- 施工管理法
- 3.工程管理
- 工程管理
- Sec.1
■工程管理の基本
工程管理は、施工計画において品質、原価、安全など工事管理の目的とする要件を総合的に調整し、策定された基本の工程計画をもとにして実施する。
工程管理を実施するに当たっての留意点は、次のとおりである。
① 工程管理では、作業能率を高めるため、常に工程の進捗状況を全作業員に周知徹底する。 ② 工程表は、施工途中において常に工事の進捗状況を把握でき、予定と実績の比較ができるようにしておかなければならない。 ③ 工程管理では、実施工程が計画工程よりも、やや上回るように管理する。 ④ 工程計画と実施工程の間に差が生じた場合は、労務・機械・資材及び作業日数など、あらゆる方面から検討してその原因を追究し、また原因がわかったときは、速やかにその原因を除去して改善する。 |
【参考】工程管理の手順、工程計画の作成手順
■各種工程表
工程表は、工事の施工順序と所要の日数などを図表化したものである。
(1) 工程表の種類
① 横線式工程表
横線式工程表には、バーチャート工程表、ガントチャート工程表などがある。
(a) バーチャート工程表
バーチャート工程表は、縦軸に作業名〔工事を構成する部分工事〕をとり、横軸に工期(日数)をとって、その作業に必要な日数を棒線で表した図表である。作成が簡単で各工事の工期がわかりやすいので、総合工程表として一般に使用される。
作業の工程が左から右に移行しているので、作業全体の流れや作業間の関連がおおよそ把握できるが、工期に影響する作業がどれであるかはつかみにくい。
(b) ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、縦軸に作業名〔工事を構成する部分工事〕をとり、横軸に作業完了時が100%となるように進捗度をとって、各作業の出来高比率を棒線であらわした図表である。
各作業の進捗状況が一目でわかるようになっている。しかし、作業の手順、各作業に必要な日数及び工期に影響する作業がどれであるかはわからない。
Point ガントチャート工程表に日数は示されていない。したがって、実績日数はわからない。
② グラフ式工程表
グラフ式工程表は、縦軸に各作業の出来高比率(%)をとり、横軸に工期(日数)をとって、各作業の工程を斜線で表した図表で、予定と実績との差を直視的に比較するのに便利である。
どの作業が未着工か、施工中か、完了したかが一目瞭然である。
引用:『土木施工管理技術テキスト 施工管理・法規編(改訂第2版)』58頁(地域開発研究所、2020)
③ 曲線式工程表
(a) 出来高累計曲線
曲線式工程表は、縦軸に出来高累計(%)をとり、横軸に工期(日数)をとって、工事全体の出来高(実績)比率の累計を曲線で表した図表である。この曲線は出来高累計曲線と呼ばれる。
曲線式工程表は、作業の進行の度合はよくわかるが、作業の手順や、作業に必要な日数、工期に影響する作業はわからない。ただし、作業に必要な日数については、バーチャートを併用すると判明する。
Point 曲線式工程表は、1つの作業の遅れが、工期全体に与える影響を把握することはできない。
引用:『土木施工管理技術テキスト 施工管理・法規編(改訂第2版)』59頁(地域開発研究所、2020)
(b) 工程管理曲線(バナナ曲線)
出来高累計曲線は、一般的にS字型となる。これは、一般に、工事の初期には仮設、段取りがあり、また終期には仕上げや後片付けなどがあることから、毎日の出来高は工事の初期から中期に向かって増加し、中期から周期に向かって減少していくためである。
出来高累計曲線には、予定工程曲線と実績工程曲線がある。作業の開始に先立って予定工程曲線を作成し、作業の進捗に伴ってこれに実施工程曲線を記入し、予定工程曲線と実績工程曲線を比較することにより、工程を管理する。
出来高累計曲線は、工程管理曲線によって管理する。工程管理曲線は、縦軸に出来高比率をとり、横軸に時間経過比率をとって、上方許容限界(曲線)と下方許容限界(曲線)を設ける。これは、過去の工事実績をもとに求められた出来高工程の正常変域を表すものである。この2つの曲線がバナナの形をしていることから、バナナ曲線と呼ばれる。
(c) 工程管理曲線(バナナ曲線)による工程管理の方法
工程管理曲線(バナナ曲線)による工程管理では、出来高累計曲線がバナナ曲線の間にあることが望ましい。
工程管理曲線(バナナ曲線)の見方は、次のとおりである。
イ) 実施工程曲線が下方許容限界を下回ったときは、工程が遅れている[図A点]。 ロ) 実施工程曲線が上方許容限界を下回り、下方限界を超えているときは、許容範囲内である[図B点]。 ハ) 実施工程曲線が上方許容限界を超えたときは、工程が進みすぎている。[図D点] |
④ ネットワーク式工程表
ネットワーク式工程表は、ダム工事など大型で複雑な工事で精度の高い工程計画、管理を行うために用いられることが多い。作業の流れや作業相互の関連を丸(〇)と矢線(→)の結びつきで系統だてて表現しており、作業の手順、作業に必要な日数、作業の進行の度合い、工期に影響する作業がわかる。
ネットワーク式工程表は、全体工事と部分工事が明確に表現でき、各工事間の調整が円滑にできる。
(2) 各種工程表とその特徴
各種工程表の特徴を比較すると、次のとおり。
事項 工程表 |
作業の手順 |
各作業に必要な 日数 |
作業の進行の 度合い |
工期に影響する 作業 |
バーチャート |
漠然 |
判明 |
漠然 |
不明 |
ガントチャート |
不明 |
不明 |
判明 |
不明 |
グラフ式 |
不明 |
判明 |
判明 |
不明 |
曲線式 |
不明 |
不明 (*) |
判明 |
不明 |
ネットワーク式 |
判明 |
判明 |
判明 |
判明 |
* バーチャートを併用すると判明
Point 作業相互の関連や1つの作業の遅れが工期全体に与える影響を明確に把握することができるのは、ネットワーク式工程表のみである。