岸堤防及び護岸

 堤防とは、現地盤を盛土又はコンクリート打設などによって増高し、高潮、津波による海水の侵入を防止し、波浪による越波を減少させるとともに、陸域が侵食されるのを防止する施設をいう。

 護岸とは、構造物の天端高が現地盤より低い場合をいう。

 

Point堤防と護岸の構造形状の違いは、堤防が原地盤を嵩上げして建設されるのに対し、護岸は原地盤の嵩上げを伴わない構造物であることである。

 

② 海岸堤防及び護岸の形式

 海岸堤防及び護岸の形式の分類として、傾斜型、緩傾斜型、直立型及び混成型がある。

 のり勾配が11以上のものを傾斜型といい、11未満のものを直立型という。また、傾斜型の中でのり勾配13以上のものを緩傾斜型とよんでいる。混成型とは、捨石マウンドなどの傾斜型構造物の上にケーソンやブロックなどの直立型構造物がのせられたもの、あるいは直立壁に傾斜堤がのせられたものをいう。

 

(2) 海岸堤防及び護岸の設計条件

 堤防および護岸の設計に当たって考慮すべき条件には、次のようなものがある。

 

① 潮位及び波浪

 堤防の天端高および構造は越波量及びうちあげ高から、堤体の安定性は波力などから決定されるので、潮位及び波浪は重要な条件である。

 

② 土質

 堤防築造位置制約を受けることが多く強度の低い地盤に堤防を施工せざるを得ない場合には、必要に応じて押え盛土地盤改良などを考慮する。また、堤体の盛土材料は十分な締固めの可能な材料である必要がある。

 

③ 海底地形及び海浜地形

 海底勾配が急であれば、波は岸側で砕波しかつ砕波波高が大きくなるので、大きな波力、越波が生じやすい。また、砂浜海岸であれば、高潮時などに堤防前面で洗堀が生じやすい。このように海底地形及び海浜地形に対する考慮も重要である。

 

④ 海岸の環境

 堤防・護岸は、海浜地あるいは岩礁などに建設されるため、海域生物のすみかとなっている汀線付近の干潟や砂浜が消失されるといった弊害をできるだけ防止し、生物あるいは周辺の生態系に配慮することが重要である。

 また、海岸堤防は、その存在が自然環境を損なったり、周辺環境と調和しないといった弊害を極力防止するため、法線形状に緩やかな曲線形状を取り入れたり、堤防の使用材料に自然石や木などの利用を図るなどの工夫が必要である。

 

Point 海岸の環境を保全するために、堤防法面に構造物としての形状や素材を活かした処理などの工夫が必要である。

 

⑤ 施工条件

 海上工事となる場合は、波浪、潮汐、潮流の影響を強く受け作業時間が制限され、また、施工による海水の濁りの問題が生じる場合もあるので、現場の施工条件に対する配慮が重要である。

 

海岸堤防及び護岸ー2

(3) 海岸堤防の施工

① 海岸堤防の裏のり勾配

(a) 堤防の裏のり勾配の決定

 堤防の裏のり勾配は、堤体の円形すべりに対する安全性などを考慮して決定する。

 

Point 堤体の裏のり勾配の決定に当たっては、堤体の円形すべりに対する安全性への考慮が必要である。

 

(b) 小段の設置

 堤防の直高が大きい場合には、のり面が長くなるため、小段を配置する。具体的には、堤防の直高が5m以上の場合又は5m未満であっても特に必要な場合には、幅1.5m以上の小段を設ける。

引用:海岸保全施設技術研究会編『海岸保全施設の技術上の基準・同解説』3-31頁(2004

 

② 堤体

(a) 堤体の透水性

 堤体への河川水などの浸透による水面のことを浸潤線という。浸潤線が堤体裏のり面に浸出する時はこの部分に斜面侵食が生じ、堤防決壊を誘発する危険性が生ずる。浸潤線が裏のり面に表れる場合は天端幅を広くするとか、裏のり勾配を緩やかにするなどの措置を行い、さらに裏のり尻には適当な粒度のフィルターを設ける必要がある。

 

Point 堤体の裏のり勾配の決定に当たっては、浸潤線が裏のり面に浸出しないよう考慮する必要がある。

 

(b) 堤体の盛土材料

 堤体の盛土材料は、トラフィカビリティーが確保でき十分な締固めが可能な材料を用いる必要がある。したがって、堤体の盛土材料には、原則として多少粘土を含む砂質又は砂礫質のものを用いる

 

③ 表のり被覆工

(a) 表のり被覆工の目的及び構造

 表のり被覆工は、堤防の主体となる堤体を保護し、また堤体の一部となって高潮、波などの侵入を防止する堤防の主要部分である。堤体と相まって波力などの作用に対抗し、波浪による侵食及び磨耗に耐え、堤体の砂の流出やそれ自体の滑落を防ぎ、強固で安全な構造でなければならない。

 

(b) 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸の表のり被覆工(コンクリート張式)

 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸では、一般にコンクリート張式表のり被覆工が用いられている。

 

) コンクリート張式表のり被覆工の構造

 コンクリート張式表のり被覆工の構造は、裏込め材の上に異形ブロックを並べたものである。

 

) 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸の根入れ長

 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸ののり面勾配13より緩くし、のり尻については先端のブロックが波を反射して洗掘を助長しないようブロックの先端を同一勾配で地盤に突込んで施工する。

 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸のブロックの根入れ深さは、次に示す堤脚部の地形変化に対して堤体の安定性が確保されるよう決定する必要がある。

) 沿岸漂砂の不均衡によって生じる海岸侵食に伴う海浜変形

) 高波浪時の沖向き漂砂による、堤がなくても生じる海浜変形

) 高波浪により、堤脚部で生ずる局所洗掘

Point 沿岸漂砂の均衡が失われたことによって侵食が生じている海岸では、海岸侵食に伴う堤脚部の地盤低下量を考慮して施工する。

引用:建設省河川局監修、日本河川協会編『改訂新版 建設省河川砂防技術基準()同解説・設計編〔Ⅱ〕161頁(技報堂出版、1997

 

) 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸の裏込め

 表のりに設置する裏込工は、現地盤上に栗石・砕石層50㎝以上の厚さとして、材料が容易に移動しないように十分安全となるように施工する。

 緩傾斜堤及び緩傾斜護岸ののり面の長さは通常の傾斜堤よりも長いので、堤脚位置が海中にある場合には裏込めが厚くても汀線付近での吸出しが発生することがある。これを防止するには、層厚を厚くするとともに、上層から下層へ粒径を徐々に小さくて、噛合わせを良くして施工する必要がある。

引用:建設省河川局監修、日本河川協会編『改訂新版 建設省河川砂防技術基準()同解説・設計編〔Ⅱ〕』164頁(技報堂出版、1997

 

引用:建設省河川局監修、日本河川協会編『改訂新版 建設省河川砂防技術基準()同解説・設計編〔Ⅱ〕』163頁(技報堂出版、1997