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  • Sec.1

1皮膚に用いる薬

U222022/03/24 16:47

皮膚に用いる薬ー1

外皮用薬は、皮膚表面に生じた創傷や症状、又は皮膚の下にある毛根、血管、筋組織、関節等の症状を改善・緩和するため、外用局所に直接適用される医薬品である。

外皮用薬を使用する際には、適用する皮膚表面に汚れや皮脂が多く付着していると有効成分の浸透性が低下するため、患部を清浄にしてから使用することが重要である(水洗に限らず、清浄綿を用いて患部を清拭する等の方法でもよい)。また、表皮の角質層が柔らかくなることで有効成分が浸透しやすくなることから、入浴後に用いるのが効果的とされる。

 

【剤形による取扱い上の注意】 剤形による取扱い上の注意事項に関する出題については、以下の内容から作成のこと。

 塗り薬(軟膏剤、クリーム剤)

薬剤を容器から直接指に取り、患部に塗布したあと、また指に取ることを繰り返すと、容器内に雑菌が混入するおそれがある。いったん手の甲などに必要量を取ってから患部に塗布することが望ましい。

また、塗布したあと手に薬剤が付着したままにしておくと、薬剤が目や口の粘膜等に触れて刺激感等を生じるおそれがあるため、手についた薬剤を十分に洗い流すべきである。

 貼付剤(テープ剤、パップ剤)

患部やその周囲に汗や汚れ等が付着した状態で貼付すると、有効成分の浸透性が低下するほか、剥がれやすくもなるため十分な効果が得られない。

同じ部位に連続して貼付すると、かぶれ等を生じやすくなる。

 スプレー剤、エアゾール剤

強い刺激を生じるおそれがあるため、目の周囲や粘膜(口唇等)への使用は避けることとされている。それ以外の部位でも、至近距離から噴霧したり、同じ部位に連続して噴霧すると、凍傷を起こすことがある。使用上の注意に従い、患部から十分離して噴霧し、また、連続して噴霧する時間は3秒以内とすることが望ましい。使用時に振盪(しんとう)が必要な製品では、容器を振ってから噴霧する。

吸入によりめまいや吐きけ等を生じることがあるので、できるだけ吸入しないよう、また、周囲の人にも十分注意して使用する必要がある。

 

【外皮用薬に共通する主な副作用】 局所性の副作用として、適用部位に発疹・発赤、痒み等が現れることがある。これらの副作用は、外皮用薬が適応とする症状と区別することが難しい場合があり、外皮用薬を一定期間使用しても症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続することなく、副作用の可能性も考慮して、専門家に相談することが重要である。

 

1)きず口等の殺菌消毒成分

殺菌消毒薬は、日常の生活において生じる、比較的小さなきり傷、擦り傷、掻(か)き傷等の創傷面の化膿を防止すること、又は手指・皮膚の消毒を目的として使用される一般用医薬品である。

殺菌消毒薬のうち、配合成分やその濃度、効能・効果等があらかじめ定められた範囲内である製品については、医薬部外品(きず消毒保護剤 等)として製造販売されているが、火傷(熱傷)や化膿した創傷面の消毒、口腔内の殺菌・消毒などを併せて目的とする製品については、医薬品としてのみ認められている。

手指・皮膚の消毒のほか、器具等の殺菌・消毒を目的とする製品に関する出題については、ⅩⅤ-1(消毒薬)を参照して作成のこと。

a)アクリノール

黄色の色素で、一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。

比較的刺激性が低く、創傷患部にしみにくい。衣類等に付着すると黄色く着色し、脱色しにくくなることがある。

腸管内における殺菌消毒作用を期待して、内服薬(止瀉薬)で用いられるアクリノールに関する出題については、-2(腸の薬)を参照して作成のこと。

b)オキシドール(過酸化水素水)

一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。オキシドールの作用は、過酸化水素の分解に伴って発生する活性酸素による酸化、及び発生する酸素による泡立ちによる物理的な洗浄効果であるため、作用の持続性は乏しく、また、組織への浸透性も低い。

刺激性があるため、目の周りへの使用は避ける必要がある。

c)ヨウ素系殺菌消毒成分

ヨウ素による酸化作用により、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対して殺菌消毒作用を示す。ヨウ素の殺菌力はアルカリ性になると低下するため、石鹸等と併用する場合には、石鹸分をよく洗い落としてから使用するべきである。

外用薬として用いた場合でも、まれにショック(アナフィラキシー)のような全身性の重篤な副作用を生じることがある。ヨウ素に対するアレルギーの既往がある人では、使用を避ける必要がある。

 ポビドンヨード

ヨウ素をポリビニルピロリドン(PVP)と呼ばれる担体に結合させて水溶性とし、徐々にヨウ素が遊離して殺菌作用を示すように工夫されたもの。

口腔咽喉薬や含嗽(がんそう)薬として用いられる場合より高濃度で配合されているため、誤って原液を口腔粘膜に適用しないよう注意する必要がある。

 ヨードチンキ

ヨウ素及びヨウ化カリウムをエタノールに溶解させたもので、皮膚刺激性が強く、粘膜(口唇等)や目の周りへの使用は避ける必要がある。また、化膿している部位では、かえって症状を悪化させるおそれがある。

マーキュロクロム液と混ざると不溶性沈殿を生じて殺菌作用が低下するため、マーキュロクロム液と同時に使用しないこととされている。

d)ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物

これら成分に関する出題については、(鼻に用いる薬)を参照して作成のこと。これらと同種の成分(陽性界面活性成分)として、セトリミドが配合されている場合もある。

いずれも石鹸との混合によって殺菌消毒効果が低下するので、石鹸で洗浄した後に使用する場合には、石鹸を十分に洗い流す必要がある。

e)クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩

一般細菌類、真菌類に対して比較的広い殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスに対する殺菌消毒作用はない。

f)マーキュロクロム

一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。有機水銀の一種であるが、皮膚浸透性が低く、通常の使用において水銀中毒を生じることはない。ただし、口の周りや口が触れる部位(乳頭等)への使用は避ける必要がある。

ヨードチンキと混合すると不溶性沈殿を生じて殺菌作用が低下するため、ヨードチンキと同時に使用しないこととされている。

g)エタノール(消毒用エタノール)

手指・皮膚の消毒、器具類の消毒のほか、創傷面の殺菌・消毒にも用いられることがある。皮膚刺激性が強いため、患部表面を軽く清拭するにとどめ、脱脂綿やガーゼに浸して患部に貼付することは避けるべきとされている。また、粘膜(口唇等)や目の周りへの使用は避ける必要がある。

その他、エタノール(消毒用エタノール)に関する出題については、ⅩⅤ(公衆衛生用薬)を参照して作成のこと。

h)その他

イソプロピルメチルフェノール、チモール、フェノール(液状フェノール)、レゾルシンは、細菌や真菌類のタンパク質を変性させることにより殺菌消毒作用を示し、患部の化膿を防ぐことを目的として用いられる。

レゾルシンについては、角質層を軟化させる作用もあり、にきび用薬やみずむし・たむし用薬などに配合されている場合がある。

 

【一般的な創傷への対応】 出血しているときは、創傷部に清潔なガーゼやハンカチ等を当てて圧迫し、止血する(5分間程度は圧迫を続ける)。このとき、創傷部を心臓より高くして圧迫すると、止血効果が高い。

火傷(熱傷)の場合は、できるだけ早く、水道水などで熱傷部を冷やすことが重要である。軽度の熱傷であれば、痛みを感じなくなるまで(15~30分間)冷やすことで、症状の悪化を防ぐことができる。冷やした後は、水疱(水ぶくれ)を破らないようにガーゼ等で軽く覆うとよいとされている。

創傷面が汚れているときには、水道水などきれいな水でよく洗い流し、汚れた手で直接触れないようにするべきである。水洗が不十分で創傷面の内部に汚れが残ったまま、創傷表面を乾燥させるタイプの医薬品を使用すると、内部で雑菌が増殖して化膿することがある。

通常、人間の外皮表面には「皮膚常在菌」が存在しており、化膿の原因となる黄色ブドウ球菌、連鎖球菌等の増殖を防いでいる。創傷部に殺菌消毒薬を繰り返し適用すると、皮膚常在菌が殺菌されてしまい、また、殺菌消毒成分により組織修復が妨げられて、かえって治癒しにくくなったり、状態を悪化させることがある。

最近では、創傷面に浸出してきた液の中に表皮再生の元になる細胞を活性化させる成分が含まれているため乾燥させない方が早く治癒するという考えも広まってきており、創傷面を乾燥させない絆創膏(ばんそうこう)も販売されている。

 

【受診勧奨】 出血が止まらない又は著しい場合、患部が広範囲な場合、ひどい火傷の場合には、状態が悪化するおそれがある。特に低温火傷は、表面上は軽症に見えても、組織の損傷が深部に達している場合があり、医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

また、殺菌消毒成分はすべての細菌やウイルスに対して効果があるわけでなく、5~6日経過して痛みが強くなってくる、又は傷の周囲が赤く、化膿しているような場合には、医療機関(外科又は皮膚科)を受診するなどの対応が必要である。

皮膚に用いる薬ー2

2)痒み、腫れ、痛み等を抑える配合成分

a)ステロイド性抗炎症成分

副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の持つ抗炎症作用に着目し、それと共通する化学構造を持つ化合物が人工的に合成され、抗炎症成分(ステロイド性抗炎症成分)として用いられる。主なステロイド性抗炎症成分としては、デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル等がある。外用の場合はいずれも末梢組織(患部局所)における炎症を抑える作用を示し、特に、痒みや発赤などの皮膚症状を抑えることを目的として用いられる。

一方、好ましくない作用として末梢組織の免疫機能を低下させる作用も示し、細菌、真菌、ウイルス等による皮膚感染(みずむし・たむし等の白癬(はくせん)症、にきび、化膿症状)や持続的な刺激感の副作用が現れることがある。水痘(水疱瘡)、みずむし、たむし等又は化膿している患部については症状を悪化させる恐れがあり、使用を避ける必要がある。

外皮用薬で用いられるステロイド性抗炎症成分は、体の一部分に生じた湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも、虫さされ等の一時的な皮膚症状(ほてり・腫れ・痒み等)の緩和を目的とするものであり、広範囲に生じた皮膚症状や、慢性の湿疹・皮膚炎を対象とするものではない。

ステロイド性抗炎症成分をコルチゾンに換算して1g又は1mL0.025mgを超えて含有する製品では、特に長期連用を避ける必要がある。医薬品の販売等に従事する専門家においては、まとめ買いや頻回に購入する購入者に対して、注意を促していくことが重要である。

短期間の使用であっても、患部が広範囲にわたっている人では、ステロイド性抗炎症成分を含有する医薬品が患部全体に使用されると、ステロイド性抗炎症成分の吸収量が相対的に多くなるため、適用部位を限る等、過度の使用を避けるべきである。

b)非ステロイド性抗炎症成分

分子内に副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)と共通する化学構造を持たず、プロスタグランジンの産生を抑える作用(抗炎症作用)を示す成分を非ステロイド性抗炎症成分(NSAIDs)という。

 皮膚の炎症によるほてりや痒み等の緩和を目的として用いられる成分

【ブフェキサマク】 湿疹、皮膚炎、かぶれ、日焼け、あせも等による皮膚症状の緩和を目的として用いられる。まれに重篤な副作用として、接触皮膚炎を生じることがある。その他の副作用として、腫れ、刺激感(ヒリヒリ感)、光線過敏症、しみ(色素沈着)、皮膚乾燥が現れることがある。

【ウフェナマート】 末梢組織(患部局所)におけるプロスタグランジンの産生を抑える作用については必ずしも明らかにされておらず、炎症を生じた組織に働いて、細胞膜の安定化、活性酸素の生成抑制などの作用により、抗炎症作用を示すと考えられている。

湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも等による皮膚症状の緩和を目的として用いられる。副作用として、刺激感(ヒリヒリ感)、熱感、乾燥感が現れることがある。

 筋肉痛、関節痛、打撲、捻挫等による鎮痛等を目的として用いられる成分

非ステロイド性抗炎症成分のうち、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウムについては、皮膚の下層にある骨格筋や関節部まで浸透してプロスタグランジンの産生を抑える作用を示し、筋肉痛、関節痛、肩こりに伴う肩の痛み、腰痛、腱鞘(けんしょう)炎、肘の痛み(テニス肘等)、打撲、捻挫に用いられる。

これらは過度に使用しても鎮痛効果が増すことはなく、また、その場合の安全性は確認されていないため、塗り薬又はエアゾール剤については1週間あたり50g(又は50mL)を超えての使用、貼付剤については連続して2週間以上の使用は避けることとされている製品が多い。いずれも長期連用を避ける必要があり、医薬品の販売等に従事する専門家においては、まとめ買いや頻回に購入する購入者に対して、注意を促していくことが重要である。また、殺菌作用はないため、皮膚感染症に対しては効果がなく、痛みや腫れを鎮めることでかえって皮膚感染が自覚されにくくなる(不顕性化する)おそれがあるため、みずむし、たむし等又は化膿している患部への使用は避ける必要がある。

内服で用いられる解熱鎮痛成分と同様、喘息の副作用(-2(解熱鎮痛薬)参照。)を引き起こす可能性があるため、喘息を起こしたことがある人では、使用を避ける必要がある。また、吸収された成分の一部が循環血液中に入る可能性があり、妊婦又は妊娠していると思われる女性では、胎児への影響を考慮して、使用を避けるべきである。

小児への使用については有効性・安全性が確認されておらず、インドメタシンを主薬とする外皮用薬では、11歳未満の小児(インドメタシン含量1%の貼付剤では15歳未満の小児)、その他の成分を主薬とする外用鎮痛薬では、15歳未満の小児向けの製品はない。

【インドメタシン】 適用部位の皮膚に、腫れ、ヒリヒリ感、熱感、乾燥感が現れることがあるため、皮膚が弱い人がインドメタシン含有の貼付剤を使用する際には、あらかじめ1~2cm角の小片を腕の内側等の皮膚の薄い部位に半日以上貼ってみて、皮膚に異常を生じないことを確認することが推奨されている。

【ケトプロフェン】 チアプロフェン酸、スプロフェン、フェノフィブラート(いずれも医療用医薬品の有効成分)又はオキシベンゾン、オクトクリレン(化粧品や医薬部外品に紫外線吸収剤として配合される化合物)のような物質でアレルギー感作された人は、それらと分子の化学構造が類似しているケトプロフェンでもアレルギーを起こすおそれが大きいことから、これらの成分でアレルギー症状(発疹・発赤、痒み、かぶれ等)を起こしたことがある人については、使用を避けることとされている。

まれに重篤な副作用として、アナフィラキシー、接触皮膚炎、光線過敏症を生じることがある。紫外線により、使用中又は使用後しばらくしてから重篤な光線過敏症が現れることがあるため、ケトプロフェンが配合された外皮用薬を使用している間及び使用後も当分の間は、天候にかかわらず、戸外活動を避けるとともに、日常の外出時も塗布部を衣服、サポーター等で覆い、紫外線に当たるのを避ける必要がある。ただし、ラップフィルム等の通気性の悪いもので覆うことは適当でない。

その他の副作用として、腫れ、刺激感、水疱・ただれ、色素沈着、皮膚乾燥が現れることがある。

【ピロキシカム】 今のところ重篤なものは知られていないが、光線過敏症の副作用を生じることがあり、野外活動が多い人では、他の抗炎症成分が配合された製品を選択することが望ましい。このほか、副作用として腫れ、かぶれ、水疱、落屑(らくせつ)(皮膚片の細かい脱落)などが現れることがある。

 その他

【サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール】 皮膚から吸収された後、サリチル酸に分解されて、末梢組織(患部局所)におけるプロスタグランジンの産生を抑える作用も期待されるが、主として局所刺激により患部の血行を促し、また、末梢の知覚神経に軽い麻痺を起こすことにより、鎮痛作用をもたらすと考えられている。

【イブプロフェンピコノール】 イブプロフェン(-2(解熱鎮痛薬)参照。)の誘導体であるが、外用での鎮痛作用はほとんど期待されない。吹き出物に伴う皮膚の発赤や腫れを抑えるほか、吹き出物(面皰=めんぽう)の拡張を抑える作用があるとされ、専らにきび治療薬として用いられる。

c)その他の抗炎症成分

比較的穏やかな抗炎症作用を示す成分として、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等が配合されている場合がある。

これら成分の抗炎症作用に関する出題については、-1(かぜ薬)及び-1(痔の薬)を参照して作成のこと。

d)局所麻酔成分

きり傷、擦り傷、掻き傷等の創傷面の痛みや、湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも、虫さされ等による皮膚の痒みを和らげることを目的として、ジブカイン塩酸塩、リドカイン、アミノ安息香酸エチル、テシットデシチン等の局所麻酔成分が配合されている場合がある。局所麻酔成分に関する出題については、-1(痔の薬)を参照して作成のこと。

そのほか、皮下の知覚神経に麻痺を起こさせる成分として、アンモニアが主に虫さされによる痒みに用いられる。皮膚刺激性が強いため、粘膜(口唇等)や目の周りへの使用は避ける必要がある。

e)抗ヒスタミン成分

湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも、虫さされ等による皮膚の痒みの発生には、生体内の伝達物質であるヒスタミンが関与している。外用薬で用いられる抗ヒスタミン成分は、適用部位の組織に浸透して、肥満細胞から遊離したヒスタミンとその受容体タンパク質との結合を妨げることにより、患部局所におけるヒスタミンの働きを抑える。

湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも、虫さされ等による一時的かつ部分的な皮膚症状(ほてり・腫れ・痒み等)の緩和を目的として、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェニルイミダゾール、イソチペンジル塩酸塩等の抗ヒスタミン成分が用いられる。いずれも副作用として、患部の腫れが現れることがある。

f)局所刺激成分

いずれも目や目の周り、粘膜面には刺激が強すぎるため、使用を避けることとされている。

 冷感刺激成分

皮膚表面に冷感刺激を与え、軽い炎症を起こして反射的な血管の拡張による患部の血行を促す効果を期待して、また、知覚神経を麻痺させることによる鎮痛・鎮痒(ちんよう)の効果を期待して、メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油等が配合されている場合がある。

打撲や捻挫などの急性の腫れや熱感を伴う症状に対しては、冷感刺激成分が配合された外用鎮痛薬が適すとされる。

 温感刺激成分

皮膚に温感刺激を与え、末梢血管を拡張させて患部の血行を促す効果を期待して、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル等が配合されている場合がある。カプサイシンを含む生薬成分として、トウガラシ(ナス科のトウガラシの果実を基原とする生薬)も同様に用いられる。

温感刺激成分は、人によっては刺激が強すぎて、副作用として痛みが現れることがある。特に、温感刺激成分を主薬とする貼付剤では、貼付部位をコタツや電気毛布等の保温器具で温めると強い痛みを生じやすくなるほか、いわゆる低温やけどを引き起こすおそれがあるので、注意が必要である。入浴前後の使用も適当でなく、入浴1時間前には剥がし、入浴後は皮膚のほてりが鎮まってから貼付するべきである。

このほか、皮膚に軽い灼熱感を与えることで痒みを感じにくくさせる効果を期待して、クロタミトンが配合されている場合もある。

g)収斂(れん)・皮膚保護成分

酸化亜鉛は、患部のタンパク質と結合して皮膜を形成し、皮膚を保護する作用を示す。創傷面に薄い皮膜を形成して保護することを目的として、ピロキシリン(ニトロセルロース)が用いられることもある。

いずれも患部が浸潤又は化膿している場合、傷が深いときなどには、表面だけを乾燥させてかえって症状を悪化させるおそれがあり、使用を避けることとされている。

h)組織修復成分

損傷皮膚の組織の修復を促す作用を期待して、アラントインやビタミンA油が配合されている場合がある。

i)血管収縮成分

きり傷、擦り傷、掻き傷等の創傷面からの出血を抑えることを目的として、ナファゾリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が配合されている場合がある。創傷面に浸透して、その部位を通っている血管を収縮させることによる止血効果を期待して用いられる。

j)血行促進成分

患部局所の血行を促すことを目的として、ヘパリン類似物質、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム、ニコチン酸ベンジルエステル、ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル、トコフェロール等)等が用いられる。ヘパリン類似物質については、抗炎症作用や保湿作用も期待される。

ヘパリン類似物質、ポリエチレンスルホン酸ナトリウムには、血液凝固を抑える働きがあるため、出血しやすい人、出血が止まりにくい人、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑症など)の診断を受けた人では、使用を避ける必要がある。

 

 漢方処方製剤 等

a)紫雲膏(しうんこう)

ひび、あかぎれ、しもやけ、うおのめ、あせも、ただれ、外傷、火傷、痔核による疼痛、肛門裂傷、湿疹・皮膚炎に適すとされるが、湿潤、ただれ、火傷又は外傷のひどい場合、傷口が化膿している場合、患部が広範囲の場合には不向きとされる。

b)中黄膏(ちゅうおうこう)

急性化膿性皮膚疾患(腫れ物)の初期、打ち身、捻挫に適すとされるが、湿潤、ただれ、火傷又は外傷のひどい場合、傷口が化膿している場合、患部が広範囲の場合には不向きとされる。捻挫、打撲、関節痛、腰痛、筋肉痛、肩こりに用いる貼り薬(パップ剤)とした製品もある。

c)その他

抗炎症、血行促進等の作用を期待して、アルニカ(キク科のアルニカを基原とする生薬)、サンシシ(アカネ科のクチナシの果実を基原とする生薬)、オウバク(-1(胃の薬)参照。)、セイヨウトチノミ(-1(痔の薬)参照。)等の生薬成分が配合されている場合がある。

日本薬局方収載のオウバク末は、健胃又は止瀉の作用を期待して内服で用いられる(-1(胃の薬)参照。)が、外用では水で練って患部に貼り、打ち身、捻挫に用いられることがある。

 

【一般的な打撲、捻挫等への対応】 まず、患部を安静に保つことが重要とされる。特に、足や脚部を痛めた場合は、なるべく歩いたり、走ったりすることを避けることが望ましい。

次に、氷嚢(ひょうのう)などを用いて患部を冷やす。冷却することにより、内出血を最小限にし、痛みの緩和が図られる。また、患部が腫れてくるのを抑えるため、弾性包帯やサポーターで軽く圧迫し、患部を心臓よりも高くしておくと効果的とされている。

 

【一般的な湿疹、皮膚炎等への対応】 皮膚を清浄に保つため、毎日の入浴やシャワーが推奨されるが、こすり過ぎによる刺激や、洗浄力の強い石鹸や全身洗浄剤、シャンプー等の使用は避けることが望ましい。

生活環境の改善としては、患部を掻かないようにする、紫外線やストレス、発汗を避ける等、皮膚への刺激を避けることが重要とされる。

 

【受診勧奨】 一般用医薬品の使用による対処は、痒みや痛み等の症状を一時的に抑える対症療法である。5~6日間使用して症状が治まらない場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要であり、また、一般用医薬品の使用で症状が抑えられた場合でも、ステロイド性抗炎症成分や、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム等の非ステロイド性抗炎症成分が配合された医薬品では、長期間にわたって使用することは適切でない。

痛みが著しい、又は長引く、脱臼(だっきゅう)や骨折が疑われる場合には、一般用医薬品を継続的に使用するのではなく、医療機関(整形外科又は外科)を受診するなどの対応が必要である。

慢性の湿疹や皮膚炎、又は皮膚症状が広範囲にわたって生じているような場合には、感染症や内臓疾患、又は免疫機能の異常等による可能性もあり、医療機関を受診するなどの対応が必要である。特にアトピー性皮膚炎は、一般の生活者が自己判断で対処を図ろうとすることがしばしばあるが、医師による専門的な治療を要する疾患であり、一般用医薬品の使用によって対処できる範囲を超えているので、医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等に対して、その旨を説明し医療機関の受診を促すことが重要である。

なお、異常を生じている部位と皮膚に痒みや痛みが現れる部位とは必ずしも近接していないこともあり、原因がはっきりしない痒みや痛みについて、安易に一般用医薬品による症状の緩和(対症療法)を図ることは適当でない。

皮膚に用いる薬ー3

3)肌の角質化、かさつき等を改善する配合成分

a)角質軟化成分

うおのめ(鶏眼=けいがん)、たこ(胼胝=べんち)は、皮膚の一部に機械的刺激や圧迫が繰り返し加わったことにより、角質層が部分的に厚くなったものである。うおのめは、角質の芯が真皮にくい込んでいるため、圧迫されると痛みを感じるのに対し、たこは、角質層の一部が単純に肥厚したもので芯がなく、通常、痛みは伴わない。いぼ(疣贅=ゆうぜい)は、表皮が隆起した小型の良性の腫瘍で、ウイルス性のいぼと老人性のいぼに大別される。足の裏にできた場合、たこと間違えられやすい。ウイルス性のいぼは1~2年で自然寛解することが多い。

角質軟化薬のうち、配合成分やその濃度等があらかじめ定められた範囲内である製品については、医薬部外品(うおのめ・たこ用剤)として製造販売されているが、いぼに用いる製品については、医薬品としてのみ認められている。ただし、いぼの原因となるウイルスに対する抑制作用はなく、いぼが広範囲にわたって生じたり、外陰部や肛門周囲に生じたような場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

 サリチル酸

角質成分を溶解することにより角質軟化作用を示す。併せて抗菌、抗真菌、抗炎症作用も期待され、にきび用薬等に配合されている場合もある。

頭皮の落屑(らくせつ=ふけ)を抑える効果を期待して、毛髪用薬に配合されている場合もある。

 イオウ

皮膚の角質層を構成するケラチンを変質させることにより、角質軟化作用を示す。併せて抗菌、抗真菌作用も期待され、にきび用薬等に配合されている場合もある。

b)保湿成分

皮膚の乾燥は、角質層の細胞間脂質や角質層中に元来存在するアミノ酸、尿素、乳酸等の保湿因子が減少したり、また、皮脂の分泌が低下する等により、角質層の水分保持量が低下することによって生じる。

角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善することを目的として、グリセリン、尿素、白色ワセリン、オリブ油(モクセイ科のオリーブの果実を圧搾して得た脂肪油)、ヘパリン類似物質等が用いられる。

 

4)抗菌作用を有する配合成分

a)にきび、吹き出物等の要因と基礎的なケア

にきび、吹き出物は、最も一般的に生じる化膿性皮膚疾患(皮膚に細菌が感染して化膿する皮膚疾患)である。その発生要因としては、

i)ストレス、食生活の乱れ、睡眠不足など、様々な要因によって肌の新陳代謝機能が低下し、毛穴の皮脂や古い角質が溜まる。

ii)老廃物がつまった毛穴の中で皮膚常在菌であるにきび桿菌(かんきん=アクネ菌)が繁殖する。

iii)にきび桿菌が皮脂を分解して生じる遊離脂肪酸によって毛包周囲に炎症を生じ、さらに他の細菌の感染を誘発して膿疱(のうほう)や膿腫(のうしゅ)ができる。

これらがひどくなると色素沈着を起こして赤くしみが残ったり、クレーター状の瘢痕(はんこん)が残ったりする。

洗顔等により皮膚を清浄に保つことが基本とされる。吹き出物を潰したり無理に膿を出そうとすると、炎症を悪化させて皮膚の傷を深くして跡が残りやすくなる。

ストレス等を取り除き、バランスの取れた食習慣、十分な睡眠等、規則正しい生活習慣を心がけることも、にきびや吹き出物ができやすい体質の改善につながる。油分の多い化粧品はにきびを悪化させることがあり、水性成分主体のものを選択することが望ましい。

皮膚常在菌であるにきび桿菌(アクネ菌)でなく、黄色ブドウ球菌などの化膿(のう)菌が毛穴から侵入し、皮脂腺、汗腺で増殖して生じた吹き出物を毛嚢(もうのう)炎(疔=ちょう)といい、にきびに比べて痛みや腫れが顕著となる。毛嚢炎が顔面に生じたものを面疔(めんちょう)という。

とびひ(伝染性膿痂(のうかしん)疹)は毛穴を介さずに、虫さされやあせも、掻き傷などから化膿菌が侵入したもので、水疱やかさぶた(痂皮=かひ)、ただれ(糜爛=びらん)を生じる。小児に発症することが多い。水疱が破れて分泌液が付着すると、皮膚の他の部分や他人の皮膚に拡がることがある。

b)代表的な抗菌成分

 サルファ剤

スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフイソキサゾール等のサルファ剤は、細菌のDNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。

 バシトラシン

細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を示す。

 硫酸フラジオマイシン、クロラムフェニコール

いずれも細菌のタンパク質合成を阻害することにより抗菌作用を示す。

c)主な副作用、受診勧奨

患部が広範囲である場合、患部の湿潤やただれがひどい場合には、一般用医薬品の使用によって対処を図るよりも、医療機関を受診するなどの対応が必要である。

化膿性皮膚疾患用薬を漫然と使用していると、皮膚常在菌が静菌化される一方で、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌は耐性を獲得するおそれがある。また、通常であれば、生体に元来備わっている免疫機能の働きによって、化膿菌は自然に排除される。化膿性皮膚疾患用薬を5~6日間使用して症状の改善がみられない場合には、免疫機能の低下等の重大な疾患の可能性も考えられ、使用を中止して医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

 

5)抗真菌作用を有する配合成分

a)みずむし・たむし等の要因と基礎的なケア

みずむし、たむし等は、皮膚糸状菌(白癬(はくせん)菌)という真菌類の一種が皮膚に寄生することによって起こる疾患(表在性真菌感染症)である。スリッパやタオルなどを介して、他の保菌者やペットから皮膚糸状菌が感染することも多い。発生する部位によって呼び名が変わる。

みずむし:手足の白癬

ほとんどの場合は足に生じるが、まれに手に生じることもある。病型により3つに分類される。

i)趾間(しかん)型:指の間の鱗屑(りんせつ=皮が剥ける)、浸軟(ふやけて白くなる)、亀裂、ただれ(糜爛=びらん)を主症状とする。

ii)小水疱(しょうすいほう)型:足底に小さな水疱や鱗屑(りんせつ)を生じ、ときに膿疱、ただれ、糜爛が混じることもある。

iii)角質増殖型:足底全体に瀰漫(びまん)性紅斑と角質の増殖を生じる。皮膚糸状菌の感染巣は硬く、亀裂ができることがある。みずむしとして自覚されていない場合もある。

ぜにたむし:体部白癬

輪状の小さな丸い病巣が胴や四肢に発生し、発赤と鱗屑、痒みを伴う。

いんきんたむし:頑癬(がんせん)(内股・尻・陰嚢付近の白癬)

ぜにたむしと同様の病巣が内股にでき、尻や陰嚢付近に広がっていくもの。

このほか、爪に発生する白癬(爪白癬)や、頭部に発生する白癬(しらくも)がある。

頭部白癬は小児に多く、清浄に保てば自然治癒することが多いが、炎症が著しい場合には医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

爪白癬は、爪内部に薬剤が浸透しにくいため難治性で、医療機関(皮膚科)における全身的な治療(内服抗真菌薬の処方)を必要とする場合が少なくない。

 

【みずむし等に対する基礎的なケア】 みずむしの場合、足(特に、指の間)を毎日石鹸で洗う等して清潔に保ち、なるべく通気性を良くしておくことが重要である。靴下は毎日履き替え、洗濯後は日光に当てて干す、また、靴も通気性の良いものを選び、連日同じものを履くことは避ける等の対処も、みずむしが発生しにくい環境作りにつながる。

みずむし、たむしは古くから知られている皮膚疾患のひとつであり、様々な民間療法が存在するが、それらの中には科学的根拠が見出されないものも多く、かえって症状を悪化させる場合がある。

 

【剤形の選択】 一般的に、じゅくじゅくと湿潤している患部には、軟膏又はクリームが適すとされる。液剤は有効成分の浸透性が高いが、患部に対する刺激が強い。皮膚が厚く角質化している部分には、液剤が適している。

湿疹とみずむし等の初期症状は類似していることが多く、湿疹に抗真菌作用を有する成分を使用すると、かえって湿疹の悪化を招くことがある。陰嚢に痒み・ただれ等の症状がある場合は、湿疹等の他の原因による場合が多い。湿疹か皮膚糸状菌による皮膚感染かはっきりしない場合に、抗真菌成分が配合された医薬品を使用することは適当でない。

b)代表的な抗真菌成分、主な副作用、受診勧奨

強い刺激を生じたり、症状が悪化する可能性があるので、膣、陰嚢、外陰部等、湿疹、湿潤、ただれ、亀裂や外傷のひどい患部、化膿している患部には使用を避ける必要がある。

患部が化膿している場合には、抗菌成分を含んだ外用剤を使用する等、化膿が治まってから使用することが望ましい。

 イミダゾール系抗真菌成分

オキシコナゾール硝酸塩、ネチコナゾール塩酸塩、ビホナゾール、スルコナゾール硝酸塩、エコナゾール硝酸塩、クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩、チオコナゾール等は、イミダゾール系の抗真菌薬と呼ばれ、皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の透過性を変化させることにより、その増殖を抑える。

副作用としてかぶれ、腫れ、刺激感等が現れることがある。あるイミダゾール系成分が配合されたみずむし薬でかぶれたことがある人は、他のイミダゾール系成分が配合された製品も避けるべきである。

 アモロルフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、テルビナフィン塩酸塩

皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げることにより、その増殖を抑える。

 シクロピロクスオラミン

皮膚糸状菌の細胞膜に作用して、その増殖・生存に必要な物質の輸送機能を妨げ、その増殖を抑える。

 ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛

患部を酸性にすることで、皮膚糸状菌の発育を抑える。

 ピロールニトリン

菌の呼吸や代謝を妨げることにより、皮膚糸状菌の増殖を抑える。単独での抗真菌作用は弱いため、他の抗真菌成分と組み合わせて配合される。

 その他

抗真菌成分としてトルナフタート、エキサラミドが配合されている場合がある。

また、生薬成分として、モクキンピ(アオイ科のムクゲの幹皮を基原とする生薬)のエキスも皮膚糸状菌の増殖を抑える作用を期待して用いられる。

 

【受診勧奨】 ぜにたむしやいんきんたむしで患部が広範囲に及ぶ場合は、自己治療の範囲を超えており、また、内服抗真菌薬の処方による全身的な治療が必要な場合もあるので、医療機関(皮膚科)を受診するなどの対応が必要である。

みずむしやたむしに対する基礎的なケアと併せて、みずむし・たむし用薬を2週間位使用しても症状が良くならない場合には、抗真菌成分に耐性を生じている可能性や、皮膚糸状菌による皮膚感染でない可能性もある。また、配合成分によっては、痒み、落屑(らくせつ)、ただれ、水疱など、みずむし・たむしの症状と判別しにくい副作用が現れるものもある。症状が改善しない場合には、他のみずむし・たむし用薬に切り換えるようなことはせず、いったん使用を中止して、医療機関(皮膚科)を受診するなどの対応が必要である。

 

6)頭皮・毛根に作用する配合成分

毛髪用薬は、脱毛の防止、育毛、ふけや痒みを抑えること等を目的として、頭皮に適用する医薬品である。

毛髪用薬のうち、配合成分やその分量等にかんがみて人体に対する作用が緩和なものについては、医薬部外品(育毛剤、養毛剤)として製造販売されているが、「壮年性脱毛症」「円形脱毛症」「粃糠(ひこう)性脱毛症」「瀰漫(びまん)性脱毛症」等の疾患名を掲げた効能・効果は、医薬品においてのみ認められている。

a)カルプロニウム塩化物

末梢組織(適用局所)においてアセチルコリンに類似した作用(コリン作用)を示し、頭皮の血管を拡張、毛根への血行を促すことによる発毛効果を期待して用いられる。

アセチルコリンと異なり、コリンエステラーゼ((眼科用薬)参照。)による分解を受けにくく、作用が持続するとされる。副作用として、コリン作用による局所又は全身性の発汗、それに伴う寒気、震え、吐きけが現れることがある。

b)エストラジオール安息香酸エステル

脱毛は男性ホルモンの働きが過剰であることも一因とされているため、女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待して、女性ホルモン成分((婦人薬)参照。)の一種であるエストラジオール安息香酸エステルが配合されている場合がある。

毛髪用薬は頭皮における局所的な作用を目的とする医薬品であるが、女性ホルモン成分については、頭皮から吸収されて循環血流中に入る可能性を考慮し、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けるべきである。

c)生薬成分

 カシュウ

タデ科のツルドクダミの塊根を基原とする生薬で、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられる。

 チクセツニンジン

ウコギ科のトチバニンジンの根茎を、通例、湯通ししたものを基原とする生薬で、血行促進、抗炎症などの作用を期待して用いられる。

 ヒノキチオール

ヒノキ科のタイワンヒノキ、ヒバ等から得られた精油成分で、抗菌、血行促進、抗炎症などの作用を期待して用いられる。