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1一般用検査薬

U222022/03/25 10:21

一般用検査薬とは

専ら疾病の診断に使用されることが目的とされる医薬品のうち、人体に直接使用されることのないものを体外診断用医薬品という。体外診断用医薬品の多くは医療用検査薬であるが、一般用検査薬については薬局又は医薬品の販売業(店舗販売業、配置販売業)において取り扱うことが認められている。

一般用検査薬は、一般の生活者が正しく用いて健康状態を把握し、速やかな受診につなげることで疾病を早期発見するためのものである。

検査に用いる検体は、尿、糞便、鼻汁、唾液、涙液など採取に際して侵襲(採血や穿刺等)のないものである。検査項目は、学術的な評価が確立しており、情報の提供により結果に対する適切な対応ができるものであり、健康状態を把握し、受診につなげていけるものである。なお、悪性腫瘍、心筋梗塞や遺伝性疾患など重大な疾患の診断に関係するものは一般用検査薬の対象外である。

 

【販売時の留意点】

販売を行う際には、各検査薬の一般用医薬品の分類による販売方法を行うとともに、次の事項について、製品や添付文書等を用い、購入者等が購入後も確認できるようにわかり易く説明する。また、相談に応じる体制を充実し、購入者等に問い合わせ先を周知するとともに、検査項目によっては、プライバシーに配慮した形で製品の説明を行うことが望ましい。

・専門的診断におきかわるものでないことについてわかり易く説明する。

・検査薬の使い方や保管上の注意についてわかり易く説明する。

・検体の採取時間とその意義をわかり易く説明する。

・妨害物質及び検査結果に与える影響をわかり易く説明する。

・検査薬の性能についてわかり易く説明する。

・検査結果の判定についてわかり易く説明する。

・適切な受診勧奨を行う。特に、医療機関を受診中の場合は、通院治療を続けるよう説明する。

・その他購入者等からの検査薬に関する相談には積極的に応じること。

 

【検出感度、擬陰性・擬陽性】

検査薬は、対象とする生体物質を特異的に検出するように設計されている。しかし、検体中の対象物質の濃度が極めて低い場合には検出反応が起こらずに陰性の結果が出る。検出反応が起こるための最低限の濃度を検出感度(又は検出限界)という。

検体中に存在しているにもかかわらず、その濃度が検出感度以下であったり、検出反応を妨害する他の物質の影響等によって、検査結果が陰性となった場合を擬陰性という。逆に、検体中に存在していないにもかかわらず、検査対象外の物質と非特異的な反応が起こって検査結果が陽性となった場合を擬陽性という。

生体から採取された検体には予期しない妨害物質や化学構造がよく似た物質が混在することがあり、いかなる検査薬においても擬陰性・擬陽性を完全に排除することは困難である。

 

 

尿糖・尿タンパク検査薬

1)尿中の糖・タンパク値に異常を生じる要因

泌尿器系の機能が正常に働いていて、また、血糖値が正常であれば、糖分やタンパク質は腎臓の尿細管においてほとんどが再吸収される。

尿糖値に異常を生じる要因は、一般に高血糖と結びつけて捉えられることが多いが、腎性糖尿等のように高血糖を伴わない場合もある。尿中のタンパク値に異常を生じる要因については、腎臓機能障害によるものとして腎炎やネフローゼ、尿路に異常が生じたことによるものとして尿路感染症、尿路結石、膀胱炎等がある。

 

2)検査結果に影響を与える要因、検査結果の判断、受診勧奨

【検査結果に影響を与える要因】 尿糖・尿タンパクの検査結果に影響を与える主な要因として以下のものがある。

a)採尿に用いた容器の汚れ

糖分やタンパク質が付着している容器に尿を採取すると正確な検査結果が得られないので、清浄な容器を使用する必要がある。

b)採尿のタイミング

尿糖検査の場合、食後1~2時間等、検査薬の使用方法に従って採尿を行う。尿タンパクの場合、原則として早朝尿(起床直後の尿)を検体とし、激しい運動の直後は避ける必要がある。

尿糖・尿タンパク同時検査の場合、早朝尿(起床直後の尿)を検体とするが、尿糖が検出された場合には、食後の尿について改めて検査して判断する必要がある。

c)採尿の仕方

出始めの尿では、尿道や外陰部等に付着した細菌や分泌物が混入することがあるため、中間尿を採取して検査することが望ましい。

d)検体の取扱い

採取した尿を放置すると、雑菌の繁殖等によって尿中の成分の分解が進み、検査結果に影響を与えるおそれがあるので、なるべく採尿後速やかに検査することが望ましい。

e)検査薬の取扱い

尿糖又は尿タンパクを検出する部分を直接手で触れると、正確な検査結果が得られなくなることがある。また、長い間尿に浸していると検出成分が溶け出してしまい、正確な検査結果が得られなくなることがある。

f)食事等の影響

通常、尿は弱酸性であるが、食事その他の影響で中性~弱アルカリ性に傾くと、正確な検査結果が得られなくなることがある。また、医薬品の中にも、検査結果に影響を与える成分を含むものがある。医師(又は歯科医師)から処方された薬剤(医療用医薬品)や一般用医薬品使用している場合には、医師等又は薬剤師に相談するように説明するべきである。

 

【検査結果の判断、受診勧奨】 尿糖・尿タンパク検査薬は、尿中の糖やタンパク質の有無を調べるものであり、その結果をもって直ちに疾患の有無や種類を判断することはできない。

尿糖又は尿タンパクが陽性の場合には、疾患の確定診断や適切な治療につなげるため、早期に医師の診断を受ける必要がある。また、検査結果では尿糖又は尿タンパクが陰性でも、何らかの症状がある場合は、再検査するか又は医療機関を受診して医師に相談するなどの対応が必要である。

妊娠検査薬

1)妊娠の早期発見の意義

妊娠の初期(妊娠12週まで)は、胎児の脳や内臓などの諸器官が形づくられる重要な時期であり、母体が摂取した物質等の影響を受けやすい時期でもある。そのため、妊娠しているかどうかを早い段階で知り、食事の内容や医薬品の使用に適切な配慮がなされるとともに、飲酒や喫煙、風疹や水痘(水疱瘡)などの感染症、放射線照射等を避けることが、母子の健康にとって重要となる。

 

2)検査結果に影響を与える要因、検査結果の判断、受診勧奨

【検査結果に影響を与える要因】 妊娠が成立すると、胎児(受精卵)を取り巻く絨毛(じゅうもう)細胞からヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)が分泌され始め、やがて尿中にhCGが検出されるようになる。妊娠検査薬は、尿中のhCGの有無を調べるものであり、通常、実際に妊娠が成立してから4週目前後の尿中hCG濃度を検出感度としている。

その検査結果に影響を与える主な要因として以下のものがある。

a)検査の時期

一般的な妊娠検査薬は、月経予定日が過ぎて概ね1週目以降の検査が推奨されている。月経周期が不規則な人や、月経の日数計算を間違えた場合など、それよりも早い時期に検査がなされ、陰性の結果が出たとしても、それが妊娠していないこと(単なる月経の遅れ)を意味するのか、実際には妊娠していて尿中hCGが検出感度に達していないことによる擬陰性であるのか判別できない。

b)採尿のタイミング

検体としては、尿中hCGが検出されやすい早朝尿(起床直後の尿)が向いているが、尿が濃すぎると、かえって正確な結果が得られないこともある。

c)検査薬の取扱い、検出反応が行われる環境

尿中hCGの検出反応は、hCGと特異的に反応する抗体や酵素を用いた反応であるため、温度の影響を受けることがある。検査薬が高温になる場所に放置されたり、冷蔵庫内に保管されていたりすると、設計どおりの検出感度を発揮できなくなるおそれがある。

また、検査操作を行う場所の室温が極端に高いか、又は低い場合にも、正確な検査結果が得られないことがある。

d)検体の取扱い、検体中の混在物質

採取した尿を放置すると、雑菌の繁殖等によって尿中の成分の分解が進み、検査結果に影響を与えるおそれがあるので、なるべく採尿後速やかに検査がなされることが望ましい。高濃度のタンパク尿や糖尿の場合、非特異的な反応が生じて擬陽性を示すことがある。

e)ホルモン分泌の変動

絨毛細胞が腫瘍化している場合には、妊娠していなくてもhCGが分泌され、検査結果が陽性となることがある。また、本来はhCGを産生しない組織の細胞でも、腫瘍化するとhCGを産生するようになることがある(胃癌、膵癌、卵巣癌等)。

経口避妊薬や更年期障害治療薬などのホルモン剤を使用している人では、妊娠していなくても尿中hCGが検出されることがある。閉経期に入っている人も、検査結果が陽性となることがある。

 

【検査結果の判断、受診勧奨】 妊娠検査薬は、妊娠の早期判定の補助として尿中のhCGの有無を調べるものであり、その結果をもって直ちに妊娠しているか否かを断定することはできない。妊娠の確定診断には、尿中のホルモン検査だけでなく、専門医による問診や超音波検査などの結果から総合的に妊娠の成立を見極める必要がある。

妊娠が成立していたとしても、正常な妊娠か否かについては、妊娠検査薬による検査結果では判別できないので、妊娠週数が進むままに漫然と過ごすのでなく、早期に医師の診断を受けるなどの対応が必要である。また、検査結果が陰性であって月経の遅れが著しい場合には、擬陰性であった(実際は妊娠している)可能性のほか、続発性無月経等の病気であるおそれもあり、医療機関を受診して専門医へ相談するなどの対応が必要である。