- 施工管理法
- 6.環境保全対策
- 環境保全対策
- Sec.1
■環境保全ー1
「環境保全」からは、例年1問出題されている。最近は、「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」に関する問題が出題されることが多い。
(1) 騒音・振動の防止対策
騒音・振動の防止対策には、発生源での対策、伝搬経路の対策、受音点・受振点での対策がある。
なお、発生源での対策は、比較的小さなコストで大きな効果を上げやすいので、建設工事における騒音、振動対策は、発生源の対策が基本となる。
(2) 建設工事に伴う騒音振動対策技術指針
建設工事に伴う騒音、振動の発生をできる限り防止するために、国土交通省は「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」を定めている。以下、試験対策上重要な部分のみを抜粋する。
① 総論
第4章 対策の基本事項 1.騒音、振動対策の計画、設計、施工にあたっては、施工法、建設機械の騒音、振動の大きさ、発生実態、発生機構等について、十分理解しておかなければならない。 2.騒音、振動対策については、騒音、振動の大きさを下げるほか、発生期間を短縮するなど全体的に影響の小さくなるように検討しなければならない。 3.建設工事の設計にあたっては、工事現場周辺の立地条件を調査し、全体的に騒音、振動を低減するよう次の事項について検討しなければならない。 (1) 低騒音、低振動の施工法の選択 (2) 低騒音型建設機械の選択 (3) 作業時間帯、作業工程の設定 (4) 騒音、振動源となる建設機械の配置 (5) 遮音施設等の設置 4.建設工事の施工にあたっては、設計時に考慮された騒音、振動対策をさらに検討し、確実に実施しなければならない。なお、建設機械の運転についても以下に示す配慮が必要である。 (1) 工事の円滑を図るとともに現場管理等に留意し、不必要な騒音、振動を発生させない。 (2) 建設機械等は、整備不良による騒音、振動が発生しないように点検、整備を十分に行う。 (3) 作業待ち時には、建設機械等のエンジンをできる限り止めるなど騒音、振動を発生させない。 5.建設工事の実施にあたっては、必要に応じ工事の目的、内容等について、事前に地域住民に対して説明を行い、工事の実施に協力を得られるように努めるものとする。 6.騒音、振動対策として施工法、建設機械、作業時間帯を指定する場合には、仕様書に明記しなければならない。 7.騒音、振動対策に要する費用については、適正に積算、計上しなければならない。 8.起業者、施工者は、騒音、振動対策を効果的に実施できるように協力しなければならない。 |
Point1 土工機械の選定では、足回りの構造で騒音振動の発生量が異なるので、機械と地盤との相互作用により騒音振動の発生量が低い機種を選定する必要がある。一般に、履帯式(クローラ式)の建設機械は、車輪式(ホイール式)の建設機械よりも、移動時の騒音振動が大きい。
Point2 建設機械は、一般に形式により騒音振動が異なり、油圧式のものは空気式のものに比べて騒音が小さい傾向がある。
Point3 建設機械は、一般に老朽化するにつれ、機械各部にゆるみや磨耗が生じ、騒音振動の発生量も大きくなるため、常に良好な状態に整備し、無用な摩擦音やガタつき音の発生を防止する。
Point4 工事の作業時間は、できるだけ地域住民の生活に影響の少ない時間帯とする。
Point5 施工にあたっては、工事の着工前に地域住民への説明会を行って、付近の居住者に工事概要を周知し、協力を求めるとともに、付近の居住者の意向を十分に考慮する必要がある。
② 各論
第6章 土工 (掘削、積込み作業) 1.掘削、積込み作業にあたっては、低騒音型建設機械の使用を原則とする。 2.掘削はできる限り衝撃力による施工を避け、無理な負荷をかけないようにし、不必要な高速運転やむだな空ぶかしを避けて、ていねいに運転しなければならない。 3.掘削積込機から直接トラック等に積込む場合、不必要な騒音、振動の発生を避けて、ていねいに行わなければならない。 ホッパーにとりだめして積込む場合も同様とする。 (ブルドーザ作業) 4.ブルドーザを用いて掘削押し土を行う場合、無理な負荷をかけないようにし、後進時の高速走行を避けて、ていねいに運転しなければならない。 (締固め作業) 5.締固め作業にあたっては、低騒音型建設機械の使用を原則とする。 6.振動、衝撃力によって締固めを行う場合、建設機械の機種の選定、作業時間帯の設定等について十分留意しなければならない。 |
Point1 トラクタショベルによる掘削作業では、バケットの落下や地盤との衝突での振動が大きくなる傾向にある。
Point2 建設機械の騒音は、エンジンの回転速度に比例するので、無用なふかし運転は避ける。
Point3 掘削土をバックホウなどでトラックなどに積み込む場合、落下高を低くしてスムーズに行う。
Point4 ブルドーザによる掘削運搬作業では、騒音の発生状況は、後進の速度が速くなるほど大きくなる。
Point5 敷均し機械のアスファルトフィニッシャは、スクリード部の締固め機構においてバイブレータ方式とタンパ方式があり、夜間工事など静かさが要求される場合などでは、タンパ方式より騒音が小さいバイブレータ方式を採用する。
第7章 運搬工 (運搬の計画) 1.運搬の計画にあたっては、交通安全に留意するとともに、運搬に伴って発生する騒音、振動について配慮しなければならない。 (運搬路の選定) 2.運搬路の選定にあたっては、あらかじめ道路及び付近の状況について十分調査し、下記事項に留意しなければならない。なお、事前に道路管理者、公安委員会(警察)等と協議することが望ましい。 (1) 通勤、通学、買物等で特に歩行者が多く歩車道の区別のない道路はできる限り避ける。 (2) 必要に応じ往路、復路を別経路にする。 (3) できる限り舗装道路や幅員の広い道路を選ぶ。 (4) 急な縦断勾配や、急カーブの多い道路は避ける。 (運搬路の維持) 3.運搬路は点検を十分に行い、特に必要がある場合は維持補修を工事計画に組込むなど対策に努めなければならない。 (走行) 4.運搬車の走行速度は、道路及び付近の状況によって必要に応じ制限を加えるように計画、実施するものとする。なお、運搬車の運転は、不必要な急発進、急停止、空ぶかしなどを避けて、ていねいに行わなければならない。 (運搬車) 5.運搬車の選定にあたっては、運搬量、投入台数、走行頻度、走行速度等を十分検討し、できる限り騒音の小さい車両の使用に努めなければならない。 |
Point1 建設工事では、土砂、残土などを多量に運搬する場合、工事現場の内外を問わず、運搬経路での騒音が問題となることがある。
Point2 工事用車両による沿道交通への障害を防止するためには、工事現場周辺の道路における交通量、通学路などの有無、迂回路の状況について事前に十分調査する必要がある。
第12章 舗装工 (アスファルトプラント) 1.アスファルトプラントの設置にあたっては、周辺地域への騒音、振動の影響ができるだけ小さい場所を選び、十分な設置面積を確保するものとする。なお、必要に応じ防音対策を講じるものとする。 2.アスファルトプラント場内で稼働、出入りする関連機械の騒音、振動対策について配慮する必要がある。 (舗装) 3.舗装にあたっては、組合せ機械の作業能力をよく検討し、段取り待ちが少なくなるように配慮しなければならない。 (舗装版とりこわし) 4.舗装版とりこわし作業にあたっては、油圧ジャッキ式舗装版破砕機、低騒音型のバックホウの使用を原則とする。また、コンクリートカッタ、ブレーカ等についても、できる限り低騒音の建設機械の使用に努めるものとする。 5.破砕物等の積込み作業等は、不必要な騒音、振動を避けて、ていねいに行わなければならない。 |
Point 舗装の部分切取に用いられるカッタ作業では、振動ではなくブレードによる切削音が問題となるため、エンジンルーム、カッタ部を全面カバーで覆うなどの騒音対策を行う。
第19章 空気圧縮機・発動発電機等 (空気圧縮機、発動発電機等) 1.可搬式のものは、低騒音型建設機械の使用を原則とする。 2.定置式のものは、騒音、振動対策を講じることを原則とする。 (排水ポンプ) 3.排水ポンプの使用にあたっては、騒音の防止に留意しなければならない。 (設置) 4.空気圧縮機、発動発電機、排水ポンプ等は、工事現場の周辺の環境を考慮して、騒音、振動の影響の少ない箇所に設置しなければならない。 |
■環境保全ー2
(3) その他の環境保全対策
① 建設公害の原因
建設公害の要因別分類では、掘削工、運搬・交通、杭打ち・杭抜き工、排水工の苦情が多い。
② 建設工事に伴う土砂飛散(粉じん)の防止対策
建設工事に伴う土砂飛散(粉じん)の防止対策のうち主なものは次のとおり。
(a) 土砂運搬トラックの過積載を防止し、荷台をシートで覆う (b) 工事現場の出入口にタイヤの洗浄装置を設ける (c) 道路への散水・清掃 (e) 仮囲いの設置 (f) 盛土箇所の風によるじんあい防止については、盛土表面への散水、乳剤散布、種子吹付けなどによる防塵処理を行う。 |
Point1 土砂を運搬する時は、飛散を防止するために荷台のシートかけを行うとともに、作業場から公道に出る際にはタイヤに付着した土の除去などを行う必要がある。
Point2 造成工事などの土工事にともなう土ぼこりの防止には、防止対策として容易な散水養生が採用される。
③ 切土による水の枯渇対策
切土工事にあたっては、井戸枯れなどの枯渇現象が発生しないよう、事前調査を実施して地下水の存在状態を把握するとともに、工事による影響を予測し、事前に対策を講じなければならない。
④ 土壌汚染対策法に基づく「土壌汚染状況調査」及びその結果の報告
土壌汚染対策法では、一定の要件に該当する土地所有者に、土壌の汚染状況の調査と都道府県知事への報告を義務付けている。
この調査及び報告が義務付けられるのは、例えば、有害物質使用特定施設の使用を廃止したときの、当該施設に係る工場等の敷地であった土地の所有者などである。