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1ダム

堀川 寿和2022/03/28 14:03

ダム

 「ダム」からは、例年1問出題されている。ほぼ「コンクリートダムの施工」から出題される。

ダムの分類

 

 ダムは堤体に使用される材料により、コンクリートダムとフィルダムに大別できる。フィルダムはロックフィルダムと呼ばれることもある。

 

(1) コンクリートダムの形式

 堤体材料にコンクリートを使用しているダムをコンクリートダムという。コンクリートダムは、構造により、次の2つの形式がある。

 

① アーチ式コンクリートダム(アーチダム)

 アーチ式コンクリートダムは、水圧を両岸の岩盤で支えるようにアーチ型に築いたもので、重力式コンクリートダムに比べ、両岸に丈夫な岩盤が必要となるが、ダムの厚さを薄くすることができ、材料が少なくてすむため経済的である。

 

 

② 重力式コンクリートダム(重力ダム)

 

 重力式コンクリートダムは、ダム自身(コンクリート)の重力により水圧などの外力に抵抗する形式のダムであり、コンクリートダムとしては最も一般的なものでる。ダムの重量を支えるのに十分な基礎岩盤上に建設することが原則である。

 

 

(2) フィルダムの形式

 堤体の大部分が土砂や岩石などの天然材料で盛り立てられているダムをフィルダムという。フィルダムは、遮水方式により、次の3つの形式がある。

 

① ゾーン型フィルダム

 ゾーン型フィルダムは、遮水ゾーン、半透水ゾーン及び透水ゾーンの3つのゾーンによって構成されるダムである。

 

② 表面遮水壁型フィルダム

 表面遮水壁型フィルダムは、上流側表面にコンクリートあるいはアスファルトコンクリートの遮水壁を有する形式のダムである。

 

③ 均一型フィルダム

 均一型ダムは、主として細粒の不透水性材料により築造されるダムである。

 

コンクリートダムの施工ー1

 ダム工事は、一般に大規模で長期間にわたるため、工事に必要な設備、機械を十分に把握し、安全で合理的な工事を進めなければならない

 ダム本体工事は、大量のコンクリートを打ち込むことから骨材製造設備やコンクリート製造設備をダム近傍に設置する。

 

(1) 転流工

 転流工は、ダム本体工事を確実にまた容易に施工するため、工事期間中の河川の流れを迂回さものである。比較的川幅が狭く、流量が少ない日本の河川では仮排水トンネル方式が多く用いられている。

 

Point 日本の河川では、転流工として、半川締切り(はんせんしめきり)方式はあまり採用されない。

 

(2) 基礎の掘削

 ダム堤体の基礎の掘削は、ダムの規模や形式に応じた所要の強度及び遮水性を有する地盤を露出させるために行われる。

 ダムの基礎掘削は、基礎岩盤に損傷を与えることが少なく大量掘削に対応できるベンチカット工法が一般的である。

 

(3) 基礎処理工(グラウチング)

 基礎処理工(グラウチング)は、コンクリートダムの基礎岩盤の状態が均一ではないことから、基礎岩盤として不適当な部分の補強、改良を行うものである。

 基礎処理工のグラウチングは、コンソリデーショングラウチングカーテングラウチングを行う。

 

① コンソリデーショングラウチング

 コンソリデーショングラウチングは、コンクリートダムの着岩部付近において、遮水性の改良、基礎地盤弱部の補強を目的として行う。

 

② カーテングラウチング

 カーテングラウチングの目的は、ダムの基礎地盤及びリム部の地盤において、浸透路長が短い部分と貯水池外への水みちとなるおそれのある高透水部の遮水性を改良することである。

 カーテングラウチングの施工位置は、コンクリートダムの場合は堤体上流側のフーチング又は堤内通廊からリム部地表又はリムグラウチングトンネルから行うのが一般的である。

 

(4) ダムコンクリートの品質

 ダム堤体には一般に大量のコンクリートが必要となるが、ダム堤体の各部に使用されるコンクリートは、必要となるダムコンクリートの品質に応じて、4つに区分される

 

① 内部コンクリート(図のⒷ)

 内部コンクリートは、水圧などの作用を自重によって支える機能を持ち、所用の単位容積質量と強度が要求される。また、大量施工を考慮して、発熱量が小さく、施工性に優れていることが必要となる。

 

② 外部コンクリート(図のⒶ)

 外部コンクリートは、内部コンクリートの品質に加えて、所要の水密性、すりへり作用に対する抵抗性や凍結融解作用に対する抵抗性(耐凍害性)が要求される。

 

③ 構造用コンクリート(図のⒸ)

 構造用コンクリートは、鉄筋コンクリートとしての強度、鉄筋や埋設構造物との付着性、鉄筋や型枠などの狭あい部での施工性に優れていることが要求される。なお、外面となる部位のコンクリートには、外部コンクリートとしての品質が付加される。

 

④ 着岩コンクリート(図のⒹ)

 着岩コンクリートは、岩盤との付着性、不陸のある岩盤に対しても容易に打ち込めて一体性を確保できることが要求される。

引用:土木学会 コンクリート委員会 コンクリート標準示方書改訂小委員会編『コンクリート標準示方書[ダムコンクリート編]』31頁(土木学会、2013年制定、2013

 

【参考】重力式コンクリートダムにおけるダムコンクリートの配合区分ごとに要求される品質

項目

Ⓐ 外部

コンクリート

Ⓑ 内部

コンクリート

Ⓒ 構造用

コンクリート

Ⓓ 着岩

コンクリート

圧縮強度

水密性

単位容積質量

温度ひび割れに対する抵抗性

鉄筋との付着強度

 

 

 

岩盤との付着特性

 

 

 

すりへり抵抗性

 

 

耐凍害性

 

 

骨材の有害な反応に対する抵抗性

科学的侵食に対する抵抗性

 

○:一般に要求される品質。

△:条件によって要求される品質。

 

※:内部コンクリートの水密性については、一般に外部コンクリートと同等の水密性は要求されないが、外部コンクリートとあわせ、ダムの堤体全体として確保される必要がある。