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■鉄道の軌道
(1) 鉄道の軌道に関する用語
線路 |
列車又は車両を走らせるための通路であって、レールや道床などの軌道とこれを支える基礎の路盤 |
軌道 |
施工基面上の道床(スラブを含む)、軌きょう〔レールとまくらぎをはしご状に組み立てたもの〕及びこれに直接付帯する施設。 |
軌間 |
左右レール頭部間の最短距離 |
路盤 |
軌道を支えるための構造物。使用する材料によりコンクリート路盤、アスファルト路盤、砕石路盤がある。 |
施工基面 |
路盤の高さの基準面。 |
カント |
車両が曲線を通過するときに遠心力により外方に転倒することを防止するために外側のレールを高くすること。 |
カント量 |
その高くする量。 |
スラック |
曲線部において車輪〔列車〕の通過を円滑にするため軌間を拡大すること。また、拡大する量。 |
緩和曲線 |
鉄道車両の走行を円滑にするために直線と円曲線、又は2つの曲線の間に設けられる特殊な線形のこと。 |
バラスト軌道 |
道床バラスト(砕石など)を用いた軌道。道床バラスト(砕石など)によってまくらぎを支持する軌道であり、有道床軌道とも呼ばれる。 |
スラブ軌道 |
コンクリートのスラブを用いた軌道。軌道の保守作業を軽減するため開発された省力化軌道で、プレキャストのコンクリート版を用いた軌道である。 |
レール |
車輪を直接支持、誘導する部材。 |
定尺レール |
標準長さ〔長さ25m〕のレール。 |
ロングレール |
長さ200m以上のレール。軌道の欠点である継目をなくすために、レールを溶接でつないでいる。 |
バラスト |
まくらぎと路盤の間に用いられる砂利、砕石などの粒状体のこと |
まくらぎ |
軌間を一定に保持し、レールから伝達される列車荷重を広く道床以下に分散させる役割を担うもの。 |
道床 |
レール又はまくらぎを支持し、荷重を路盤に分布する軌道の部分。バラスト、コンクリートなどを用いたものがある。 |
Point 有道床軌道とは、バラスト軌道のことである。
(2) 道床
① 道床の役割
道床とは、鉄道の軌道の路盤とまくらぎの間の層をいう。バラスト軌道では、道床に道床バラストを用いているため、バラスト道床ともいう。道床の役割は、まくらぎから受ける圧力を均等に広く路盤に伝えることや、排水を良好にすることである。
② 道床バラスト〔砕石〕の特徴
道床バラストには、砕石が用いられる。その理由は、次のとおりである。
(a) 荷重の分布効果に優れている。 (b) 列車荷重や振動に対して崩れにくい。 (c) まくらぎの移動を抑える抵抗力が大きい。 |
バラスト道床は、安価で施工・保守が容易であるが、列車通過による軌道変位が生じやすいため、定期的な軌道の修正・修復が必要である。
Point 道床バラストの使用は、保守の省力化にはつながらない。
③ 道床バラスト〔砕石〕の品質
道床バラストとして用いる砕石は、次の品質を満たすものを選定し、施工にあたっては、入念な締固めが必要である。
(a) 強固で耐摩耗性に優れていること (b) せん断抵抗角が大きいこと (c) 単位容積質量が大きいこと (d) 吸水率が小さいこと (e) 適当な粒径と粒度を持つこと |
なお、道床バラストを貯蔵する場合は、大小粒の分離ならびに異物が混入しないようにしなければならない。
(3) 路盤
① 路盤の役割
路盤とは、道床を直接支持する部分をいい、次のような役割を担うものである。
(a) 軌道を十分強固に支持する。 (b) 軌道に対して適当な弾性を与える。 (c) 路床への荷重の分散伝達をする。 (d) 3%程度の排水勾配を設け道床内の水を速やかに排除する。 |
Point まくらぎを支持するの、路盤の役割ではなく道床の役割である。
② 砕石路盤
砕石路盤は、軌道を安全に支持し、路床へ荷重を分散伝達し、有害な沈下や変形を生じないなどの機能を有する必要がある。
砕石路盤は、噴泥が生じにくい材料の単層の構造とし、圧縮性が小さい材料を使用する。
(a) 砕石路盤の材料
路盤材料は、列車荷重を支えるのに十分な強度が必要であることを考慮して、クラッシャランなどの砕石やクラッシャラン鉄鋼スラグを用いる。砕石路盤の標準的な構造は、次のとおり。
引用:国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編『平成19年1月 鉄道構造物等設計標準・同解説―土構造物〔平成25年改編〕』222頁(丸善出版、2013)
(b) 砕石路盤の施工
砕石路盤の施工は、材料の均質性や気象条件などを考慮して、所定の仕上り厚さ、締固めの程度が得られるようにする。
(c) 砕石路盤の施工管理
砕石路盤の施工管理においては、路盤の層厚、平坦性、締固めの程度などが確保できるよう留意する。
(4) 路床
路床は、一般に列車荷重の影響が大きい施工基面から3mまでのうち、路盤を除いた範囲をいう。
路床は、路盤の荷重が伝わる部分であり、切取地盤の路床では路盤下に排水層を設ける必要がある。また、路床は、地下水及び路盤からの浸透水の排水をはかるために、路床の表面には排水工設置位置へ向かって3%程度の排水勾配を設け、平滑に仕上げる。
■鉄道(在来線)の営業線路内及び営業線近接工事の保安対策
(1) 車両限界、建築限界
① 車両限界
車両限界とは、車両が超えてはならない空間を示すものであり、車両が直線及び曲線の軌道上を停止しているとき、車両のどの部分も超えてはならない左右・上下の限界をいう。
② 建築限界
建築限界とは、建造物等が入ってはならない空間を示すものであり、建造物の構築を制限した軌道上の限界をいう。曲線における建築限界は、車両の偏いに応じて拡大しなければならない。
Point 建築限界は、車両限界の外側に最小限必要な余裕空間を確保したものである。
(2) 有資格者の配置等
① 工事管理者
工事管理者は、「工事管理者資格認定証」を有する者でなければならない。
工事管理者は、工事現場ごとに専任の者を常時配置しなければならず、工事の内容及び施工方法などにより必要に応じて複数配置する必要がある。
② 列車見張員
(a) 列車見張員の設置
列車見張員及び特殊列車見張員は、工事現場ごとに専任の者を配置しなければならない。また、1名の列車見張員では見通し距離を確保できない場合は、見通し距離を確保できる位置に中継列車見張員を増員する。
列車見張員は、信号炎管・合図灯・呼笛・時計・時刻表・緊急連絡表を携帯しなければならない。
(b) 列車接近の合図
列車見張員は、列車などが所定の位置に接近したときは、あらかじめ定められた方法により、工事管理者及び作業員などに対し列車接近の合図をしなければならない。列車接近合図を受けた工事管理者等は、作業員を退避させ、退避完了したら列車見張員に退避完了の合図を送らなければならない。
Point 列車接近の合図を受けた場合は、作業を継続することができない。列車見張り員による監視を強化しても同様である。
(c) 複線以上の路線での積おろし
複線以上の路線での積おろしの場合は、列車見張員を配置し建築限界をおかさないように材料を置かなければならい。
③ 軌道工事管理者
軌道工事管理者は、工事現場ごとに専任の者を常時配置しなければならない。
④ 軌道作業責任者
軌道作業責任者は、作業集団ごとに専任の者を常時配置しなければならない。
⑤ 線閉責任者
(a) 線閉責任者の設置
線閉責任者は線路閉鎖工事を施工する場合など一定の場合に配置するものである。したがって、常時配置する必要はない。
(b) 線路閉鎖工事が作業時間帯に終了できない場合
線閉責任者は、作業時間帯設定区間内の線路閉鎖工事が作業時間帯に終了できないと判断した場合は施設指令員にその旨を連絡し、施設指令員の指示を受ける。
⑥ 停電責任者
停電責任者は、停電責任者は、必要な場合に配置するものであり、工事現場ごとに専任の者を配置する必要はない。
(3) 工事の施工
① 列車通過時の一時施工中止
営業線に近接した重機械〔建設用大型機械〕による作業は、列車の近接から通過の完了まで作業を一時中止しなければならない。
Point 列車通過時は一時施工を中止しなければならない。例外はないので、安全に十分注意を払いながらであっても作業をすることはできない。
② 緊急時の対応
工事現場において事故が発生した場合又は、発生するおそれがある場合は、直ちに列車防護の手配をとるとともに速やかに関係箇所に連絡し、その指示を受けること。
③ 軌道回路の短絡防止
工事場所が信号区間のときは、バール・スパナ・スチールテープなどの金属による短絡(ショート)を防止しなければならない。短絡させると、列車が在線していると誤認され、鉄道の運行を阻害することとなるからである。
④ その他の保安対策
(a) 工事用自動車を使用する場合は、工事用自動車運転資格証明書を携行すること。 (b) 重機械の運転者は、重機械安全運転の講習会修了証の写しを添えて、監督員などの承認を得る。 (c) 重機械の使用を変更する場合は、必ず監督員などの承諾を受けて実施すること。 (d) ダンプ荷台やクレーンブームは、これを下げたことを確認してから走行すること。 (e) 営業線での安全確保のため、所要の防護柵を設け定期的に点検する。 |