- 施工管理法
- 4.安全管理
- 安全管理
- Sec.1
1安全管理
■安全管理
「安全管理」からは、例年4問出題されている。「地山の掘削作業における危険の防止」、「コンクリート造の工作物の解体等の作業における危険の防止」及び「足場」に関する問題からの出題が多い。
■安全衛生管理体制
★「法規―労働安全衛生法」の問題〔選択問題〕として出題されることもある。
労働安全衛生法(以下この節においては「安衛法」という。)は、労働災害を防ぎ、事業者の自主的な安全衛生活動を確保するために、一定の安全衛生管理体制を整備することを義務づけている。
なお、この節においては「労働安全衛生法施行令」を「安衛令」といい、「労働安全衛生規則」を「安衛則」という。
(1) 建設業の事業場における安全衛生管理体制
事業者は、建設業においては常時100人以上の労働者を使用する事業場ごとに、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は安衛法の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、所定の業務を統括管理させなければならない(安衛法10条1項、安衛令2条1号、安衛則3条の2)。
② 安全管理者
事業者は、建設業においては常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、安全管理者を選任し、その者に総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない(安衛法11条1項)。
③ 衛生管理者
事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生管理者を選任し、その者に総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない(安衛法12条1項)。
(2) 建設業の請負関係における安全衛生管理体制
① 用語の定義
(a) 元方事業者
「元方事業者」とは、1つの場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている者をいう(安衛法15条1項)。なお、当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者を元方事業者とする。
(b) 特定元方事業者
「特定元方事業者」とは、元方事業者のうち、特定事業を行う者をいう(安衛法15条1項)。
なお、「特定事業」とは、建設業及び造船業をいう(安衛法15条1項、安衛令7条1項)。
Point 元方事業者のうち、建設業を行う者は、特定元方事業者に該当する。
(c) 関係請負人
「関係請負人」とは、元方事業者の請負人をいう(安衛法15条1項)。なお、元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む(同項)。
② 統括安全衛生責任者
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、原則として、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、「特定元方事業者の講ずべき措置」に係る事項〔安衛法30条1項各号〕を統括管理させなければならない(安衛法15条1項本文)。
Point 特定元方事業者は、原則として、統括安全衛生責任者を選任しなければならない。
③ 元方安全衛生管理者
統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業を行うものは、元方安全衛生管理者を選任し、その者に「特定元方事業者の講ずべき措置」に係る事項〔安衛法30条1項各号〕のうち技術的事項を管理させなければならない(安衛法15条の2)。
④ 安全衛生責任者
統括安全衛生責任者を選任しなければならない場合において、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人〔=関係請負人〕で、当該仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、その者に統括安全衛生責任者との連絡その他の所定の事項を行わせなければならない(安衛法16条1項)。
Point 関係請負人は、統括安全衛生責任者との連絡のために、安全衛生責任者を選任しなければならない。
【参考】建設業の請負関係における安全衛生管理体制
(3) 特定元方事業者の講ずべき措置
特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない(安衛法30条1項)。
① 協議組織の設置及び運営を行うこと。 特定元方事業者は、特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置し、会議を定期的に開催しなければならない(安衛則635条1項)。 ② 作業間の連絡及び調整を行うこと。 特定元方事業者は、随時、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び調整を行なわなければならない(安衛則636条)。 ③ 作業場所を巡視すること。 特定元方事業者は、毎作業日に少なくとも1回、作業場所の巡視を行なわなければならない(安衛則637条1項)。 ④ 関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと。 特定元方事業者は、当該教育を行なう場所の提供、当該教育に使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。 ⑤ 建設業を行う特定元方事業者は、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人がこの法律又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。 ⑥ その他、当該労働災害を防止するため必要な事項 |
Point1 協議組織の設置は、特定元方事業者自身が行う。一次下請け、二次下請けなどの関係請負人ごとに設置させるのではない。
Point2 労働者の安全又は衛生のための教育は、関係請負人の自主性に任せるのではなく、特定元方事業者が指導及び援助を行わなければならない。
■保護具の安全基準
(1) 保護帽
保護帽は、危険な作業場所での作業で、頭部を保護するために使用するものである。
① 保護帽の規格
保護帽は、飛来又は落下用、墜落時の保護用、電気絶縁用等、それぞれ規格が定められており、規格に合格した用途に応じたものを選定する必要がある。
Point 保護帽は、規格検定合格ラベルの貼付けを確認し、作業に合った区分のものを使用する。
② 着用方法
保護帽は、頭によくあったものを使用し、着装体のヘッドバンドで頭部に適合するように調節し、事故のとき脱げないようにあごひもは正しく締めて着用する。
③ 使用制限
保護帽は、大きな衝撃を受けた場合は、外観に損傷がなくても使用してはならない。
④ 改造・加工の禁止
保護帽は、改造あるいは加工したり、部品を取り除いてはならない。
⑤ 表示
保護帽には、見やすい箇所に次の事項が表示されていなければならない。
(a) 製造者名 (b) 製造年月 (c) 物体の飛来若しくは落下による危険を防止するためのものである旨又は墜落による危険を防止するためのものである旨 |
Point 保護帽は、見やすい箇所に製造者名、製造年月日等が表示されているものを使用する。
(2) 墜落制止用器具
墜落制止用器具は、高所作業において墜落の危険のおそれがある場合に使用するものであり、安全帯と呼ばれることもある。
墜落制止用器具は、万一の墜落の際の衝撃を軽減させるため、ベルトはできるだけ腰骨の近くにずれないよう確実に装着し、フックは腰よりできるだけ高い位置に掛けるようにする。
(3) 防網(安全ネット)
防網(安全ネット)については、建設工事の場所等において労働者の墜落による危険を防止するため水平に張って使用するネット(以下「ネット」という。)の構造等に関する留意事項について「墜落による危険を防止するためのネットの構造等の安全基準に関する技術上の指針」(昭和51年8月6日技術上の指針公示第8号。以下「ネット指針」という。)が定められている(ネット指針1-1)。
① 材料
ネットの材料は、合成繊維とすること(ネット指針2-2)。
② 網目
網目は、その辺の長さが10cm以下とすること(ネット指針2-3)。
Point 網目の大きさにも規定がある。
③ 保管
ネットは、紫外線、油、有害ガス等のない乾燥した場所に保管すること(ネット指針4-5-2)。
④ 使用制限
(a) 網糸が所定の強度を有しないネット (b) 人体又はこれと同等以上の重さを有する落下物による衝撃を受けたネット (c) 破損した部分が補修されていないネット (d) 強度が明らかでないネット |
Point過去に「人体又はこれと同等以上の重さを有する落下物による衝撃を受けた安全ネット」については、入念に点検をして所定の強度があることを確認したとしても、使用することができない。