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■河川土工ー1
河川土工には、築堤工事(盛土)や河道の掘削工事、浚渫工事などがある。
(1) 低水路の掘削の施工
低水路の掘削の施工上の留意点は次のとおり。
① 河道、特に低水路部の掘削では、工事中に流水の流向を著しく乱さない工法により施工しなければならない。 (a) 低水路部の一連区間の掘削では、流水が乱流を起こして部分的に深掘れや堤防に洗掘などの影響が生じないよう、原則として下流から上流へ向かって掘削する。
引用:国土技術研究センター『河川土工マニュアル』219頁(国土技術研究センター、改訂版、2009)
(b) 低水路の掘削幅が横断方向に掘削幅が広い場合は、流向にほぼ平行に数ブロックに分け、外側(流心側)から上流に向かい掘削することが望ましい。
引用:国土技術研究センター『河川土工マニュアル』219頁(国土技術研究センター、改訂版、2009) |
② 掘削土の利用目的によって、掘削方法を十分検討しなければならない。低水路の掘削土を築堤土(盛土)に利用する場合、地下水位や河川水位を低下させるための瀬替えや仮締切り、排水溝を設けての釜場での排水、あるいは掘削土の一時仮置きなどにより含水比の低下をはかる。 ③ 河道内の掘削工事では、掘削深さが河川水位より低い場合や、地下水位が高い場合には、数層に区分して掘削するなど、土質、掘削土の利用目的、水位条件、運搬路などの仮設、工期などを総合的に検討して掘削方法を決める必要がある。 ④ 掘削機械は、出水時に迅速に安全な場所に退避できるように配慮しなければならない。掘削機械は一般に走行速度が遅いため、河川水位が急上昇しても安全に退避できる時間内での退避場所をあらかじめ設けておく必要がある。 |
(2) 盛土の施工
① 盛土材料の選定
盛土に用いる土としては、敷均し締固めが容易で締固めたあとの強さが大きく、圧縮性が少なく、河川水や雨水などの侵食に対して強いとともに、吸水による膨潤性の低いことが望ましい。
築堤土は、粗い粒度から細かい粒度までが適当に配合されたものがよく、土質分類上は粘性土、砂質土、礫質土が適度に含まれていれば締固めも満足する施工ができる。
築堤材料として土質が異なる材料を使用するときは、川表側に透水性の小さいものを川裏側に透水性の大きいものを用いるようにする。
② 基礎地盤の処理
盛土の施工開始にあたっては、基礎地盤と盛土の一体性を確保する目的で地盤の表面を掻き起こし、盛土材料とともに締め固めを行う。原則として次のような処理を行うことが必要である。
(a) 基礎地盤の排水処理
盛土箇所に雨水が溜まっている場合は、周辺に排水路を設け、盛土箇所を乾燥させるようにしなければならない。
なお、基礎地盤表層部の土が乾燥している場合は、堤体盛土に先立って適度な散水を行い、地盤と堤体盛土の密着をよくすることが必要である。
(b) 基礎地盤の不陸処理
基礎地盤に極端な凹凸が有る場合は、凹部や段差付近の締固めが不十分となるので、盛土に先駆けて平坦にかき均しておくことが必要がある。
③ 盛土と締固め
(a) 敷均し
運搬機械で搬入された盛土材料は、締固めのために所定の厚さに敷ならす。
盛土の敷均しは、厚すぎると締固めが不十分となり将来盛土自体の圧縮沈下などが起きやすく、また不同沈下の原因ともなるので高まきとならないようにする。
築堤盛土の敷均しをブルドーザで施工する際は、高まきとならないように注意し、一般的には1層当たりの締固め後の仕上り厚さが30㎝以下となるように敷均しを行う。
盛土材料が高含水比粘性土の場合は、運搬機械によるわだち掘れができやすく、こね返しによって著しい強度低下をきたすので、これを防止するために別途の運搬路を設けたり、接地圧の小さいブルドーザによる盛土箇所までの二次運搬を行うことがある。
(b) 締固め作業の施工上の留意点
締固めの施工に際しては次の点に留意しなければならない。
イ) 盛土の締固め作業は、盛土全体を均等に締め固め、盛土端部や隅部などの締固めが不十分にならないように注意する。 ロ) 盛土の締固め作業中に降雨が予測される場合は、雨水の滞水や浸透などが生じないように盛土表面を平滑にするとともに、盛土施工中の排水は原則として横断方向とする。 ハ) 築堤盛土の締固めは、堤防法線に平行に行うことが望ましく、締固めに際しては、締固め幅が重複して施工されるように常に留意する必要がある。 |
Point1盛土施工中の排水は原則として横断方向とする。縦断方向ではない。
Point2 堤防の締固めは原則として堤防法線に平行に行う。堤防横断方向ではない。
■河川土工ー2
④ のり面及び覆土工
(a) のり面締固め
堤防のり面が急な場合、芝などが活着するまで堤体と表層との間に分離を生じやすく、表層すべりを起こしすいので、堤体と表層が一体となるように締め固めなければならない。
のり面表層部が盛土全体の締固めに比べて不十分であると、豪雨等でのり面崩壊を招くことが多いため、のり面は可能な限り機械を使用して十分締め固めなければならない。
のり面部の締固め方法には、次のようなものがある。
イ) 振動ローラによる締固め
小型の振動ローラを盛土天端部より巻き上げながら締め固める。
ロ) ブルドーザによる締固め(のり勾配が緩いとき)
ブルドーザにより、のり面を丹念に走らせて締め固める。
ハ) 油圧式ショベルによる整形
盛土幅よりも広く余盛りを行い、締固めの不十分な盛土表層部をバックホウなどで掘削し、のり面を整形する。
ニ) ランマなどの小型機械による締固め
小規模なのり面、土羽土の締固めなどは、盛土本体を造成した後に土を補足しながら、ランマなどの小型機械で締め固める。
(b) のり面締固め作業の施工上の留意点
施工中において注意しなければならない事項に、降雨による施工中ののり面浸食がある
築堤盛土の施工中は、法面の一部に雨水が集中して流下すると法面侵食の主要因となるため、法面侵食が生じないように、適当な間隔で仮排水溝を設けて降雨を流下させる。また、堤体の横断方向に3~5%程度の勾配を設けながら施工する。
Point 築堤施工中の排水は原則として横断方向とする。縦断方向ではない。
(4) 堤防拡築の施工
堤防の拡築工事とは、既設堤防に腹付けおよび嵩上げして、さらに堤防断面の増大を行うものである。
① 堤防拡築の種類
堤防拡築には、一般的に次のような種類がある。
引用:国土技術研究センター『河川土工マニュアル』124頁(国土技術研究センター、改訂版、2009)
② 拡築材料の選定
既設堤防の拡幅に用いる堤体材料は、表腹付けには既設堤防より透水性の小さい材料を、裏腹付けには既設堤防より透水性の大きい材料を原則として使用する。
③ 既設堤部分の処理
既設の堤防に腹付けを行う場合は、新旧法面をなじませるため段切りを行い、一般にその大きさは堤防締固め一層仕上り厚の倍の50~60㎝程度とする。また、段切り面の水平部分には横断勾配をつけることで施工中の排水に注意する。
④ 堤防拡築に伴う構造物の施工
堤防拡築工事に伴って樋門などの構造物を施工する際には、次の点に留意しなければならない。
(a) 軟弱な基礎地盤で堤防の拡築工事にともなって新規に構造物を施工する場合は、盛土による拡築部分の不同沈下が生じることが多い。したがって、軟弱地盤の場合には、新設の場合と同様に拡築部にプレロードを行うなどの配慮が必要である。 (b) 堤防拡築に伴って既設構造物に継足しを行う場合は、既設構造物とその周辺の堤体を十分調査し、変状があれば補修や空洞充てんなどを行う。 |