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■鋼構造物ー1
(1) 鋼材
① 鋼材の種類及び用途
鋼材は、強さや伸びに優れ、加工性もよく、土木構造物に欠くことのできない材料である。
鋼材は種類により性質も異なるので、用途に応じたものが用いられる。
(a) 炭素鋼
炭素鋼は、炭素含有量が少ないほど延性や展性は向上するが、硬さや強さは低下する。
低炭素鋼は、延性、展性に富み溶接など加工性が優れているので、橋梁などに広く用いられている。それに対して、表面硬さが必要なキー・ピン・工具には、高炭素鋼が用いられる。
(b) 耐候性鋼
耐候性鋼は、鋼材に適量のニッケルなどの合金元素を添加することで、鋼材表面に緻密なさび層(保護性さび)を形成させ、これが鋼材表面を保護することで以降のさびの進展が抑制され、鋼材の腐食による板厚減少を抑制するものである。鋼材は、気象や化学的な作用による腐食が予想される場合、耐候性鋼などの防食性の高いものを用いる。
(c) 鋳鋼
温度の変化などによって伸縮する橋梁の伸縮継手には、鋳鋼などが用いられる。
Point 鋳鋼と鋳鉄は異なるものである。含まれる炭素量にって分類され、鋳鉄は鋳鋼よりも多くの炭素を含んでいる。
(d) 棒鋼
棒鋼は、棒状の鋼材で、異形棒鋼、丸鋼、PC鋼棒などとして用いられる。PC鋼棒は、鉄筋コンクリート用棒鋼に比べて高い強さをもっているが、伸びは小さい。
(e) 線材
線材は、細くて長い線状の鋼材で、ワイヤーケーブル、蛇かごなどに用いられる。つり橋や斜張橋のワイヤーケーブルには、硬鋼線材が用いられる。
(f) 管材
管材は、肉厚の薄い中空の鋼材で、基礎杭、支柱などとして用いられる。継ぎ目なし鋼管は、小・中径のものが多く、高温高圧用配管等に用いられている。
② 応力ひずみ曲線
鋼材に引張荷重をかけると、鋼材は、応力度が弾性限度に達するまでは弾性を示すが、それを超えると塑性を示す。
このときの応力度(加えられた力)とひずみ(伸び量)の関係は、次の曲線であらわすことができる。これを応力ひずみ曲線という。
比例限度 |
点Kを比例限度といい、応力度とひずみが比例する最大限度である。 |
弾性限度 |
点Eを弾性限度といい、弾性変形をする最大限度である。 |
上降伏点 |
点YUを上降伏点といい、応力度が増えないのにひずみが急激に増加しはじめる点である。 |
下降伏点 |
点YAを下降伏点といい、上降伏点から応力度が急激に低下した点である。 |
引張強さ |
点Mを、最大応力度の点といい、この点の応力度を引張強さ(最大応力度)という。この時点では、まだ鋼材は破断しない。 |
破壊点 |
点Dを破壊点〔破断点〕といい、鋼材が破断してしまう点である。 |
■鋼構造物ー2
(2) 高力ボルト
鋼道路橋に用いられるボルトは、高力ボルトである。耐候性鋼材を使用した橋梁には、耐候性高力ボルトが用いられている。
① 高力ボルト継手の接合方法
高力ボルト継手の接合方法として、摩擦接合、支圧接合及び引張接合がある。
(a) 摩擦接合
摩擦接合は、高力ボルトにより継手を構成する部材同士を高い軸力で締付け、締付けで生じる部材相互の摩擦抵抗で応力を伝達する。
摩擦接合による継手は、重ね継手と突合せ継手がある。
(b) 支圧接合
支圧接合は、継手を構成する部材の孔とボルト軸部の支圧力により、ボルトのせん断抵抗を介して力を伝達するものである。
(c) 引張接合
引張接合は、接合面に接触応力を発生させてボルト軸方向の力を伝達させる形式である。
② 鋼道路橋に高力ボルトを使用する際の確認事項
鋼道路橋に高力ボルトを使用する際は、高力ボルトの等級と強さ、摩擦面継手方法、締め付ける鋼材の組立形状などを確認する必要がある。
③ ボルトの締付け
(a) ボルトの締付け方法
ボルトの締付け方法としては、締付け軸力の管理方法により、トルク法、ナット回転法、耐力点法等がある。トルク法が現在行われている方法の中で最も一般的なものである。
(b) ボルトの締付け
ボルトの締付けにあたっては、設計ボルト軸力が得られるように締付けなければならない。
また、ボルトの締付けは、各材片間の密着を確保し、十分な応力の伝達がなされるように施工しなければならない。
ボルトの締付けにあたっての留意事項は、次のとおりである。
イ) ボルト軸力の導入〔ボルトの締付け〕は、ナットを回して行うのを原則とする。 ロ) トルシア型高力ボルトを使用する場合は、本締めには専用締付け機を使用する。なお、予備締めには作業能率のよい電動インパクトレンチを使用することができる。
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引用:日本道路協会編『道路橋示方書(Ⅱ鋼橋・鋼部材編)・同解説』694頁(日本道路協会、改訂版、2017) |
Point1 ボルトの締め付けは、原則として、ボルトの頭部を回して行ってはならない。
Point2 トルシア型高力ボルトの本締めに、インパクトレンチを使用することはできない。
(c) 締付けの順序
ボルトの締付けは、連結板の中央のボルトから順次端部ボルトに向かって行い、2度締めを行う。
引用:土木学会 鋼構造委員会 高力ボルト摩擦接合継手の設計法に関する調査検討小委員会編『高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工・維持管理指針(案)』29頁(土木学会、鋼構造シリーズ15、2006)
④ 締付け完了後の検査
高力ボルトの締付け検査は、ボルト締付け後、速やかに行う。