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■海岸堤防
(1) 海岸堤防の形式
海岸堤防とは、現地盤を盛土又はコンクリート打設などによって増高し、高潮、津波による海水の侵入を防止し、波浪による越波を減少させるとともに、陸域が侵食されるのを防止する施設をいう。海岸堤防の形式の分類として、傾斜型、緩傾斜型、直立型及び混成型がある。
① 傾斜型
のり勾配が1:1以上のものを傾斜型という。比較的軟弱な地盤で、堤体土砂が容易に得られる場合に適している。
② 緩傾斜型
傾斜型の中でのり勾配1:3以上のものを緩傾斜型とよんでいる。堤防用地が広く得られる場合や、海水浴等に利用する場合に適している。
③ 直立型
のり勾配が1:1未満のものを直立型という。比較的堅固な地盤で、堤防用地が容易に得られない場合に適している。
④ 混成型
混成型とは、捨石マウンドなどの傾斜型構造物の上にケーソンやブロックなどの直立型構造物がのせられたもの、あるいは直立壁に傾斜堤がのせられたものをいう。水深が割合に深く、比較的軟弱な基礎地盤に適している。
(2) 傾斜型海岸堤防の構造
下図は、傾斜型海岸堤防の構造を示したものである。傾斜型海岸堤防の各構造の名称は次のとおりである。
引用:海岸保全施設技術研究会編『海岸保全施設の技術上の基準・同解説』3-19頁(2004)
1 |
表法被覆工 |
表法(のり)被覆工は、堤防の主体となる堤体を保護し、また堤体の一部となって高潮、波などの侵入を防止する堤防の主要部分である。堤体と相まって波力などの作用に対抗し、波浪による侵食及び磨耗に耐え、堤体の砂の流出やそれ自体の滑落を防ぎ、強固で安全な構造でなければならない。 |
2 |
天端被覆工 |
天端被覆工及び裏法(のり)被覆工は、越波した海水により堤体土砂が流失し、堤体の破壊が起こらないように、天端及び裏法(のり)をコンクリート等で被覆するものである。 |
3 |
裏法被覆工 |
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4 |
基礎工 |
基礎工は堤体の上部構造物(直立堤あるいは傾斜堤の場合は、特に表法被覆工)を安全に支えるために設けられる。上部構造物の滑動および沈下に耐えるとともに、特に波力による一時的な法先洗掘に耐えるよう十分根入れする必要がある。 |
5 |
止水工 |
パイピング又は膨れ上がりによる基礎の破壊を防ぐための止水壁である。 |
6 |
根固工 |
根固工は、堤体(表法被覆工又は基礎工)の前面に設けられるもので、波浪による堤体前面の洗掘を防止して表法被覆工又は基礎工を防護するものである。 |
7 |
消波工 |
消波工は、波の打上げ高、越波量及び強大な波力を低減する目的で堤防の前面に設けられる。 |
8 |
波返し工 |
波返工は、波やしぶきが堤内側に入りこむのを防ぐことを主目的として、堤防の表法被覆工の延長として堤防の天端上に突出した構造物をいう。 |
9 |
根留工 |
根留工は、裏法の移動、沈下などを防ぎ、かつ法尻を保護する目的で設けられる。 |
10 |
排水工 |
排水工は、堤防天端又は裏法(のり)その他堤内地へ越波した海水を排水するために設けられる。 |
■異形コンクリートブロックによる消波工
(1) 消波工の目的及び構造
消波工は、波の打上げ高さを小さくすることや、波による圧力を減らすために堤防の前面に設けられる。
消波工には、一般に異形コンクリートブロックが用いられる。異形コンクリートブロックは、ブロックとブロックの間を波が通過することにより、波のエネルギーを減少させる。
なお、異形コンクリートブロックは、海岸堤防の消波工のほかに、海岸の侵食対策としても多く用いられる。
(2) 異形コンクリートブロックの据付け方
異形コンクリートブロックの据付け方には、いわゆる乱積みと層積みがある。それぞれ、一長一短があるので異形コンクリートブロックの特性や現地の状況などを調査して決める。
① 乱積み
乱積みは、ブロックを不規則に積み上げる方法で、層積みと比べて据付けが容易であり、海岸線の曲線部も容易に施工できるが、据付け時の安定性に劣る。しかし、荒天時の高波を受けるたびに沈下し、徐々にブロックどうしのかみ合わせが良くなり安定してくる。
② 層積み
層積みは、ブロックを規則正しく配列する積み方で整然と並び外観が美しく、設計どおりの据付けができ、乱積みに比べて据付け時の安定性がよいが、据付けに手間がかかり、海岸線の曲線部などの施工が難しい。