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1契約・設計

堀川 寿和2022/03/30 11:26

契約・設計

 「契約・設計」からは、例年2問出題されている。内訳は、「契約」から1問が、「設計」から1問が出題される。

契約(公共工事標準請負契約約款)ー1

 建設業法は、中央建設業審議会が当事者間の具体的な権利義務の内容を定める標準請負契約約款を作成し、その実施を当事者に勧告することとしている(建設業法342項)。これに基づき、中央建設業審議会は、公共工事用として、「公共工事標準請負契約約款」(以下「約款」という。)を作成し、実施を勧告している。以下、試験対策上重要な条文のみを抜粋する。

 

(1) 総則

(総則)

第一条 発注者及び受注者は、この約款(契約書を含む。以下同じ。)に基づき、設計図書別冊の図面仕様書現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この約款及び設計図書を内容とする工事の請負契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。

2 受注者は、契約書記載の工事を契約書記載の工期内に完成し、工事目的物を発注者に引き渡すものとし、発注者は、その請負代金を支払うものとする。

3 仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等」という。)については、この約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める

4 受注者は、この契約の履行に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

5 この約款に定める催告、請求通知、報告、申出、承諾及び解除は、書面により行わなければならない

6~12(省略)

 

Point1 設計図書の「図面」は通常「設計図面」を指し、「仕様書」には「共通仕様書」と「特記仕様書がある。なお、「契約書」や「実行予算書」は「設計図書」に該当しない

Point2 「設計図書に示された施工材料の入手方法」が設計図書に特別に明示されていない場合は、受注者がその責任において定めればよい

 

(2) 請負代金内訳書及び工程表

(請負代金内訳書及び工程表)

第三条(A) 受注者は、設計図書に基づいて請負代金内訳書(以下「内訳書」という。)及び工程表を作成し、発注者に提出し、その承認を受けなければならない。

2 内訳書には、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとする。

3 内訳書及び工程表は、この約款の他の条項において定める場合を除き、発注者及び受注者を拘束するものではない。

(A)は、契約の内容に不確定要素の多い契約等に使用する。

 

第三条(B) 受注者は、この契約締結後〇日以内に設計図書に基づいて、請負代金内訳書(以下「内訳書」という。)及び工程表を作成し、発注者に提出しなければならない。

2 内訳書には、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に係る法定福利費を明示するものとする。

3 内訳書及び工程表は、発注者及び受注者を拘束するものではない。

 

(3) 一括委任又は一括下請負の禁止

(一括委任又は一括下請負の禁止)

第六条 受注者は工事の全部若しくはその主たる部分又は他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して第三者に委任し、又は請け負わせてはならない

 

(4) 現場代理人及び主任技術者等     ★「法規―建設業法」の問題〔選択問題〕として出題されることもある。

(現場代理人及び主任技術者等)

第十条 受注者は、次の各号に掲げる者を定めて工事現場に設置し、設計図書に定めるところにより、その氏名その他必要な事項を発注者に通知しなければならない。これらの者を変更したときも同様とする。

一 現場代理人

二 (A)[ ]主任技術者

  (B)[ ]監理技術者

  (C)監理技術者補佐(建設業法第二十六条第三項ただし書に規定する者をいう。以下同じ。)

三 専門技術者(建設業法第二十六条の二に規定する技術者をいう。以下同じ。)

 (B)は、建設業法第二十六条第二項の規定に該当する場合に、(A)は、それ以外の場合に使用する。(C)は、(B)を使用する場合において、建設業法第二十六条第三項ただし書の規定を使用し監理技術者が兼務する場合に使用する。

  [ ]の部分には、同法第二十六条第三項本文の工事の場合に「専任の」の字句を記入する。

2 現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、第十二条第一項の請求の受理、同条第三項の決定及び通知並びにこの契約の解除に係る権限を除き、この契約に基づく受注者の一切の権限を行使することができる

3 発注者は、前項の規定にかかわらず、現場代理人の工事現場における運営、取締り及び権限の行使に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保されると認めた場合には、現場代理人について工事現場における常駐を要しないこととすることができる

4 受注者は、第二項の規定にかかわらず、自己の有する権限のうち現場代理人に委任せず自ら行使しようとするものがあるときは、あらかじめ、当該権限の内容を発注者に通知しなければならない。

5 現場代理人監理技術者等(監理技術者、監理技術者補佐又は主任技術者をいう。以下同じ。)及び専門技術者は、これを兼ねることができる

 

Point1 現場代理人とは、契約を取り交わした会社の代理として、任務を代行する責任者をいう。

Point2 現場代理人は、いかなる場合においても工事現場に常駐しなければならないわけではない。

Point3 現場代理人主任技術者及び専門技術者は、これを兼ねても工事の施工上支障はないので、兼任することができる

 

(5) 工事材料の品質及び検査等

(工事材料の品質及び検査等)

第十三条 工事材料の品質については、設計図書に定めるところによる。設計図書にその品質が明示されていない場合にあっては、中等の品質を有するものとする

2 受注者は設計図書において監督員の検査(確認を含む。以下この条において同じ。)を受けて使用すべきものと指定された工事材料については、当該検査に合格したものを使用しなければならない。この場合において、当該検査に直接要する費用は、受注者の負担とする

3 監督員は、受注者から前項の検査を請求されたときは、請求を受けた日から〇日以内に応じなければならない。

4 受注者は工事現場内に搬入した工事材料監督員の承諾を受けないで工事現場外に搬出してはならない

5 受注者は、前項の規定にかかわらず、第二項の検査の結果不合格と決定された工事材料については、当該決定を受けた日から〇日以内に工事現場外に搬出しなければならない。

 

(6) 支給材料及び貸与品

(支給材料及び貸与品)

第十五条 発注者が受注者に支給する工事材料(以下「支給材料」という。)及び貸与する建設機械器具(以下「貸与品」という。)の品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所及び引渡時期は、設計図書に定めるところによる。

2~7(省略)

8 受注者は、支給材料及び貸与品を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。

9 受注者は、設計図書に定めるところにより、工事の完成、設計図書の変更等によって不用となった支給材料又は貸与品発注者に返還しなければならない

10 受注者は、故意又は過失により支給材料又は貸与品が滅失若しくはき損し、又はその返還が不可能となったときは、発注者の指定した期間内に代品を納め、若しくは原状に復して返還し、又は返還に代えて損害を賠償しなければならない。

11 受注者は、支給材料又は貸与品の使用方法が設計図書に明示されていないときは、監督員の指示に従わなければならない。

 

(7) 工事用地の確保等

(工事用地の確保等)

第十六条 発注者は工事用地その他設計図書において定められた工事の施工上必要な用地(以下「工事用地等」という。)を受注者が工事の施工上必要とする日(設計図書に特別の定めがあるときは、その定められた日)までに確保しなければならない

2~5(省略)

 

契約(公共工事標準請負契約約款)ー2

(8) 設計図書不適合の場合の改造義務及び破壊検査等

(設計図書不適合の場合の改造義務及び破壊検査等)

第十七条 受注者は工事の施工部分が設計図書に適合しない場合において、監督員がその改造を請求したときは、当該請求に従わなければならない。この場合において、当該不適合が監督員の指示によるときその他発注者の責めに帰すべき事由によるときは、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

2 監督員は受注者が第十三条第二項又は第十四条第一項から第三項までの規定に違反した場合において、必要があると認められるときは、工事の施工部分を破壊して検査することができる

3 前項に規定するほか、監督員は工事の施工部分が設計図書に適合しないと認められる相当の理由がある場合において、必要があると認められるときは、当該相当の理由を受注者に通知して、工事の施工部分を最小限度破壊して検査することができる

4 前二項の場合において、検査及び復旧に直接要する費用は受注者の負担とする。

 

Point 監督員は、いかなる場合においても、工事の施工部分を破壊して検査することができるわけではない。

 

(9) 条件変更等

(条件変更等)

第十八条 受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、その確認を請求しなければならない

一 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。

二 設計図書に誤謬又は脱漏があること。

三 設計図書の表示が明確でないこと。

四 工事現場の形状地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。

五 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。

2 監督員は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、受注者の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。ただし、受注者が立会いに応じない場合には、受注者の立会いを得ずに行うことができる。

3 発注者は、受注者の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後〇日以内に、その結果を受注者通知しなければならない。ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ受注者の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。

4~5(省略)

 

Point1 「設計図書に示された施工材料の入手方法」が設計図書に特別に明示されていない場合は、受注者がその責任において定めればよい。したがって、このような場合は、受注者が監督員に通知し、その確認を請求する必要はない

Point2 1項に列挙されている事項以外は、監督員への通知及び確認の請求は不要である。

Point3 工事の施工にあたり受注者が監督員に通知し、その確認を請求する場合は、これを書面で行う必要がある(約款15項)。口頭で行うことはできない。

 

(10) 設計図書の変更

(設計図書の変更)

第十九条 発注者必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。この場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

 

(11) 工事の中止

(工事の中止)

第二十条 工事用地等の確保ができない等のため又は暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)であって受注者の責めに帰すことができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められるときは、発注者、工事の中止内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させなければならない

2 発注者は、前項の規定によるほか、必要があると認めるときは、工事の中止内容を受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させることができる。

3 発注者は、前二項の規定により工事の施工を一時中止させた場合において、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の施工の一時中止に伴う増加費用を必要とし若しくは受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

 

(12) 発注者の請求による工期の短縮等

(発注者の請求による工期の短縮等)

第二十三条 発注者特別の理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を受注者に請求することができる

2 発注者は、前項の場合において、必要があると認められるときは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

 

(13) 工期の変更方法

(工期の変更方法)

第二十四条 工期の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。

2(省略)

 

(14) 請負代金額の変更方法等

(請負代金額の変更方法等)

第二十五条(A) 請負代金額の変更については、数量の増減が内訳書記載の数量の百分の〇を超える場合、施工条件が異なる場合、内訳書に記載のない項目が生じた場合若しくは内訳書によることが不適当な場合で特別な理由がないとき又は内訳書が未だ承認を受けていない場合にあっては変更時の価格を基礎として発注者と受注者とが協議して定め、その他の場合にあっては内訳書記載の単価を基礎として定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する

 (A)は、第三条(A)を使用する場合に使用する。

  「百分の〇」の〇の部分には、たとえば、二十と記入する。「〇日」の〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。

 

第二十五条(B) 請負代金額の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する

 (B)は、第三条(B)を使用する場合に使用する。〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入する。

2 前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知するものとする。ただし、請負代金額の変更事由が生じた日から〇日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。

 〇の部分には、工期を勘案してできる限り早急に通知を行うよう留意して数字を記入する。

3 この約款の規定により、受注者が増加費用を必要とした場合又は損害を受けた場合に発注者が負担する必要な費用の額については、発注者と受注者とが協議して定める。

 

Point 請負代金額の変更については、発注者と受注者の協議を行わずに、発注者が決定し受注者に通知することはできない。

 

(15) 検査及び引渡し

(検査及び引渡し)

第三十二条 受注者は、工事を完成したときは、その旨を発注者に通知しなければならない。

2 発注者は、前項の規定による通知を受けたときは、通知を受けた日から十四日以内に受注者の立会いの上、設計図書に定めるところにより、工事の完成を確認するための検査を完了し、当該検査の結果を受注者に通知しなければならない。この場合において、発注者は、必要があると認められるときは、その理由を受注者に通知して、工事目的物を最小限度破壊して検査することができる

3 前項の場合において、検査又は復旧に直接要する費用は、受注者の負担とする

4 発注者は、第二項の検査によって工事の完成を確認した後、受注者が工事目的物の引渡しを申し出たときは、直ちに当該工事目的物の引渡しを受けなければならない。

5 発注者は、受注者が前項の申出を行わないときは、当該工事目的物の引渡しを請負代金の支払いの完了と同時に行うことを請求することができる。この場合においては、受注者は、当該請求に直ちに応じなければならない。

6 受注者は、工事が第二項の検査に合格しないときは、直ちに修補して発注者の検査を受けなければならない。この場合においては、修補の完了を工事の完成とみなして前各項の規定を適用する。